• lgbtjpnews badge
  • lgbtjapan badge

「会社では、女性が好きなふりをして生きていた」ある男性が起業し、安心して働ける場所作りをする理由

ゲイであるということに一時期は苦しみ、悩んだ須藤啓光さんが、LGBTQの人々をサポートするため起業をするまで。

「僕は、自分がゲイだということが怖かったんです」

ゲイ男性の須藤啓光さん(31)は、そう語ります。

現在は、LGBTQの人々の部屋探しをサポートする会社「IRIS(アイリス)」を経営する須藤さん。

10代、20代前半で悩んだ須藤さんが、起業し、セクシュアルマイノリティが「安心して働ける場所」作りに奔走する理由とはーー。

須藤さんに話を聞きました。

IRIS

須藤啓光さん

須藤さんが、ゲイであると自身の性的指向について気づいたのは18才の頃。

それまでは、女性の恋人もいましたが、うまく交際が続かなかったといいます。

「上京してきたタイミングでいろんなことを知って、自分はゲイだと知りました」

遂に自分の性的指向が分かったけれども、その頃は「怖い」という感情を抱いたといいます。

その背景にはテレビのバラエティ番組など、メディアで取り上げられていた、ゲイ男性のネガティブなイメージがありました。

「自分がゲイだということが怖かったんです。当時、テレビでは『おかま』という言葉が多く使われていて、それがすごく嫌でした」

「自分は『普通』じゃないんだ、と思ってしまったんです」

しかし、少しずつ自分の性的指向を受け入れ、さらには、自分のように悩んでいる人を応援したり、正しい情報を届けるような役割を果たしたいと思うようになったといいます。

須藤さんは、会社員として働いていた24才の頃、任意団体としてアイリスを設立しました。

「アイリスを立ち上げるまでは、本当に苦しんだ時期がありました。でも、自分と同じように苦しんでいる人がいるんじゃないかと思って、任意団体の立ち上げを決めました」

設立から2年間は、セクシュアルマイノリティの人たちなどの生活に役に立つ情報をウェブマガジンで届けていました。

勤めていた会社でのアウティング。「人の命に大きく影響与えること知って」

Michael H / Getty Images

(イメージ写真)

アイリスを立ち上げた当初は、証券会社で働いていた須藤さん。

会社ではゲイであることを公表していなかったため、「女性が好きだという設定で生きていて、彼女がいるふりをしていた」といいます。

「自分に嘘をついている自分にすごく嫌気がさして、疲れてしまうという状況がありました」

そのような悩みを抱えながら働いていましたが、会社で「アウティング」の被害に遭ったのです。

アウティングとは、本人が公表を望んでいないにも関わらず、セクシュアリティやジェンダーを勝手に人に話してしまうことを指します。

そのような情報は、当事者が望まない場合は決して、了解なく伝えられるべきでなく、アウティングは決して許されるものではありません。

三重県や東京都国立市など複数の自治体で、アウティングを禁じる条例もできています。

アウティングの被害を受けた結果、須藤さんはその職場で働きづらくなってしまい、退職することになりました。

須藤さんはアウティングについて、「その発言が、人の命に大きく影響を与えるかもしれないということを知ってほしい」と話します。

同性パートナーとの部屋探しに困った経験をもとに

IRIS

須藤啓光さん

退職後、須藤さんはアイリスを法人化させ、不動産仲介の事業などに注力します。

背景には、須藤さん自身が経験した、不動産業界でのセクシュアルマイノリティに対する差別や偏見の現状がありました。

同性のパートナーと部屋探しをする際、嫌な思いをした経験があったのです。

「初めて男性のパートナーと同棲をするという時に、なかなか部屋が決まらず、5軒ほど不動産会社をまわりました。男女のカップルや新婚のご夫婦と申し込みのタイミングがかぶると、(業者から)『礼金や家賃を上乗せしてもいいなら優先しますよ』といったことを言われました」

この経験について周りのセクシュアルマイノリティの友人たちに相談すると、皆、同じような経験をしていたのです。

「私自身が家を借りづらかった経験もあり、不動産業界にまずはこういった課題があるということを可視化させるフェーズだと思いました。そして困っているセクシュアルマイノリティの人たちのサポートをしたいと考えました」

