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「これはパワハラであり女性差別です」足を痛めた女性たちが政府に求めたこと

流行語大賞でトップ10にもなった「#KuToo」。パワハラ指針案に明記することを求めて、厚労省に要望書が提出されました。

2019年の新語・流行語大賞のトップ10にも選ばれた「#KuToo」。

女性にヒール・パンプスの着用を義務づける職場があることに今年、異議の声が上がり、Twitterなどインターネットを通して多くの人が賛同した。

発起人の石川優実さんが12月3日、企業によるヒール・パンプス着用義務をめぐり、パワハラ対策指針案に明記することを求める要望書を、厚生労働省に提出した。

厚生労働省は年内の取りまとめを目指して、職場でのハラスメント対策に関する企業向けの指針を審議している。

しかし、10月21日に審議会で提示された指針案には、靴や服装規定への言及はなかった。

そこで、石川さんは「女性のみに対して靴や服装、外見に関する規定を課すことはパワハラにあたる」として、厚労省に対し、パワハラ対策指針に明記することを求める要望書を提出した。

実際に、大手の航空会社ホテルなどでヒールやパンプスの着用を義務付ける服装規定があり、それらは女性のみが対象となっている。

企業が女性のみに対して、足を痛める可能性の高いヒールやパンプスの着用を義務付けることをめぐり、石川さんは「これは女性差別であり、パワハラです」と指摘する。

厚労省に要望書を提出した後、省内で開いた会見で石川さんは、こう語った。

「パワハラの指針案に、服装についての言及がないまま、年明けに正式に発表されてしまうのは納得がいかないと思い、改めて要望書を出しました」

「企業からヒールやパンプスを指定され、足が痛めながら働いている女性がいる。労働者のことを思うならば、パワハラ指針案に入れるべきではないでしょうか。指針に盛り込まれれば、企業としても、『これはしてはいけないこと』というのが明確にわかります」

この運動の発端も、石川さんが働いていた葬儀業者に、業務中の服装規定としてヒールの高さに規定があり、石川さんも足を痛めながら仕事をしていたという経験だった。

石川さんは1月、仕事中にヒールで足を痛めたという経験と共に「いつか女性が仕事でヒールやパンプスを履かなきゃいけないという風習をなくしたい」とツイート。すると賛同の声が多く集まった。

2月に始めたオンライン署名も反響を呼んで、6月には集まった1万8千筆の署名を厚労省に提出。現在は、署名は3万1617筆に上っている。

「#KuToo」は、#MeTooのハッシュタグをまね、ヒール着用を強要され「苦痛」という思いと「靴」を掛け合わせてできた言葉。ハッシュタグとしてTwitterで使われてきた。

会見には、石川さんの他に、職場でのヒール着用指示を経験したことのある女性も参加、それぞれの経験を語った。

先月まで外資系金融機関に勤務していた女性(52)は、これまで勤めた複数の職場で、ヒールやパンプスの着用を義務付けられてきた。

ある会社では、「女性はスカート、ヒールは3cm以上」などと決められており、勤務時間の他にも片道1時間半の通勤で、辛い思いをしたという。女性は語る。

「ある日、足の裏に激痛が走り歩けなくなって病院にいきました。すると、足の真ん中にたこができ、神経を圧迫して足に激痛が走っていたのです。その後、ヒールのない靴を履いても同じような症状が出るようになりました」

石川さんは「実際にヒールが痛くて仕事を辞めた人や、辞めた後も足の痛みに苦しんでいる人がいます」と話す。

大学生が就職活動をする際にも、黒いリクルートスーツに、ヒールがある黒い革製のパンプスを着用することが多い。

実際に、人材業界の就活マナーのウェブサイトや、大学の就職課でも、ヒールのあるパンプス着用をマナーとして推奨していることから、「無理をしてヒールを履かなくていい」ということを、人材業界や教育機関で発信してほしいと呼びかけた。

靴だけでない、女性に課せられる化粧やメガネの規定

職場で女性に求められている服装・外見の規定は、靴だけではない。

ヒールやパンプスと共に、スカートの場合はストッキング着用も規定されたり、メガネを禁止してコンタクトレンズを着用することや、化粧をすることが求められる職場も少なくないのだ。

会見では、アルバイト先で化粧を強制された名倉マミさん(41)が自身の経験を話した。

名倉さんはうどん屋でアルバイトをしていた際、「女性従業員はノーメイク禁止」だと言われたという。化粧をしたくない旨を伝えると、上司には「じゃあここでは働けないってことですね」と言われた。

車の中に連れ込まれ、上司に「自分の周りの女性は、肌が弱い人でも、肌をボロボロにしてまでちゃんと化粧している」と怒鳴られたこともあったという。

ホテル勤務時代に、パンプス着用を勤務先に指示された経験がある山田亜希子さん(46)は、こう指摘する。

「これまでも、女性には選挙権がなかったり、定年の年齢が違ったりしたけど、その度に女性たちが運動を起こして変化を起こしてきた」

今回の靴・服装規定などに関しても、「法律に入ったりして、変わっていくまで、働きかけを続けていきたいと思います」と話した。