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殴る蹴るの暴力「怖くてパニックに…」 技能実習生が日本人従業員からの暴行を告発

岡山市内の建設会社で働いていたベトナム人技能実習生が、職場の日本人から殴る蹴るの暴行を受けていました。

岡山市内の建設会社で働いていたベトナム人技能実習生の男性がおよそ2年にわたり、職場の複数の日本人従業員から、殴る蹴るの暴行を受けていました。

男性と、男性を保護している労働組合「福山ユニオンたんぽぽ」は1月25日、日本外国特派員協会で会見を開き、被害について訴えました。

ベトナム人技能実習生は2019年10月に来日。働いていた建設会社では、およそ2年にわたり、日本人従業員からの暴力と暴言の被害に遭っていました。

トラックの上で作業している時に、日本人従業員2人からほうきや棒のようなもので数十回殴られたり、移動中の車でも暴力・暴言を受けたりしていました。

作業中に安全靴で左胸あたりを蹴られた際には、肋骨3本を骨折。

大きな部品を投げ渡された際は、歯を折り、左唇をケガをして4針縫いました。しかし会社側は当時、労災申請をせず、本人には「自転車で転んで怪我をした」という理由を強要していました。

鋭利な工具で足を突き刺された際には、男性は痛みに耐えられずに病院に行きたいと訴えましたが、会社側は塗り薬を与えただけだったといいます。

男性を支援する労働組合との交渉の中で、会社側は暴行の事実を認め、謝罪と補償をすると表明しました。

男性は会見で、「暴力と暴言がひどかったが、なかなか誰にも相談できなかった」とし、当時の心境をこう話しました。

「怖く、パニックになり、どうすればいいかわからなかった。相談したら、会社で働けなくなって、ベトナムに帰らなければいけなくなるのではと怖かった」

「暴力についてベトナム人の先輩に相談した時、警察に通報したら、職場でさらに圧力をかけられ、ひどいことをされるのではないかと言われた」

「家族に知られ、心配されたくなかった。暴力が始まってから最初の1年は、ベトナム人の先輩以外には誰にも言えなかった」

暴力は止まらず、2021年6月に岡山の監理団体に相談。少しの間は暴力が止まりましたが、また被害を受けるようになりました。

男性は2021年10月、「福山ユニオンたんぽぽ」に「長い間暴力を受けていて、戸惑いと恐れの日々を送っていた。平穏な日を取り戻し、良い会社にかわりたいので助けてほしい」と相談。シェルターに保護されました。

現在は「福山ユニオンたんぽぽ」が、男性が働いてた会社と団体交渉を行っています。

会社に対し、事実確認とそれに基づいた謝罪と補償を求め、監理団体には保護責任を問いただしています。会社側は交渉で事実を認め、謝罪と補償をすると表明しているといいます。

技能実習生の多くは、母国で送り出し機関に渡航費用や手数料などとして多額を支払い、日本にやってきます。そして、借金の返済と家族への仕送りを続けながら働いています。

男性の手取りは月に約11万円で、切り詰めて送金をしてきましたが、まだ借金の返済が残っています。

そのため、男性は新しい会社に移って、働き続けたいと希望しており、すでに複数の会社からオファーがあったといいます。

暴行に関しては現在、警察が捜査しており、労働基準監督署も近く、男性にヒアリングをする予定です。

「多くの技能実習生が被害に」「失踪する実習生も」

男性は「特に建設現場では暴力が横行し、多くの技能実習生が被害に遭っています」「それを理由に失踪する実習生もいます」と話しました。

「福山ユニオンたんぽぽ」の武藤貢・執行委員長は会見で、「この問題の根底には、技能実習生制度の矛盾がある」とし、こう指摘します。

「建設現場においては、様々な暴行・パワハラが起きており、技能実習生が被害に遭っています」

「技能実習生をめぐる低賃金、暴力、パワハラの問題は、日常茶飯事におきています。暴力の根底には、アジアの人たちに対する人権意識の欠如、民族差別があると思います」

「技能実習制度は廃止し、労使対等の認識を持った移民政策をとるべきだと思っています」