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新成人の4割が外国人「地域の仲間だから、ともに祝う」ある街の”成人の日”

新成人の約40%が外国籍という東京都豊島区。外国人の式典出席者を対象に振袖の着付けなどの取り組みが実施されました。

新成人の約40%が外国籍という東京都豊島区で「成人の日」の1月13日、無料で振袖の着付けをする取り組みが実施された。

文化の違いなどから、式への参加が少ない外国出身の新成人に、少しでも興味を持ってもらうことがねらいだ。取り組みは今回が初めて。

地域で暮らしていくなかで就学や就労などの「壁」にぶつかったときのため、若者とたちと行政との関係づくりにもつなげていきたいという。

着付け体験には、留学生や専門学生など女性が11人、男性が4人の計15人が参加した。

フィリピンからの留学生、ウィルマー・チェンさんは初めて袴を身につけ、「外国人の住民にも着付けをプレゼントしてくれたり、歓迎してくれて本当に嬉しいです」とBuzzFeed Newsに語った。

フィリピンでは、女性の成人は18才で盛大なパーティーを開くことが多いが、男性はお祝い自体をしないことも少なくない。チェンさん自身も成人のお祝いをしていなかったため、この日が初の成人祝いだ。

日本での成人式の文化は知っていたというチェンさんは、笑顔でこう話した。

「外国人が参加できるとは思ってもいなかったので、こうして一緒に祝っていただき感謝の気持ちでいっぱいです」

新成人の4割が外国籍、でも…

国よると、区に住民票を置く新成人3122人のうち、39.6%が外国籍だった。女性は1552人中571人、男性は1570人中655人だ。

1997年には同区の外国人の新成人は117人のみで、全体の3.4%だったが、2002年に10%代、2014年に20%代になり、翌年の2015年には30%代になった。

全体的な人口の国別では、2019年1月1日時点の統計で、中国が1万4250人で1位、ベトナムが3609人で2位、その後はネパールが3439人、韓国・朝鮮が2661人、ミャンマーが2232人と続く。

同区に在住する外国人の国籍は長年、中国に次いで韓国・朝鮮が多かったが、2016年からはベトナムが2位に。翌年には、それまで人口4位だったネパール出身者の人口が3位になった。いまではベトナム人の人口は5年前と比べて約5.6倍、ネパール人は約3.7倍だ。

全体数も増加傾向にあり、昨年も新成人の39.0%が外国籍だったという。とはいえ、例年、成人式に実際に参加する外国人は多くない。

育ってきた文化や家族の習慣だけでなく、地域との繋がりや知り合いがいない、成人式があるということを知らないといった理由で、出席に至っていないのだ。

5カ国語のちらし

区は今年、地域で長年国際交流をするNPO「Fam」と協力し、留学生ら外国籍の新成人の参加を募集する取り組みを始めた。

募集のちらしの題名には、読み仮名が振られた日本語のほかに、英語、中国語、韓国語、ベトナム語が並ぶ。さらに、ウェブではそれぞれの言語に翻訳した式典案内が掲載された。

プロジェクトを企画、運営する豊島区議会の永野裕子議員は、BuzzFeed Newsに対しこう語る。

「留学生として日本に来ていても、バイトにあけくれて忙しく、式のことを知る機会もないようです。せっかく日本に来ているので、同じ地域の仲間として祝えたらと思います」

プロジェクトの目玉は、無料で実施される振袖や袴の着付けだ。

「Fam」は40年にわたり、豊島区で留学生らを対象に着付・茶道・華道・書道などの日本文化体験を提供してきた。振袖なども所有していたことから立ち上がったのが、新成人の着付けのプロジェクトだったという。

授業や進学、就職で直面する「壁」

今回のプロジェクトには、外国籍の若者たちと行政のつながりをつくるというねらいもある。

行政や教育機関の受け入れ態勢が整わない状況下で人口が増加すると、親の仕事などを理由に移住した子どもたちの学校生活などに障壁が生まれてしまうケースが多いという。永野議員は、こう語る。

「言葉の習得に加え、学校の勉強内容も難しくなるためについていけず、受験や就職でうまくいかなくなってしまうケースもあります」

特に問題視されているのは、比較的大きくなってから移住した子どもたちだ。小学生だと言語や教育面でも比較的馴染むスピードが早いが、中学生以降の場合、壁にぶつかってしまうことが多いという。

区としても日本語教室を実施するなど対策は進めているが「十分でないところもある」と永野議員は話す。

「今回は成人式で一緒にお祝いしたいということに加え、行政と繋がりがない外国人の方も多いため、困った時に相談できるような関係が作れればと思います」

成人式参加で繋がりも

振袖の着付けにあたったのは、Famのメンバーら、地域のボランティアだ。初めての振袖に少し緊張した面持ちの留学生に、「きれいだよ」「すごく似合っている」「Beautiful」と声をかけていた。

着付けについては、ちらしで知って一人で応募した留学生もいれば、日本人の友人が応募して同伴した人もいた。

着付けでは様々な国の学生らが出会い、横の繋がりを作る機会にもなった。ロシア人の友人に同伴して着付け会場を訪れていた、キルギス出身のマリアム・アブドゥラザコワさんは、こう話した。

「私の国は経済的にも厳しく、なかなかこのような文化体験に行政が取り組んだりする数も少ないです。日本では区が積極的に取り組んでいて、とても嬉しいです」