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変わる日本の履歴書。コクヨは「性別欄なし」も販売へ。中央大は1年前から生協で販売

コクヨは性別欄がない履歴書を販売します。中央大学は1年前から既に発売しているとのこと。変わる日本の履歴書について取材しました。

いま、日本の履歴書が少しずつ変わろうとしています。

日本規格協会は7月、性別欄や写真欄などがある履歴書の「様式例」を削除しました。この様式例とは、履歴書を販売するメーカーらが参考にしているもので、今回の削除により、今後、各メーカーの履歴書にも変化が出てくることが予想されています。

大手文具メーカーの「コクヨ」はこのほど、BuzzFeed Newsの取材に対し、そのような動きを受けて、性別欄のない履歴書も販売することを明らかにしました。

他にも、大学や民間企業で、それぞれの「新しい形の履歴書」の動きが活発化しています。

求職者が「選択できるように」。コクヨの動き

コクヨの広報担当者は、BuzzFeed Newsに対し「日本規格協会の様式例削除を契機として、コクヨとしては、まずはお客様が商品を選択できるような状況を作ることを目指しています」と説明しました。

明確な発売時期などはまだ公開されていませんが、性別欄がない履歴書を商品化するため、準備を進めているといいます。

これまで発売していた、性別欄がある履歴書はそのまま販売を続け、性別欄がない履歴書も購入できるようにします。

性別欄があることで悩む求職者も

日本規格協会が、性別欄や写真欄などがある履歴書の「様式例」を削除した動きは、オンライン署名に集まった声が契機となっていました。

労働問題に取り組むNPO法人「POSSE」が、トランスジェンダーの求職者の声などをもとに、履歴書から性別欄をなくすよう求めるオンライン署名を実施。

1万人以上が賛同したオンライン署名は6月末、経済産業省に提出され、経産省も「個人属性を問うことは適切ではない」との認識で、日本規格協会に指導をし、様式例が削除されました。

就活中に履歴書の性別欄で悩んでいたというトランスジェンダー男性は、BuzzFeed Newsに対し、こう話していました。

「性別欄に記載をしないで面接に行ったら、面接官の前で『記入してください』と言われたり、(当時の戸籍上の性別である)女性に○をつけたら、男性用スーツの服装との違いを根掘り葉掘り聞かれたりしました」

「面接の時間のほとんどが性別に関する質問で、自分が伝えたかったことがほとんど言えない経験もありました。面接官がたくさんいたり、他の応募者もいる中で、性別欄がなければ聞かれなくて済むことも聞かれます」

面接では、「体はどうなっているの?」などセクシュアル・ハラスメントに当たるようなことも聞かれたこともあったといいます。

中央大は1年前から、性別欄ない履歴書を販売

大学が主体となり、学生がより使いやすい履歴書を作ったケースもあります。

東京都にある中央大学は、約1年前から、性別欄がない履歴書を大学内の生協で販売しています。

中央大学の広報担当者によると、きっかけは就職活動を行う学生の声を一番近くで聞いている、大学のキャリアセンターからの生協への要請だったといいます。

約2年ほど前に、キャリアセンターが中央大学生協に、性別欄がない履歴書を作ることは可能かという打診をし、生協が版を作成して、1年ほど前から販売開始しました。

キャリアセンターは、生協に性別欄なしの履歴書作成の要請をしたことについて、理由をこう述べます。

「性別不問が当たり前になっていく中で、本学の履歴書フォーマットもそれに対応させました」

発売当初は、旧版の性別欄がある履歴書の在庫もまだあったため、2つのパターンが同時に売られていましたが、現在は旧版の在庫がなくなったため、性別欄なしの履歴書のみ販売しているということです。

「その人の個性や能力に焦点を」性別、写真の欄なくす企業も

このような動きは今年、民間企業でもありました。

「その人の個性や能力に焦点を」と、日用品・食品大手のユニリーバ・ジャパン(東京都目黒区)は3月から、採用の際の応募フォームを一新し、採用の際の応募フォームで性別や証明写真、ファーストネームの欄をなくしました。

同社のウェブ上の応募フォームにはこれまで、「Female(女性)・Male(男性)・Prefer not to say(答えたくない)」という性別欄がありましたが、それをなくし、紙の履歴書の場合も、性別欄などが無いものをダウンロードできるようにしました。

「Prefer not to say(答えたくない)」という欄があったのは、「ジェンダーはグラデーション」とも言われ、まだ自身の性別を判断できていない人、トランスジェンダーの人など様々な人がいることが理由です。

ファーストネームでも性別が分かる場合が多いために、氏名欄も苗字のみにしました。

同社の取締役人事総務本部長の島田由香さんは、履歴書の一新について、報道陣に対しこう語っていました。

「やはり今の日本では、(採用プロセスの上で)性別が『要素』となってしまっている」

「女だから、男だから、その他(のジェンダー)だから、ということではなく、その人がどんな人かを知りたいんです」

性別、年齢、写真…「履歴書からなくそう」。高まる市民からの声

欧米諸国を中心に、海外では履歴書に性別や年齢を書いたり、写真を提出することを求めることは、人種差別、ジェンダー、年齢の差別につながるとして、求職者にそれらの情報を求めない国もあります。

日本では今年、前述の性別欄に関する署名のほかに、年齢、写真欄を履歴書からなくすよう求める署名も、立ち上がっていました。

それぞれ別の団体や個人が立ち上げた署名で、各省庁に集まった署名が提出されていましたが、10月8日午後、3つの署名主宰者が集まり、厚生労働省担当者に署名を提出し、申し入れをしました。

国に申し入れをすることで、全国的な実態調査の実施、ハローワークなどの履歴書での変化や国としての施策の実施などを目指しています。


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