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私が男子だったら合格してた?そんな受験生を生まないために。教師が動き始めた理由

東京都立高校での男女別定員制の廃止などを求めるオンライン署名に2万9千筆以上が集まっています。女子生徒が不利になってしまう、都立高校の入試の問題とはーー。

男子に比べ女子の合格最低点が高くなりがちな東京都立高校の入試のあり方に、疑問が投げかけられています。

教育関係者らでつくる「東京ジェンダー平等研究会」は、都立高校の男女別定員制の廃止などを求めるオンライン署名を立ち上げ、2万9千筆以上が集まりました。

発起人の都立高教諭らは6月9日、都庁で会見を開き「入試において、性別によって不公平な扱いをするということをなくさないといけない」と訴えました。

東京都立高校の全日制普通科では、男女の生徒数がほぼ同数になるような男女別定員制をとっています。結果として、多くの学校で男子生徒より女子生徒の方が合格ラインが高くなり、女子に不利な状況が生まれています。

都立高校の教員で署名の発起人の島田庸さん(仮名)は4年ほど前から、都立高入試での男女差の合格点の差に関して問題意識を抱いてきました。

今年に入って各報道機関がこの問題について取り上げ始め、世間的な関心も高まってきたことから署名を立ち上げたといいいます。

島田さんは「ジェンダーの問題、あるいは公正な入試とは何かという議論が、この署名をきっかけに広がってほしい」と会見で話しました。

会見に出席した研究会のメンバーで、神奈川大学の平山昇准教授(日本近代史)は、「入試の公平性の根本に関わるところで、性別を理由にした理不尽なことに直面し、苦しむ受験生がいるという制度はなんとか変えなければいけない」と訴えました。

「自分が男の子だったら、この点数で受かったのに……という立場の女子受験生に、都の教育委員会の人たちは、どう説明するのでしょうか? 全体のシステムの調整ために、あなたは犠牲になりましたと言えるでしょうか?」

「きちんと説明責任を果たせるようにした方がいいのではないかと思います。上の点数を取った人が他の属性にかかわらず努力が認められて合格になる、という入試の根本を揺るがせてしまうようなことは、なくすべきだと考えています」

今回の署名では、以下の3点を求めています。

・最終的には男女別定員を廃止すること。

・それに向かうための段階として、「男女枠緩和実施校」を40校から全校に拡大し、割合も現在の1割からそれ以上に拡大すること。

・入学者選抜の得点本人開示に、合格最低点を示すこと。

「男女枠緩和実施校」とは、都立高のうち、男女での合格点に著しい格差が出ないように緩和措置をとっている約40校を指します。

これらの緩和実施校では、受験者の9割を男女別の成績順で選んだ後、残りの1割を男女合同の成績順で合否判定しています。

署名は最終的な男女別定員の廃止を掲げつつ、段階的な対応として、緩和実施校を約40校から全校に拡大し、男女合同で選ぶ割合も現状の1割からさらに広げていくことを求めています。

平山准教授はこう説明します。

「複雑な問題で、難しい事情があることは我々も承知しております。すぐに全部を変えろと極端なことを言っているわけではありません」

「現在がベストではなく、最終的には性別による不公平な扱いをなくさないといけない。そこまでどうしていくのか、ということを議論していきたい」

合格最低点の開示を求めているのは、非公開になっていることで女子受験生たち自身が不利な状況に置かれていることに気づけず、問題が明るみに出づらくなっているからです。

このため、都立高の教員でさえも問題を認識していない人が多く、都立高教諭の島田さんは「教師もそのことに気づくチャンスがありませんでした」と指摘します。

「不公平感があるのは承知。是正を検討」

東京都教育委員会はBuzzFeed Newsの取材に対し、男女の合格最低得点の差について次のように答えました。

「毎年40校を見ていて、女子の方が合格最低得点が高い学校が多かったのは事実です。不公平感があるのは承知しているので、是正していくことは検討しています」

一方で、合格最低得点を非公開としている理由を「子どもの気持ちになって考えてみた時に、公開することは難しい」と説明。今後も公開する予定はないと回答しました。