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一人でも多くの医療者に知ってほしい…そんな思いで作られたYouTube動画がある。「全国に広まってほしい」やさしい日本語って?

日本語に不慣れな外国人などに話す時に使われる「やさしい日本語」。病棟、外来、受付など、病院の様々なシーンでの会話について、やさしい日本語への言い換えのポイントなどをまとめたYouTube動画が作られました。

「医療者に広く知って頂きたい、全国に広まってほしいと願って、無料でどなたでもご覧いただけるようにしました」ーー。

そんな思いを込めて、10本の動画が今秋、YouTube上で公開されました。

医療現場で役立つ「やさしい日本語」についての動画です。

やさしい日本語とは、日本語に不慣れな外国人、または高齢者、障害者に話す時に使われる、専門用語や難しい言葉を使わない、シンプルで分かりやすい日本語のことです。

動画を制作した、専門家の思いを取材しました。

【医療で用いる「やさしい日本語」】医療相談編 / Via youtube.com

YouTube動画より

まず、「医療で用いる『やさしい日本語』」と題された動画2本では、やさしい日本語とは何かという説明や、言い換えのコツについて、専門家が例を交えて説明しています。

他に、総合受付、医療相談、検査、病棟、外来、会計など、病院の様々なシーンでの会話について、それぞれ動画が作られました。

動画では、場面ごとの会話のやさしい日本語への言い換えや、外国人患者とのやり取りがまとめられています。

動画は、順天堂大学、帝京大学、聖心女子大学が協力し、東京の政策課題に連携して取り組む「東京都と大学との共同事業」の一環として作られました。日本に住む外国人の生活を支援するNPO「CINGA」も共に制作しました。

YouTubeでこの動画を見る

youtube.com

YouTube動画【医療で用いる「やさしい日本語」】外来編 (受付・医師の診察・処方薬の説明)

病院では、日本人でも理解することが難しいような医療の専門用語などが使われることもあります。どうすれば、日本語に不慣れな外国人などに分かりやすく伝えられるか、ということが動画で示されています。

例えば、動画の中では、このような言い換えが説明されています。

「喫煙・飲酒はなさいますか?」→「たばこは吸いますか?ビールや酒は飲みますか?」

「問診票の記入をお願いします。記入できたらこちらにお出しください」→(紙を手渡しながら)「これを書いてください。終わったら、ここに出してください」

「ベットから動く時はナースコールをしてください。付き添いをさせて頂きます。一人では動かないでください」→「一人では動かないでください。ベットから出るときは呼んでください。(ボタンを指差しながら)ここを押します。私が一緒にいきます」

【医療で用いる「やさしい日本語」】病棟編 / Via youtube.com

「外国人診療は英語で」という思い込み

約3年前から医療現場でやさしい日本語を広める活動をしている、順天堂大学医学教育研究室の武田裕子教授はBuzzFeed Newsの取材に対し、こう話します。

「『外国人診療は英語で』と思いこまれていることが多いですが、英語が通じない外国人の方が、実は多く日本に住んでいます」

「やさしい日本語を用いると、少しの工夫で驚くほど分かりやすく伝えることができるようになります。外国人の患者さんだけではなく、ご高齢な方や、聴こえや理解に困難のある方などにも効果的です」

武田教授は9月末、医師の「卵」である同大学の医学部生に対しても、やさしい日本語の授業を行いました。

順天堂大学

武田教授(中央)から医療現場でのやさしい日本語について授業を受ける順天堂大学の医学部生

日本に住む外国人の8割は簡単な日本語が分かる

日本で暮らす在留外国人のうち、人口がもっとも多い国籍は中国(構成比27.7%)で次いで韓国(同15.2%)、ベトナム(14.0%)、フィリピン(同9.6%)、ブラジル(7.2%)、ネパール(3.3%)です(2020年3月現在)。

外国人向けに英語が使われることも多いのですが、多様な言語を母語とし、英語が分からない人たちも多く住んでいます。

一方で、法務省の外国人住民調査では、日本に住む外国人の約8割が日常会話レベル以上の日本語ができることがわかっています。

順天堂大学 / Via moj.go.jp

法務省による外国人住民調査(2016)より、日本に在留する外国人の日本語会話力

医療通訳も、やさしい日本語も

重病の検査結果の詳細を伝える時などは、医療通訳者を通してコミュニケーションが取られることもありますが、日常会話レベルの日本語が理解できる人には、受診や受付、会計などの会話は「やさしい日本語」でのやり取りが役立ちます。

