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難民の姿を描く写真展が、群馬のあの街で開かれるわけ

6月20日の世界難民の日に合わせ、多くのロヒンギャが住む群馬県館林市でロヒンギャの写真展が開かれます。難民キャンプなどで撮影をした写真家2人の思いを聞きました。

6月20日は「世界難民の日」。この日から群馬県館林市で、日本人写真家2人によるロヒンギャの写真展が開かれる。

ロヒンギャとは、ミャンマーで弾圧を受けているイスラム系少数民族だ。ミャンマー西部ラカイン州とバングラデシュのクトゥパロン難民キャンプで、ロヒンギャの姿を写真に収めた2人の日本人写真家に話を聞いた。

Katsuya Shimbata

バングラデシュのクトゥパロン難民キャンプで暮らすロヒンギャ女性

写真展の名は「われわれは無国籍にされた」。ミャンマー国内に住みながらも、ミャンマー国籍を与えられず、ミャンマーのパスポートも取れないロヒンギャの人々の状況を意味している。

群馬県館林市で写真展を開く理由は、弾圧を逃れ日本に難民として逃れた約200人のロヒンギャがこの街で暮らしているからだ。

写真展は、館林を中心に日本に住むロヒンギャの生活を支援する在日ビルマ・ロヒンギャ協会(BRAJ)と、日本国内で無国籍の人々の支援を行うNPO法人無国籍ネットワークが共催している。

Sumireko Tomita/ BuzzFeed

展示される写真30点を撮影したのは、フリーランス・フォトグラファーの狩新那生助(かりにいな・しょうすけ)さんと、ドキュメンタリー・フォトグラファーの新畑克也(しんばた・かつや)さん。

狩新那さんは「今この瞬間にも難民キャンプで大変な生活をしている人がいることを知ってほしい」と語る。

「知って、関心を持ってほしい。今すぐに何かは出来なくても、ロヒンギャの置かれている現状を知っていれば、支援の機会があれば何かできるかもしれない」

Sumireko Tomita/ BuzzFeed

狩新那生助さん(左)と新畑克也さん

狩新那さんがバングラデシュで初めてロヒンギャを撮影したのは2014年。通信社勤務を経て、フリーランスカメラマンとしてミャンマーの少数民族を追っていた。当時からバングラデシュの難民キャンプはミャンマーから逃れてきたロヒンギャの人々で溢れており、キャンプにさえ入れない人たちが村で生活していた。

2017年4月、写真集「ナフ川の向こうに」を出した。こうした厳しい状況の中生きる人々の写真をまとめたものだ。

しかし2017年8月、ミャンマー西部ラカイン州でロヒンギャを弾圧する暴力が吹き出し、家屋は破壊され、結果約70万人の人々がバングラデシュに逃れた。状況はさらに悪化した。

狩新那さんはそれらの人々が逃れた、バングラデシュ南部のコックスバザールにあるクトゥパロン難民キャンプを2017年12月〜18年1月にかけて訪れた。

Katsuya Shimbata

バングラデシュのクトゥパロン難民キャンプ

起伏が激しい難民キャンプに見渡す限り広がるテント群。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)など国連の支援も受けてはいるが、住居も竹を組んだものにビニールシートを覆った簡素な作り。

「地盤も緩い土地柄で、雨季にサイクロンがキャンプを襲ったら…と考えると背筋が寒くなった」

キャンプの中では多くのロヒンギャ難民を撮影したが、中でも強く印象に残っているのが、写真集「クトゥパロンの涙」の表紙にもなった、ロヒンギャ女性のハミダベゴンさん(当時24歳)と当時2歳の娘のコヒヌアターちゃんという。

Shosuke Kalinina/柘植書房新社

写真集「クトゥパロンの涙」の表紙。ハミダベゴンさんとコヒヌアターちゃん

当時、難民キャンプの簡素な小屋で、娘と17歳の妹、15歳の弟と4人で暮らしていたハミダベゴンさん。笑顔で狩新那さんを家に迎え入れたが、夫のことを聞くと、大粒の涙を流しながらこう話したという。

「夫はビルマ軍に銃で殺されました。私たちも家も燃やされたのでここに逃げてきたのです」

このような経験をしたのはハミダベゴンさんだけではない。多くのロヒンギャがミャンマーの故郷で武力衝突の被害者となり、親類を殺され、命からがら他国に難民として渡った。

UNHCRによると、コックスバザールには、90万人を超えるロヒンギャ難民が36の地域に分かれて暮らしているという。

狩新那さんは「もちろんロヒンギャの人たちだって人権を認められ、国籍をもらって生まれ故郷に住みたい。けど帰ったら殺されるかもしれない。とてもじゃないけど怖くて帰れないと話します」と語る。

Katsuya Shimbata

ミャンマーのシットウェ国内難民キャンプ内で勉強をするロヒンギャの子ども

狩新那さんとともに写真展を開く新畑克也さんは、ミャンマー西部ラカイン州にあるシットウェ国内難民キャンプや、周辺地域など、ミャンマー国内でのロヒンギャの人々も撮影している。

2010年から当時まだ軍事政権下だったミャンマーに撮影に行き始めた新畑さんは、ラカイン州で起こっていた武力衝突などをニュースで目の当たりにし2015年10月にロヒンギャの撮影に向かった。

当時は「ロヒンギャという言葉さえタブー」だったシットウェでは、街のあちこちに壊されたイスラム教のモスクがあり、いるはずのイスラム教徒たちが1人もおらず、不気味な空気を感じたという。

シットウェから車で6時間ほどのミャウーでは、ロヒンギャが集まって住む集落にたどり着いた。ニュースで見る悲壮な姿だけでなく、好奇心旺盛に外国人カメラマンに集まってくる子どもたちの姿もあった。 

Sumireko Tomita/ BuzzFeed

「無類のミャンマー好き」という新畑さんは、ロヒンギャだけでなくミャンマー各地の人々の写真を撮り、発信してきた。

そして、現地でロヒンギャの人々と出会ってきただけでなく、群馬県館林市に逃れてきたロヒンギャとも親交を深めてきた。今回、館林で写真展を行うことには、強い思い入れがある。

「館林に住むロヒンギャの皆さんは、ミャンマーやバングラデシュにおけるロヒンギャの現状を日本人に知ってほしいと強く思っています。そんな中、多くのロヒンギャが住む館林で写真展を行うことは夢の一つだったので、日本人やロヒンギャの方々など、多くの人に訪れてもらい写真を見てほしいと思います」

今回の写真展では、新畑さんの写真は2017年にシットウェ難民キャンプ、2018年にクトゥパロン難民キャンプで撮影したものを出展する。

Katsuya Shimbata

シットウェ国内難民キャンプ内の様子

写真展「われわれは無国籍にされたー国境のロヒンギャー」は群馬県館林市の三の丸芸術ホールで、6月20日〜23日(午前10時〜午後9時)に開かれる。入場無料。

期間中は写真家や館林市に住むロヒンギャ、無国籍ネットワークのスタッフが交代で在廊する。会場では狩新那さんの写真集も販売される。


6月20日は世界難民の日。BuzzFeed Newsはさまざまな角度から、難民を巡る状況を報じます。

館林に暮らすロヒンギャの人々を伝える記事も、近くアップする予定です。

(サムネイル:Katsuya Shimbata)

Contact Sumireko Tomita at sumireko.tomita@buzzfeed.com.

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