東京都渋谷区・代々木上原にあるイスラム教のモスク、東京ジャーミイで、チャリティバザーが開かれた。
バザーの売り上げ金の寄付先は、台風19号で被災した自治体だ。バザーを訪ねた。
バザーに並んだのは、パキスタンやインドネシアなどのスカーフや雑貨。このモスクに通う各国出身のイスラム教徒や関係者らが出店した。
東京ジャーミイ・トルコ文化センターで広報を担当する下山茂さんによると、売り上げ金は、長野県や福島県など、台風で大きな被害を受けた自治体に送られる。
チャリティバザーは元々、モスクの改修工事費用のために企画されていた。
このモスクの代表イマーム、アラス ムハンメッド・ラーシットさんが、台風のニュースを見て、台風被災地に売上金を送ることを決めたという。
下山さんは「イスラム教には弱者救済という教えがあります。台風や洪水で被災された方に届けたいという思いは、イスラム教の助け合いの精神です」と話す。
2階礼拝堂前では、サモサや揚げパン、チャイなど、各国の食べ物も販売された。
会場でパキスタンの民族衣装を販売していた、パキスタン出身のナディアさんは、千葉県在住で、台風15、19号の際には自身も被災し「怖かった」と話す。
「寒くなってきたので、被災地の人々を心配しています。パキスタンも地震など災害がある国です。復興は1日1日、少しずつだと思いますが、心を強く持ってください」
イスラム教徒女性が身につけるスカーフなどを販売していた、日系ペルー人の渡辺ユミコさんは、埼玉県在住で、台風の際は自宅近くの川が氾濫したという。
自宅は浸水などを免れたが、大きな被害を受けた地域を心配する。
渡辺さんは「悲しみがあれば、必ず幸せが訪れると信じていますし、絶対復興していきます。みなさまのために祈っています」と話した。
夫がインドネシア出身ということで、インドネシアのスカーフなどを販売していた渡辺さん。「今日はムスリムでない日本のお客さんもたくさんいらっしゃっているので、アクセサリーなども販売していますし、スカーフは首に巻いておしゃれにも使うことができます」と話した。
バザーには、難民支援を行う団体らも参加。
シリア紛争被災者支援をするプロジェクト「イブラ・ワ・ハイト(「針と糸」の意)」は、シリア人難民女性の自活を刺繍でサポートする。
この日は、トルコやヨルダンに逃れたシリア人難民女性らが一つ一つ刺繍した、キーホルダーやワッペン、ブローチなどを販売した。
伝統的なオスマン・トルコ様式で建てられた東京ジャーミイは、住宅やビルが立ち並ぶ渋谷区代々木上原に佇む。
東京ジャーミイの歴史は戦前までに遡る。ロシア革命から逃れてきたカザン州のトルコ人のために、1938年に建てられた東京回教礼拝堂がその始まりだ。
1998年から2年間かけて建てられた現在のモスクは、最大2000人を収容できる礼拝場を持ち、各国出身のイスラム教徒たちが礼拝に訪れている。
イスラム教徒でない日本の人々にも、イスラム教やモスクを紹介するため、ガイド付き見学も無料で行なっており、週末などには多くの人が訪れている。
1階部分にはハラル食材店や書籍店もあり、他にもアラビア語書道講座などのワークショップも開いている。