「頭に銃をつきつけたまま尋問…」捕まった現地の人々が経験する拷問。北角さんが話すミャンマーの“今”

    ミャンマーで取材活動をする中で、当局に逮捕され一時起訴された北角裕樹さん。解放され日本に帰国し、現地の様子や拘束時の経験について話しました。

    「収容されていた人たちには、言論の自由がある日本で、ミャンマーで起きていることを伝えてほしいと言われました」「軍の施設では凄惨な拷問が行われていると聞いています」ーー。

    ミャンマーで取材活動をしている中で、当局に逮捕され一時起訴されたジャーナリストの北角裕樹さん(45)は、帰国後の会見でそう話した。

    軍事クーデターから3カ月半余りが経過したミャンマーでは、軍事政権に抗議する市民たちへの、軍や警察による激しい弾圧が続いている。

    北角さんは、拘束された人たちへの尋問中の拷問や、収監期間中の経験について語った。

    北角さんは4月18日、「虚偽ニュースを拡散させた」との容疑でヤンゴンの自宅で逮捕され、それから1カ月弱、拘束された。

    5月14日に解放され、日本へ帰国。入国後2週間の隔離期間中のため、会見には自宅からオンラインで参加した。

    会見は日本外国特派員協会(FCCJ)が主催した。

    「外国人記者に対する『脅し』として逮捕した」

    北角さんによると、逮捕された日は自宅にいたところ、警察と軍、入管の職員がやってきて拘束された。

    「虚偽のニュースを流した」「ミャンマー人の友人からビデオを買った」などとされ逮捕されたが、そのような事実はないと北角さんは明言。解放と共に「訴追も全て取り下げられたと聞いています」と話した。

    インセイン刑務所での収監期間中は、計7、8回の取り調べが3日間に分けて行われ、取り調べの際は、机を強く叩きながら「外国人のお前がこの国で好き勝手できると思うな。お前のことを刑務所に送ることはできるんだぞ」などと言われたという。

    しかし、北角さんは政治犯として逮捕されたほかの重要人物などと同様、「VIPエリア」で拘束されていたといい、「拷問などは受けなかった」と話した。

    同じエリアには、軍政に抗議の声をあげた、政府やメディア幹部、著名なジャーナリスト、映画俳優らが収監されていたという。

    「軍側の狙いとしては、私のヤンゴンでの取材活動が目立っていたので『外国人記者でも捕まる』というメッセージがあったのだと思います。証拠に基づいて何か問題があったということではなく、外国人記者に対する『脅し』として、私を逮捕したのだと考えています」

    「政治犯のほとんどは軍の施設で拷問を受けていた」

    北角さんは独房に収監されていたが、他の政治犯たちと話ができる時間もあった。

    その人たちから北角さんは、抗議デモに参加するなどして逮捕された市民たちに「凄惨な拷問が行われていた」との話を聞いた。「政治犯のほとんどは軍の施設で拷問を受けていた」という。

    「よく聞いた話では目隠しをされて後ろ手に手錠をかけられ、コンクリートの上にひざまずかされます。その姿勢で尋問が行われ、否定的なことを言うと棒で殴られます。それが2、3日間、ぶっ通しで行われます」

    「寝ることもできず、トイレにもいけないのですが、失禁をするとまたそれを理由に殴られる。ある人は、ナイフか銃かどちらかを選べと言われ、頭に銃をつきつけたまま尋問をされたといいます」

    北角さんは悲惨な拷問の状況を指摘。「取り調べ官は殺す気はなかったのかもしれませんが、その人が死んでも仕方がないという気持ちで尋問をしていたのではないかと思います」とした。

    当局は、逮捕した若者に拷問を加えた後の顔写真を「見せしめ」として公開し、人々を萎縮させている。

    北角さんは「私は釈放されましたが、ミャンマーでは4000人以上が身柄を拘束されています。問題の終わりではありません」と、日本政府や国際社会にミャンマー政府への働きかけを呼びかけた。

    インスタントコーヒーと鳥の羽根でメモ

    人々への拷問の話など、収監中に見聞きしたことを書き留めたかったが、刑務所内では紙やペンは与えられなかった。

    北角さんは身の回りにある様々なものを使って記録を試みた。

    泥やブドウの皮などをインク代わりに使えないか試行錯誤。

    最終的には、鳥の羽にインスタントコーヒーをつけて紙の切れ端にメモをしていたといい、会見で報道陣にその紙を見せる場面もあった。

    「気持ち的にはミャンマーに戻って記者の仕事を続けたいと思っていますが、簡単に戻れる状況ではない」と述べ、しばらくは日本からミャンマーの状況を報じていくと話した。

    「収監されていた他の政治犯の人から『私たちは仮に釈放されたとしても、ミャンマーの今の状況では言いたいことが言えず、刑務所に逆戻りになってしまう。だからあなたが解放されて日本に帰ることになったら、言論の自由がある日本でこの状況、ミャンマーで起きていることを伝えてほしい』と言われました」

    「私は現実を伝えるという思いを背負っていますので、私がミャンマーの現実を伝えることで(ミャンマーへの)入国が難しくなったとしても、伝え続けるべきだと思っています」

    「日本政府はミャンマーの問題の解決に尽くしてほしい」

    人権団体によると、ミャンマーではクーデター後の抗議デモの参加者ら800人以上(5月20日時点)が殺されている。

    北角さんは「私は解放されましたが、問題はこれで解決したわけではありません」「日本政府は、私の解放に尽くしていただいたその力を、ミャンマーの問題の解決に尽くしてほしいと思います。お願いします」と呼びかけた。

    「ミャンマーの人たちは日本政府に期待していて、この状況を打開する行動を打ってくれると望んでいます。歴史的な経緯から、日本政府はミャンマー政府とつながりがあります」

    「日本政府の力を、クーデター体制が頼ってくる時がくると思います。それは、国の運営がうまくいかないということが明らかになっているからです。日本はミャンマーに対し『外交カード』があるといいます。そのカードを適切な時に勇気を持って切るということが、大切になっていくと思います」

    茂木外務大臣は5月21日、ミャンマー軍が人々への弾圧を続けていることを理由に、ODA(政府開発援助)を停止することを検討していると会見で話した。

    「それで問題が解決するということではないが、大きなメッセージを届けることになる」とし、日本の人々にはこう訴えた。

    「ミャンマーで起こっていることに関心を向けてほしい」「できることばあれば、ぜひ行動してください」


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