新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、北海道大学の医学部生たちが「若者目線」での呼びかけをしています。
日々、感染者数が増え、緊急事態宣言が出される中、大学生の生活や目線に合わせ「遊びに誘われた時の断り方」などを、Twitter(@hokui_nomorecrn)やウェブサイトを通して発信しています。
【公式HP紹介】 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関して、必要最小限な情報をまとめております。 ・記事(感染拡大をくいとめる意義についてなど) ・基本対策(日常生活の行動指針、予防法など) ・お役立ちリンク集 ・テンプレ集 ・活動記録 HPはこちら https://t.co/8jbxOIYoXD
「No More Coronaプロジェクト」で対策や予防法などについて発信しているのは、北海道大学医学部5年生を中心とした学生15人。
代表の朝倉利晃さんは、感染症の予測数値などを算出する「数理モデル」を学んでいます。北海道で2月末、緊急事態宣言が出された頃から「若者には若者からの発信が必要」と呼びかけて有志が集まり、活動を始めたそうです。
専門的な知識に関する投稿は、同大医学部公衆衛生学教室の玉腰暁子教授や、同大薬学部客員教授で感染症コンサルタントの岸田直樹医師の確認や情報提供を経て発信されています。

シチュエーション別の感染予防に関するQ&Aでは、大学生の生活に合わせた「5人でカラオケに行くとき、感染は起きますか?」「4人で一つの机を囲んで1時間の会議はしていいですか?」などの質問に、岸田医師が答えています。
回答では、「カラオケボックスは基本的に換気が悪く、ほかの人と2メートル以上の距離を保つことができません。歌うとつばが飛びますから感染のリスクが高くなります」「会議は換気のいい場所であればよいかと思います。ただ、SkypeやLINEでできるのであれば、そちらをご利用ください」とアドバイスしています。
友人らとの「関係を壊すことなく」断る方法も提案
新型コロナウイルスの予防法や具体的な感染リスクを紹介した上で、実際の生活で応用できる、「LINEや電話での誘いの断り方」や「代替案の提案の仕方」も例をあげて提案しています。
大学生や若者の生活で実際に遭遇しそうな、「友人からのカフェへの誘いの断り方」「追いコンをオンラインでしようと先輩に提案する方法」など、LINEや電話での10のテンプレ文言をサイトに掲載しています。
「友人からのカフェへの誘いの断り方」

カフェや居酒屋での飲食への誘いは、大学生だけでなく全世代で受ける可能性があります。自分が誘いを受けた時には、非常事態宣言が出ている場所でも、出ていない場所でも、テンプレを応用して返信することができます。
No More Coronaプロジェクトによると、このテンプレのポイントは「誘いにのれなくて残念な気持ちを伝える」こと、そして「(電話で話すなど閉鎖空間でない)代替案を伝える」こと。
クラスター(集団)感染は「密閉」「密集」「密接」が重なった場所で起こるとされているので、それを避けた行動が鍵となります。
「追いコンをオンラインでしようと先輩に提案する方法」

卒業生を後輩が送り出す飲み会「追いコン」の季節は過ぎましたが、4月の新入生や新入社員、異動してきた社員の「歓迎会」に使えそうなテンプレがこちら。
学生、社会人問わず、先輩に提案することは勇気がいり、気も使いますが、クラスター感染を生まないためにも、「オンライン飲み」に変更、または延期するのが妥当な案です。
終息するまでは、集まって飲みたい気持ちはグッと抑えて「先輩は後輩の意見も柔軟に取り入れ、後輩は勇気をもって先輩に進言」することが大切です。
祖母に対する電話での対応テンプレも
多くの大学などが休校措置を取る中で、「祖母に『泊まりにおいで』と誘われた際の電話での断り方」のテンプレもあります。

若者は感染していても無症状の場合もあることから、無意識に他の人に感染させている可能性もあります。
高齢者が感染した場合は重症化する確率も高いために、そのことを丁寧に説明した上で、電話口で丁寧に断るテンプレが示されています。
若者向けの発信をする理由
No More Coronaプロジェクトの比嘉あるさんは、このような発信を「ニュースや政府の資料などを見ない人や、見ても行動につながらない人にも届けたい」と話します。
政府の発表資料やニュースでは、ポイントとなる情報は発信していても「日常生活に落とし込みにくい」と感じたそうです。それが、LINEなどでのテンプレを作った理由でもあります。
2月末に北海道で緊急事態宣言が出され、元々は「北海道大学生に向けた発信を」とスタートした活動ですが、Twitterなどを通して他地域の若者へも届くようになりました。

感染の状況などは刻一刻と変化し、人口が密集する都会と、北海道からのアドバイスは少しずつ異なるケースもありますが、基本的な予防方法などは変わりません。若者目線で「若者に届けることに意義」を感じ、継続して発信しています。
もちろん、感染拡大を防ぐには全世代が不要不急の外出を控えることが必要です。しかし「若者向け」に発信しているのには理由があります。
若者は無症状・軽症である場合が多いこともあり、いつも通り外出する可能性が高く、それにより感染が広がる可能性も否めません。
プロジェクト代表の朝倉さんは「無症状・軽症の若者は、対策への意識が低くなる」「若年層での拡大をできるだけ抑えることが効果的で、対策の意識を上げるには同世代からの発信が必要」と考えたそうです。

比嘉さんはこうも話します。
「この活動をしている学生自身も、新型コロナウイルスの影響で、予定したイベントや飲み会ができなくなったことに、もどかしさを感じていました。そのような思いを持った上で、感染症対策をポジティブに捉え、同世代に寄り添って発信していきたいと思います」
代表の朝倉さんは、「個人として危機感を『実感』することは難しいと思います」とした上で、こう話しました。
「ただ、私たち一人一人が飲み会をやめたり、旅行を控えたりという選択が、新型コロナウイルスの感染制御に『貢献』することは確かです。私たちの世代が積極的に感染症対策に取り組めば、欧米のような状態は避けられるかもしれません」
「だからこそ、私たちの日常生活を守るために、お互いに呼びかけ合って、感染症対策をしていきたい」
「感染リスクの低い行動はあり、一律に全部の行動を自粛する必要はありません。新型コロナウイルスの急激な感染拡大を避けつつ、楽しく生活できる術をみんなで見つけられるといいなと思っています」