「手話が共通言語のスターバックス」が日本で初めて、東京都国立市にオープンします。
聴覚に障害のあるスタッフを中心に、主なコミュニケーション手段として「手話」を使用し、運営する店舗です。
注文方法や、ドリンクの受け取りなど、どのようになるのでしょうか?

手話が主なコミュニケーション手段となるこの店舗は、6月27日、東京都国立市のJR国立駅に併設する商業施設「nonowa国立」内にオープンします。
手話は英語で「Sign language(サイン・ランゲージ)」。手話を共通言語とするスターバックス店舗は「サイニング・ストア」と呼ばれています。
スターバックスは国立市でのサイニング・ストア開店を前に、オンラインで報道陣に店舗を公開しました。店内の様子を、写真を交えて紹介します。
サイニング・ストアでの注文方法は?
サイニング・ストアでは、聴者と聴覚に障害のあるスタッフが共に働いています。
店内では、スタッフ側と来店客の両方が聴覚に障害のある場合を考え、様々な配慮が散りばめられているようです。
まず、入店すると「いらっしゃいませ」「こんにちは」と手話で挨拶がされます。

手話の他に、注文方法がいくつかあるそうです。
まず、注文したい商品を話すと、文字で表示される音声認識が入ったタブレット。レジに設置されています。
レジ担当者が聴覚に障害のあるスタッフでも、来店客は口語で注文を伝えることができます。

また、指差しで注文を伝えられるメニューシートもあります。
シートには、「店内・お持ち帰り」「サイズ」「ホット・アイス」などのアイコンがあり、それを指差して伝えることができます。

他にも、コミュニケーションに使える筆談具のツールも用意されています。
サイニング・ストアのストアマネージャー・伊藤真也さんは、店内での注文やコミュニケーションについて、こう話します。
「まず、目を合わせることがポイントです。目を合わすことで、より良いコミュニケーションが生まれます。『手話ができないといけない』とか『手話をしなきゃ』と思わずに、様々なコミュニケーションがあると知って頂きたいです。どういうコミュニケーション方法で伝えようかな?と考え、楽しんで頂ければと思います」

また、聴覚に障害を持つ人のコミュニケーション方法に、相手の口の動きを読む「読話(どくわ)」というものがあります。
そのため、スタッフのエプロンには「Please Face Me(こちらを向いてください)」というバッチがつけられています。

新型コロナウイルスの予防対策で、飲食店では一般的にスタッフはマスクを着用しています。
同店舗では、来店客側が聴覚障害者の場合、スタッフが話す時に口元をよく見られるようにするため、透明マスクを着用しています。

注文受け取りや店内にもたくさんの工夫や配慮が
ドリンクの受け取りをスムーズに進め、注文を待っている間にも有意義な時間が過ごせるよう、店内には様々な工夫があります。
まず、注文受け取りにはデジタルサイネージが活用されています。
レシートに印字された注文番号と同じ番号がサイネージに表示され、カウンターでドリンクを受け取れる仕組みです。

また、注文を待っている間には、サイネージで手話を学ぶこともできます。
この店舗が国立市にオープンした理由の1つは、国立駅の近くにあるろう学校の存在です。
サイニング・ストアや国立市から、手話や手話への理解を広めていくことも大切な目標の1つだといいます。

店内には、手話をモチーフにしたアートも。
手話をテーマにした作品で知られる門秀彦さんの作品で、あいさつやコーヒーに関する言葉などが手話で表されています。
門さんは、ろう者の両親を持っているというバックグラウンドから、手話に関する作品を作っているということです。

聴覚障害のあるスタッフが働くうえで、職場で使用する機械などにも工夫がなされています。
通常、コーヒーの管理などには、音が出るタイマーを使っていますが、聴覚障害を持つスタッフ用には、振動で伝わる「シルウォッチ」が導入されています。
ボタンを押して、他のスタッフに振動を伝えることもできるそうです。

新型コロナウイルスの感染防止対策で店内での混雑を避けるため、当面は整理券を発行しての入店になります。
商品も、当面はテイクアウト(持ち帰り)のみですが、店内のテーブルには車椅子利用者が使いやすいように考えられたスペースも設けられています。

サイニング・ストアが日本にできるのは、この店舗が初です。
世界ではこれまでに、マレーシア、アメリカ、中国に計4店舗がオープンしているため、日本店舗は世界では5店舗目になります。
スターバックス広報部によると、日本のスターバックスにも、既に350人を超える障害のあるスタッフが所属しているといいます。
うち、聴覚に障害があるスタッフは65人。3年前に、聴覚に障害があるスタッフとの座談会を開いた際に、サイニング・ストア開店への提案があったといいます。
広報部のSocial Impactチーム・林絢子さんは、このように話します。
「座談会で、聴覚障害があるスタッフから、自分たちでお店を運営したいという意見がありました。店舗の近くには、ろう学校もあります。聴覚に障害を持つ若者の夢を広げたいという思いがあり、生徒さんたちにも、働くスタッフの姿を見て欲しいと思います。また様々なお客様にも、気づきが得られる場所になればと思います」
