新型コロナウイルスの感染拡大を受け、「ミニシアター」と呼ばれる小規模映画館が大きな打撃を受けている。
感染拡大防止のために上映自粛が広がっているが、政府からの補償は確実な状況ではない中で、映画館の家賃や従業員の給料は払わなければならない。
そのような中で、映画館運営関係者や映画監督らが中心となり、政府に補償を求めるオンライン署名や、支援募集を始めている。
「ミニシアターが存続の危機にある」と、政府に補填を求めるオンライン署名「#SaveTheCinema『ミニシアターを救え』プロジェクト」が立ち上がった。
同プロジェクトの青木基晃さんは、BuzzFeed Newsの取材にこう話す。
「映画館によっては家賃もかかり、従業員の給料も払わないといけません。このままではコロナが終息した後も、再開できる劇場がなくなってしまうのではないかと懸念しています」
「一度、場がなくなってしまうと、コロナが終息しても復活してこれないんです」
同プロジェクトはオンライン署名で政府に対し「上映自粛や時短営業によって生じた損失の補填」「終息後に集客を回復させるための支援」の2点を求めている。
プロジェクトでは、厳しい状況をこのように説明する。
「何の経済的補償もない中での『休館』は、そのまま『閉館』に繋がってしまうことになりかねません。今の状態が 6 月まで続けば、夏を待たずに閉館する映画館が続出することが予想されます」
ミニシアターでは、大手資本が製作・配給し全国上映されるような映画ではない、日本のインディーズ映画や、海外の良質なドキュメンタリーなどの映画を、人々に届ける文化的な役割を果たしてきた。
2日で2万9千筆の署名
政府に支援を求めるオンライン署名は、映画監督の是枝裕和さんや俳優の安藤サクラさんなど、34の監督・俳優・団体などが呼びかけ人となって発足。200以上の映画関係者・団体・映画館が賛同者となっている。
4月6日に立ち上がった署名は、8日午後時点で既に2万9千筆以上が集まっている。
集まった署名は4月中旬ごろに関連政府省庁に提出される予定だ。
Twitter上では、#SaveTheCinemaのハッシュタグをつけ、ロゴを持った写真を投稿して、支持を表す動きも出ている。ロゴはオンライン署名サイトからダウンロードできる。
また、4月中旬をめどに、ミニシアターエイド基金がクラウドファンディングを立ち上げ、支援を募る予定だ。
「売り上げ8割減」関西の13劇場も支援サイト
上映自粛で打撃を受ける京阪神の13の映画館も、共同で支援を募るためにウェブサイトを立ち上げた。
「SAVE OUR LOCAL CINEMAS(私たちの地元の映画館を救おう)」では、映画館に直接行けない中でも、Tシャツを購入や寄付で、映画館を応援することができる。
映画館の京都みなみ会館(京都市南区)の担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し「京阪神に関していうと、先々週に売上が半分になり、先週は、それが更に半分になったというような状況です。どこも、平常時の8割減が平均的です」と話す。
同会館は「京阪神の豊かな映画文化の灯を消さないため私たちは声をあげます。どうかお力を貸してください」とTwitterでも呼びかけている。
個々の映画館もクラウドファンディングで支援募る
危機的な状況を受けて、各地の映画館も、それぞれにクラウドファンディングで支援を募っている。
下高井戸シネマ(東京都世田谷区)は、クラウドファンディングのページで「下高井戸に約60年続く映画の灯を守っていきたい」「外出が安全な状況になりましたら、見逃してしまった作品を当館で是非ご覧ください」と支援を呼びかけている。
東京都の渋谷・吉祥寺に映画館があるUPLINKでは、映画60本以上が定額で見放題になるオンラインのサービスを開始し、同時に寄付付きも選べる仕組みだ。
UPLINK代表の浅井隆さんは、支援を呼びかけるnote記事で、こう呼びかけている。
「今までアップリンクの映画館を支えてくださった方々、まだ一度も訪れたことがなくても『このウイルスによる危機的状況が収束した際には映画館を訪れたい』と思ってくださる方々に、是非アップリンクを応援していただきたいと思います」
「この新型コロナウィルス の収束には、1年以上かかるとも言われています。それまでは、皆様においても、健康な生活を送られることを願っています。そして、新たな日常を取り戻した時にはぜひ映画館にお越しください」