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結婚した自分を想像すらできなかったから…。いま、“幸せな2人”を描く理由

イラストレーターのmoriuoさんが、「同性婚」をテーマにイラストを描く理由とは。

ウェディングドレスを着た2人の女性。和装姿の2人の男性ーー。

イラストレーターのmoriuoさんが描くのは、様々なカップルの結婚式です。

東京都中野区で3月4日から、「同性婚」や「LGBTQ+のウェディング」をテーマにしたイラストを展示します。

ゲイであることを公表し、「この国でも、いつか同性婚ができるようになれば」とイラストを描くmoriuoさんに、思いを聞きました。

moriuoさんは、ゲイカップルの何気ない日常や、お父さんが2人いる家族などの絵を、やさしいタッチで描いてきたイラストレーターです。

日本では、まだ同性同士の結婚はできません。

しかし、同性同士のカップルの結婚を認めない現行の制度は憲法に反するとして、法律上同性のカップルが各地で一斉に国を提訴するなど、同性婚の実現を求める動きはどんどんと広がってきています。

そんな中でmoriuoさんは、希望と期待を込め、同性婚をテーマにしたイラストを描いているといいます。

「好きな男の子と結婚したい」と同級生にうちあけた過去

ーーなぜ今回、「同性婚」や「LGBTQ+のウェディング」をテーマにイラストを描かれ、展示を開くことにされたのでしょうか。

子どもの時に「好きな男の子と結婚したい」と同級生に話すと、「男同士で結婚できるわけないやろ。笑」とからかわれ、そんな想像は打ち砕かれました。

当時、同性パートナーシップという制度ができるなんて思ってもなかったし、脳内で結婚を想像すことすらできない時代でしたから、結婚式についても考えたことがないまま大人になりました。

時代は変わって諸外国で同性婚が可能になり、国内でも同性パートナーシップ制度が実施され、この年になってやっと、現実のものとして想像できるようになったということがあります。

やっとこの年になって初めて、自分が結婚式を挙げることも可能ではあるんだな、と思えるようになったんです。

そして何より、今の子どもたちや若い世代の人には、小さい頃から「同性婚は不可能なことではない」「それを想像したり夢見たり、そして実現することだって可能性がある」という意識を持って育ってほしい、という思いが強くあります。

そのような思いから今回、結婚式という結婚の象徴である、幸せなセレモニーをイラストにしたいと思いました。

恋愛は楽しいしその都度新しいドキドキもある。けど反面、恋愛をひたすら繰り返す度に、傷ついて傷つけて、また0から新しい誰かと関係を築き直すというループに疲労も感じる。 いつか支え合える家族になれる日がくるとそう思えたらいいな #LGBTQ #結婚式 #ウェディング #同性パートナーシップ制度

Twitter: @momomoriuo

ーー今回の個展では、どのようなイラストが展示されるのでしょうか。

ウェディングドレスやタキシード姿の女性カップル、和装した男性カップルなどのイラストを展示します。

僕くらいの世代になると、今後もし同性婚が可能になったとしても、その頃にはおじいちゃんになってしまうかな、とも考えます。なので、「長年待ってやっと死ぬ前に結婚できた!」という喜びの熟年カップルも描きました。

きっと同性婚が可能になった際に真っ先に結婚されるのは、ずーっと切実に待ち望んでいた方たちだと思うので、その思いの丈や喜びを表現した作品もあります。

今回、展示する作品は、この展示のために描いた作品です。

ーー同性カップルのウェディングのイラストを描き始められたきっかけを教えてください。

ウェディングのイラストを最初に描いたのは、男性カップルさんから「クローゼットなので結婚式は挙げられないし写真も撮れないから」と、2人の結婚式のイラストを描いてほしいという依頼を受けた時でした。

お二人に出来上がったイラストをお送りしたら「実際には式も写真も撮れないけれど、イラストの中で2人で結婚式を挙げたような気持ちになれました」というお手紙をいただいて、僕もとても幸せな気持ちにさせていただいたことを覚えています。

ーーmoriuoさんは長年、ゲイ男性や、男性同士のカップルなどをテーマにイラストを描かれてきました。今回の展示では、レズビアンカップルも描かれています。女性同士のカップルを描き始められたのには、きっかけがあったのでしょうか。

女性のイラストを描くのは好きなので描きたかったものの、女性同士のカップルさんを僕が描いてもいいんだろうか?という思いも、どこかにありました。

去年くらいから、企業の動画で女性カップルのストーリーイラストの依頼をいただいたり、女性カップルの方からお二人のイラストのご依頼をいただいたりし始めました。

女性同士のカップルとお会いしたり、お話をしたりする機会も増え、女性カップルさんのイラストも自然な流れで描けるようになりました。

「もうそろそろ切なくない結末を描いても良くないですか?」

ーー展示に来場するLGBTQの当事者の方々に、どのような思いを伝えたいと思われますでしょうか。

若いLGBTQの方には、同性婚は不可能なことではなく、実現することだって可能なんだという、希望を感じてもらえたらうれしいです。

また僕のように、同性婚なんて、はなから不可能だと思い込んで育ったタイプの方にも、「この先、ハッピーな選択肢がある」と希望を抱いてもらえる展示になればと思っています。

何が起こるか分からないこんな時代にまだまだ続く人生で、数年先に自分が何を選択するか、わからないと思います。

もちろん、結婚して子どもを持つことだけが人生の幸せではありません。それを選ばないことも、夢見ないことも自由だと思いますし、幸せの価値観を押し付けるつもりはないです。

ただ今まで、LGBTQ+に関しては「切ない物語」や「悲しい結末」が逆に多かったから、もうそろそろ切なくない結末を描いても良くないですか?って。

僕はいつも、希望を持てる作品を描いていけたらな、と思っています。


展示は東京都中野区の「Changing moods cafe」で3月4日〜20日に開催。

営業時間や場所の詳細は、カフェのサイトから。