そこで、LGBTQの人々を主な対象とした、不動産仲介の事業を始めました。

IRIS

同性のカップルが部屋探しをすると、なかなか部屋が決まらなかったり、不動産会社の人たちから心無い言葉や差別的な言葉をかけられたりすることもあるといいます。

アイリスには日々、他の不動産会社で、同性カップルということを理由に差別的な対応をされ嫌な思いをしたり、部屋がなかなか決まらなかったりしたLGBTQの当事者が来店しています。

起業した際には「うまくいかないよ」との声。でも…

アイリスを法人化した際には、周りの人たちからは「そんなビジネスうまくいかないよ」「LGBT系の企業なんかすぐ潰れるでしょ」という声をかけられました。

「起業することに対して、応援よりもネガティブな声の方が多かったと思います」

しかし、須藤さんが好きな言葉は「継続は力なり」。

最初に任意団体のアイリスを立ち上げてから数えると、今年で8年目になります。「ここ2、3年は経営も安定してきました」と笑顔を見せます。

「やることに、そして続けることに意義があると思います。そうすると、いろんな結果がついてきて、多くの仲間と出会えると思います」

安心して働ける場所を。職場環境を整える思い

IRIS

東京レインボープライドに出展した際のIRISのブース。

アイリスでは、接客するスタッフも同性パートナーと同棲経験がある当事者や、LGBTQの人々を理解しサポートする「アライ」です。

来店客が安心して部屋探しについて相談できるように配慮しているといいます。

また、対外的な理由だけでなく、セクシュアルマイノリティの人たちが「安心して働ける場所を提供したい」という須藤さんの思いもあります。

須藤さん自身が、以前働いていた会社でアウティングを受けた経験からも、そのような心配をすることなく働ける労働環境の重要さについて指摘します。

「職場は働く場所ですから、自分のセクシュアリティ ーについて悩んだりする必要は、本当はないはずなんです。自分らしく生きられるというのは、『ライフ(プライベート)』もそうですけど、『ワーク(職場)』での環境も大切だと思っています」

「そういった意味合いで、安心して働ける環境を提供したいと考えています。今後も、それを広げていきたいなと思います」

若い人たちに伝えたい「夢は諦めないで」

自分がゲイだと気づいた時には「怖い」という思いを抱き、悩んだ須藤さんですが、最近では、若者にセクシュアルマイノリティについて伝える活動もしています。

年に1、2回、中学校などで講演活動をしていて、その際には、自身の悩んだ経験だけでなく、様々な性自認・性的指向を持つ人々がいることなどを伝えています。

Xavier Arnau / Getty Images

(イメージ写真)

自分がゲイだと気づき、苦しんだ10代後半。そして、会社でアウティング被害に遭い、辛い思いをした20代。

「生きていれば本当にいろんなことがある」と話す須藤さん。

しかし、若い人たちに対して、こう語りかけます。

「自分の夢は諦めないでほしいです。やりたいと思ったことはとことんチャレンジしてほしい」

「継続することが力になるので、諦めず続けてほしいと思います」


🏳️‍🌈🏳️‍🌈🏳️‍🌈🏳️‍🌈🏳️‍🌈

LGBTQをはじめとする性的マイノリティの存在を社会に広め、“性”と“生”の多様性を祝福するイベント「東京レインボープライド」。BuzzFeed Japanは2021年4月23日(金)〜5月1日(土)にかけて、性的マイノリティに焦点をあてたコンテンツを集中的に発信する特集を実施します。

特集期間中、Twitterではハッシュタグ「#待ってろ未来の私たち」を使って、同性婚やパートナーシップ制度などのトピックをはじめ、家族のかたちに関する記事や動画コンテンツを発信します。

同性婚の実現を求めて全国のカップルが国を訴えた裁判や、各地でのパートナーシップ制度の広がりなど、少しずつ社会が変わり始めている今だからこそ、「より良い未来に生きる私たち」に向けて、「2021年の私たち」からのメッセージを届けます。

東京レインボープライド前夜祭として、BuzzFeedでお届けしたライブ番組はこちら🙌🏳️‍🌈

【これってアル?ナイ? #おうちでプライド2021】 💭「恋人のことを友達だとウソをついたことある?」 💭「自分の子供の名前を考えたことある?」 あなたはこんな経験ありますか?恋愛や暮らしにまつわる“あるあるな質問“について、ゲストとわいわい話し合いました🙌🏳️‍🌈 https://t.co/LcbE5Tx0l5

Twitter: @BFJNews


Contact Sumireko Tomita at sumireko.tomita@buzzfeed.com.

Got a confidential tip? Submit it here