旅をして、大好きな国になった。だから…。“3本指”デザインのクラフトビールを売る理由

    ビールで少しでも支援ができればーー。そんな思いで、熊本のクラフトビール店がクーデターの影響を受けるミャンマーの人たちのためにプロジェクトを立ち上げました。

    「ビールで少しでも支援ができれば」ーー。

    そんな思いで、熊本県のクラフトビール店が、軍事クーデターの影響を受けるミャンマーの人たちのため、プロジェクトを立ち上げました。

    不服従や抵抗を意味する「3本指」のラベルのクラフトビールを販売。収益は全額、支援団体を通じてミャンマーに寄付されます。

    ビールを販売しているのは、熊本県菊池郡のクラフトビール専門酒屋「WITCH CRAFT MARKET(ウィッチ・クラフト・マーケット)」。

    クーデターの影響で、仕事や家を失うなど経済的に困難な状況にある人を助けるため「ミャンマー・サポート・ビール・プロジェクト」を立ち上げ、7月からミャンマー支援のためのビールを売り始めました。

    ミャンマーでは、2月1日にクーデターが発生してから、混乱が続いています。

    人権団体によると、クーデターや軍に抗議をして弾圧を受け、殺害された市民は900人以上にのぼります。公務員は抗議のストライキを敢行。ビジネスが立ち行かなくなり、失業する人や避難する人も多く出ています。

    さらに新型コロナウイルスの急激な感染拡大で、人々の生活はより厳しくなっています。

    ミャンマーの人たちを助けたいという、ウィッチ・クラフト・マーケット代表の田上晃子さんの思いで、ビール販売は始まりました。

    ビールの収益は全額、支援団体「日本ビルマ救援センター(BRCJ)」を通じて、緊急医療支援や食糧支援のキャンペーンに送金されます。

    ラベルをデザインしたのは、ミャンマー人のToneさん。田上さんがミャンマーを訪れた際に現地で出会い、現在は日本に留学中です。

    Toneさんはラベルに込めた思いをこう述べています。

    「クーデターが起きてから、私たちミャンマー人は自由が奪われました。私もできることなら、自分の大切な人、家族のそばにいて一緒に戦いたい。でも今は遠くからできることをやるだけです」

    「3本指は国軍の弾圧に対する国民の不服従運動の象徴です。日本のみなさん、どうかミャンマーを忘れないでください。皆様のサポートに心から感謝いたします」

    ラベルのミャンマー語は「春の革命」と記されていて、軍政への抗議活動を意味します。

    飲んで支援に。ビールをきっかけに「知ってほしい」

    このプロジェクトを立ち上げたきっかけは、代表の田上さんが2018年に、ミャンマーに住んでいた友人を訪れた時の体験にありました。

    滞在中は現地の人たちと一緒にお酒を飲み、様々な文化に触れたという田上さん。ミャンマーの人たちのやさしさを肌で感じ、「大好きな国のひとつ」になりました。

    しかし、今年2月にクーデターが発生してからは、デモ参加者への激しい弾圧や銃撃、苦しむ人々の姿をニュースで目にする機会が増えました。

    そんな時、田上さんの友人がミャンマーから帰国します。

    「帰国した親友がミャンマーのことを思い落ち込み、塞ぎこんでいた時に、何か私たちにできる範囲で支援をしたいと思ったのがきっかけです」

    「大きな支援ではないかもしれませんが、ビールを飲んで少しでも支援につながれば…と思います。お客様にもミャンマーのことを少しでも知ってもらえたら」

    このプロジェクトは、ミャンマー人の間でFacebookなどで多くシェアされ、現地の人からは「ありがとう」「感謝します」との投稿も。

    日本でも「ミャンマーをサポートしよう」とSNSでシェアが広がり、予想を大きく上回る量の注文が来ているといいます。

    プロジェクトでは、ラベルと同じデザインのTシャツも作り、熊本市中央区の洋服店「Little Vintage」で販売しています。

    熊本のクラフトビール店として、2016年の熊本大地震の際に受けた支援の「恩返し」をしたい、という思いもあります。

    「5年前、私たちは熊本地震で世界中からたくさんの支援をいただきました。発災後に突然、日常生活を奪われ、復興に向けて日々がんばってこられたのは、世界からの支援や励ましがあったからです」

    「同じように、コロナやクーデターで突然仕事や家を失い日常生活が奪われた方々に、少しでも力になりたいと思っています」

    瓶入りのビール(330ml)は1本990円、6本セット5940円で、オンラインでも販売中。