友人が電車で痴漢に遭った。僕が「缶バッジ」で変えたいこと

    「痴漢は犯罪です」「私たちは泣き寝入りしません」、痴漢にNOを突きつける缶バッジが話題です。デザインの考案者に話を聞きました。

    通学や通勤で人々が毎日使う電車やバスーー。人がたくさんいる中でも起こる性犯罪がある。痴漢だ。

    Sumireko Tomita/ BuzzFeed

    特別審査賞を受賞した作品「NO!!!」

    警察や鉄道会社もポスターや駅アナウンスで警告するが、なかなか痴漢はなくならない。

    「痴漢を許さない」。メッセージが書かれた缶バッジでそうした現状を変えようと、そのデザインを学生らが考えるコンテストが、毎年行われている。バッジは実際に商品化され、販売される。

    5年目を迎えたコンテストで今年、はじめて現役の高校生が最優秀賞に選ばれた。

    「被害を受けた人は心に一生の傷を負う」

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    最優秀賞を受賞したショタさんのデザイン

    今年は全国126校の学生から、581作品の応募があったなかで、最優秀賞に選ばれたのは、宮崎県の高校生、ショタさん(16)だ。

    ショタさんは、缶バッジをデザインしたきっかけは、友人が痴漢の被害にあったことだという。

    「女友人が痴漢に遭ったと話していて、自分にも何かできることがあればと思いデザインしました」

    女子中高校生が通学かばんにつけやすいように、ゆるい雰囲気のカワウソを登用しデザインした。ショタさんは話す。

    「被害を受けた人は心に一生の傷を負います。本当に痴漢をやめてほしいです」

    毎日痴漢に遭った女子高生が…

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    最優秀賞に選ばれたショタさん(右)と痴漢抑止活動センター代表の松永さん

    痴漢抑止バッジは、電車やバスで1年間、毎日のように痴漢の被害に遭っていた女子高校生が母親と相談し発案したものが元となっている。

    その女子高校生は、止まらぬ被害に、「痴漢は犯罪です。私は泣き寝入りしません!」と書かれたラミネート加工のプレート作り、通学中にかばんにつけ始めたところ、被害が止んだのだという。

    女子高校生の母親と幼なじみだった、現・痴漢抑止活動センター代表の松永弥生さんが、痴漢の実態やプレートで被害が止んだことを知り、バッジにすることを考案。以降、その運動を広めようと、コンテストを行っている。

    「安心して通学できるように」

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    女子高生が作ったプレートとそれを元にした初代のバッジ

    実際に効果も出ている。

    センターでは、ある高校と連携し、一定期間、生徒にバッジを着けてもらうという実験を行なったことがある。

    生徒からは、「バッジを着けてから痴漢に遭わなくなった」「安心して通学できる」といった声が寄せられたという。

    また、母親世代でも「自分が痴漢に遭った経験があり、娘が電車通学を始めるので購入した」という人もいたという。

    「サイレントマジョリティー」の課題

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    缶バッジを実際につけた人から寄せられた声

    12月7日、都内で行われた第5回コンテストの授賞式で、松永さんはこう語った。

    「痴漢に遭っている人は多くいます。しかし世の中全体としては少数派で『俺は男だから大丈夫』『自分は電車通学していないから大丈夫』というように無関心な人が多いのが現状です」

    「社会で起きている痴漢犯罪の中で、被害者の多くは10代や20代です。暗い夜道や公園の中で起きているのではなく、多くの人がいる電車内でおきている。無関心な人、自分に関係ないと思っている人が、活動に参加してくれたらという思いを持ってコンテストを行なっています」

    電車内での痴漢は、加害に気づいても被害者を助けない「サイレントマジョリティー」の課題もある。

    痴漢被害を見かけたら、声をあげられない被害者を周りが助けられるように、缶バッジにはメッセージを届ける役目もあるという。

    バッジで意思表示する意味とは

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    ハヤカワ五味さん

    今年のコンテストでは、ファッションデザイナーで株式会社ウツワ代表のハヤカワ五味さんが審査員長を務めた。

    五味さんは「痴漢というものの構造的課題で、加害者1人に対して被害者が多すぎるので、その1回目の加害を生まないことも大事」と指摘。女子中高生側がバッジをつけることについてはこう語った。

    「わざわざ被害者側だけがアクションするのはおかしいのではないかという声が上がってきそうだけど、そういった背景があって、効果があると思っています。意思表示をすることで、世の中として減らしていき、限りなくゼロに近い状態にしていけたらいいのかと思います」

    男性が被害に遭うこともある痴漢。「今までは泣き寝入りしていて、数字に出ていない被害も多いと思います。バッジをつけることに意味があると感じます」と話した。

    「バッジつけている人は除外される」

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    斉藤章佳氏

    同コンテストは、専門家の助言も受けている。大森榎本クリニック精神保健福祉部長の斉藤章佳氏は、痴漢加害者の依存症などの治療のプログラムを行なってきた。

    斉藤氏は「加害者は電車内で痴漢を許してくれそうな人を探してやっています。ですので、そもそも(痴漢抑止バッジで)意思表示をしている人は除外される。『痴漢は犯罪である、受け入れられない』と意思表示しているバッジは、効果があります」と話した。

    実際に、治療のプログラムに参加している元加害者にバッジを見せると、「これをつけている人にはたぶん(痴漢を)やらないと思う」と話していたという。

    「缶バッジの他に、痴漢発生をレーダーできるアプリなど、グッズがたくさん出て来ていることは啓発にもつながります。学校等も巻き込んで大きな動きになっていけばと思います」(斉藤氏)

    これまでのコンテストで受賞した作品は商品化され、ネットショップで販売されている。今回のコンテストで受賞した作品も販売される予定だ。

    Contact Sumireko Tomita at sumireko.tomita@buzzfeed.com.

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