近年は日本に住む外国人の増加により、医療通訳の配備に力を入れている病院などもありますが、予算の問題もあります。また、日本に在住する外国人も様々な言語を母語とするため、全ての言語の医療通訳を揃えることは難しいという現状もあります。

武田教授はこのように指摘します。

「受付から会計まで、医療機関で伝える必要のある多くのことはある程度決まっています。患者さんがそれらを理解できるようになると大きな安心につながります。また、患者さんの理解は、安全な医療にも不可欠です」

「もちろん、やさしい日本語だけでは医療の全てをカバーすることはできません。詳細を聴き取ったり、難しい選択を求めるときなどに医療通訳者に通訳をお願いすることがあると思います。そのような時も、やさしい日本語を話すと、分かりやすく伝えることができます」

医療通訳者は医療の専門用語なども学んでいますが、医療関係者も、通訳者に対して、シンプルで分かりやすい日本語を心がけることで、通訳もよりスムーズになるということです。

【医療で用いる「やさしい日本語」】受付編(総合案内) / Via youtube.com

「ゆっくり簡単な言葉で話してくれた時、うれしかった」

今回、公開された動画の一つには、実際に日本に住み、出産のために入院した経験がある外国人女性2人の経験談や意見をまとめた動画もあります。

2人とも、出産した当時はまだ日本語が流暢ではなかったのですが、看護師らに日本語で自分の思いを伝えようとしたり、やさしい日本語でコミュニケーションを取ってほしいとお願いしたといいます。

しかし、知っている日本語で懸命に話しかけても「ごめんね、外国語わからない」「英語話せない」と、一種の「拒否反応」を見せる病院関係者もいたと話しました。

【医療で用いる「やさしい日本語」】 / Via youtube.com

一方で、ゆっくり話を聞き、簡単な言葉を使って話したりする関係者もいたといいます。

動画で経験談を話した2人は、医師や看護師がやさしい日本語でゆっくり話してくれた時には「うれしかった」「すごく安心した」と話しました。

2人は、医療関係者に対してのお願いとして、「専門用語を使わずに、ゆっくり、分かりやすい言葉で話してほしい」とし、そして、外国人患者から話を聞くときにも「発音を理解しようとしてほしい」「広い心で忍耐強く聞いてほしい」と話しました。

【医療で用いる「やさしい日本語」】 / Via youtube.com

医療現場でのやさしい日本語を巡っては、国立国際医療研究センター病院が医療関係者を対象に、やさしい日本語(医療)サポーター養成講座を開いています。

海外出身の患者と病院で日々接する医療者が、実際にやさしい日本語を病院で使えるように、日本語教師から言い換えなどを学びます。

同センターでは、やさしい日本語に関して三つの養成講座を開いていて、上級レベルの講座を終了すると、病院など自身が働く現場でやさしい日本語セミナーを開催運営することができるまでのレベルになります。

講座を修了した人が、また各地で、やさしい日本語を広めていくことができる仕組みです。

コロナ禍でも動画で「やさしい日本語」伝える。地方の関係者にも

武田教授は、このようなやさしい日本語に関する動画10本をYouTubeに掲載したことで、どのような場所にいても学べるようになったことが良かったと話します。

新型コロナウイルスの感染が拡大する前に、医療現場でのやさしい日本語についての研修会を開こうと企画していたものが、コロナ禍で開催できなくなりました。

そのような状況でも動画を無料で掲載することで、医療関係者それぞれが自宅などから動画で、好きな時間に学ぶことができます。

今回掲載した動画には、北海道や九州など地方にいる医療関係者からも、良い反応があったといいます。

実際、外国人技能実習生を多く受け入れる自治体や、外国人労働者が多く働く工場や農場などは地方にあるケースも多く、やさしい日本語のニーズが高まってきています。

武田教授は、医療関係者に向けてこう語ります。

「(やさしい日本語の言い換えに)難しいスキルは不要です。正解があるわけでもありません。相手が分かる言葉を探してみてください」

YouTubeでこの動画を見る

youtube.com

【医療で用いる「やさしい日本語」】「やさしい日本語」の基礎編


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UPDATE:国立国際医療研究センター病院による、やさしい日本語のセミナーについての説明を修正しました。