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「家族といっしょにいたい」子どもたちの“叫び”。綴られた悲痛な思いとは

「家族とずっといっしょにいたい」「私にとって日本は母国」。絵や作文には、悲痛な思いが込められました。東京都内で仮放免の子どもたちの絵画・作文展が開かれました。

日本で生まれた。もしくは、物心ついた頃から日本で育っているけど、在留資格がないーー。

そんな不安定な状況に置かれた子どもたちが、日本にもいます。

海外から日本に逃れてきた親が難民申請をしていたり、在留特別許可を求めて裁判をしたりしている家庭で育つ子どもたちです。

東京都千代田区の日比谷図書文化館で8月19日、仮放免の子どもたちの絵画・作文展が開かれました。

会場では、未就学児から高校生までの「仮放免」の子どもたちによる、絵画29点、作文12点が展示されました。

クルド、スリランカ、ナイジェリア、フィリピン、ペルーなど様々な出身、ルーツがある子どもが作文や絵画を応募。

入管問題に取り組む弁護士らが中心となり、難民・外国人住民を支援する4団体と共催しました。

「仮放免」とは、難民申請中などで在留資格がない外国人を、入管が発行する仮放免許可書のもと、一時的に入管施設での収容を解いた状態のことを言います。

仮放免では、住民票が作れず国民健康保険への加入もできません。登録した居住地以外への移動や就労は禁止されています。

仮放免の未成年者は、全国で約300人いるとされています。

一家で仮放免の状態の場合、親などが強制送還される可能性もあります。作文で子どもたちは「家族といっしょにずっといたい」「この家族で日本にずっといられると信じています」と切実な思いを綴りました。

フィリピン人の両親を持ち、日本で生まれ育った18歳は作文で、「周りの助けてくださった方々に恩返しをしたい」「この日本という国で活躍していきたい。生きていきたい」と思いを吐露しました。

絵画作品では、家族と食卓を囲んだり、ピクニックをしたりする様子などが描かれました。

「日本は母国」「少しでも多くの人の心に届くことを…」

展示では、作家の中島京子さんと、哲学研究者の永野潤さんが作品を審査。

作文大賞には、ペルーにルーツがある女子高校生が選ばれました。

笑顔の家族の絵も描き、作文には、家族や将来への思いを綴りました。

《日本で産まれ、日本の教育を受け、今も暮らしています。なので、私にとって日本は母国であり、とても大切な場所です。そんな大好きな日本で私はこれからも暮らしていきたいです》

《笑っている家族には、この先もずっといっしょにいたいという気持ちを込めました。私と兄、母はビザがなく、とつぜん家族が離ればなれになるかもしれません。なので、みんなでずっと笑ってすごしていきたいと思っています》

《私の兄は勉強することが好きで、大学進学の道を選びました。しかし、その大学はビザがないと入学許可がおりないため、兄は進学を諦めるしかありませんでした》

《兄も私も周りの子と同じ、日本で産まれ、日本で育ちました。なのに、在留カードというカードがないだけで、こんなにも人生が変わるのです》

《世界を平等にしようと偉い人はいいます。しかしそれを実現させるためには、実際に不平等さを感じている人の声が届かないと意味がないのです。だから、私のかいた絵、メッセージが少しでも多くの人の心に届くことを願っています》

展示の開催の中心となった駒井知会弁護士は、こう問いかけます。

「難民鎖国の日本で、ずっと仮放免の状態の子もいます。親御さんが在留資格を失った場合でも、日本に定着しきっている子どもを幸せにするのは、日本社会の責任ではないでしょうか」

「彼らの叫びを聞いてください。彼らが幸せに日本社会で生きていく明日を作っていけたらと思います」