Updated on 2019年10月16日. Posted on 2019年10月2日

    「涙を堪えられない時もある」若手カメラマンが香港の"今"を伝える25枚の写真

    激しさを増す香港のデモと警察との衝突。その様子を撮り続ける若いカメラマンがいます。

    香港から中国本土への容疑者の身柄の引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の撤回要求をきっかけに、香港では市民によるデモが約4カ月も続いている。

    香港出身の若手カメラマンが、6月からデモ隊に密着し、香港の「今」を伝えている。

    Chan Long Hei

    8月18日に行われた集会。デモ実施は警察に禁止されたが集会は開かれ、雨の中、傘をさした170万人が集結した。

    Viola Kam

    6月17日のデモ参加者のヘルメットに「香港を助けて」との文字。

    Chan Long Hei

    8月30日に民主活動家、民主派の立法会議員3人が逮捕された。デモの申請が再び反対され、31日にデモ隊が政府本部周辺に集結、警察が発砲して制圧した。

    これらの写真を撮影したのは、若いデモ参加者と同年代のカメラマン、チャン・ロン・ヘイさん(24)とビオラ・カンさん(33)だ。

    BuzzFeed Newsは2人に、催涙弾のためガスマスクを着けてでも、デモ撮り続ける理由と、伝えたい思いを聞いた。

    Viola Kam/ Chan Long Hei

    カメラマンのチャン・ロン・ヘイさん(左)とビオラ・カンさん

    ーなぜ香港のデモを撮り続けているのですか。

    カンさん「今という瞬間を、ちゃんと記録しないといけないと思って撮っています。ちゃんと今を伝えないと、いつか歴史が書き換えられた時に、『それは間違ってます』と写真で真実を証明できないからです」

    チャンさん「撮り続ける理由は、使命感だと思います。メディアは第四権力であり責任があって、警察の職務のチェックは当然ですし、真実を伝えないと、と思っています。その中で、写真の力は大きいと信じてます。たとえ危険があっても、真相を報道することを続けます」

    Chan Long Hei

    9月2日の新学年の始まりに中学生がストライキをし、遮打公園で集会をした。230の学校から約4000人が参加した。

    Chan Long Hei

    6月14日、中環遮打花園にて香港の母親集会に6千人が集まった。涙を流す母親。

    ーデモにはどのような年代が来ていますか。

    カンさん「中学生や大学生が多いと思います。6月には、制服を着てる人を見かけました。仕事終わりにくる大人もいます。お年寄りもいて、特に彼らは最前線で学生たちを守るグループを作っているのを、現場では見かけます」

    チャンさん「一番若くて13~14歳の中学生くらいです。12歳が逮捕されたということはニュースにもなっていました。一番多いのは18~24歳くらいだと思います。雨傘の時より、高齢者や上の年齢層は本当に増えてます。それを見るとすごく感動します」

    「私はデモ隊と年が近いので、香港人としても、年の近い者としても、心が痛いです。撮影してる時、涙を我慢できないこともあります。デモ隊の誠実な気持ち、彼らが無情に鎮圧されることを見ると、やはり心が痛いです」

    Viola Kam

    6月16日、人口約700万人の香港で、200万人のデモが行われた。人が道路に溢れているものの、救急車が来ると、聖書のモーセのごとく人々は道を開けた。

    Viola Kam

    200万人のデモ後、デモ隊が政府本部周辺の道路を占領。警察が排除しようとする中、「撤回しないと解散しない」「暴動ではない」と書かれた看板を持つ男性(6月17日)

    Chan Long Hei

    香港がイギリスから返還され22年の7月1日、デモ隊と警察は激しく衝突した。

    Chan Long Hei

    7月1日の衝突。催涙ガスから身を守るため、デモ隊はガスマスクやゴーグルを身につける。

    ー写真を通して、国際社会に伝えたいことは。

    チャンさん「香港だけでは力不足のところがあります。この運動は長引いていますが、結果はまだ出せていません。香港のことを国際へ伝えたい。警察の暴力と政府からの鎮圧は、もう国際的関心持つのレベルになってます。そして、今香港で起こっていることはもしかしたら、日本や他の国でも起こる可能性は0ではないと思います」

    「日本の人々にとっても、民主と自由は当たり前じゃないと思います。日本人には今、選挙権と発言の自由がありますが、何かの瞬間に、なんらかの理由で、今ある権利と自由が奪われる可能性もあると思います。なので、是非香港への関心とともに、日本社会の問題にも関心を持って欲しいです」

    Chan Long Hei

    香港がイギリスから中国に返還されて22周年となった7月1日、恒例のデモが今年も行われた。夜、香港デモ隊が立法会を占領、議場で区章の中華人民共和国の文字と星をスプレーで消した。

    Viola Kam

    7月1日は、朝から警察とデモ隊が政府本部周辺で衝突した。

    Viola Kam

    7月1日のデモ。立法会の香港区旗が下され、悲しみを表す「港殤旗」が掲げられた。立法会ビルの窓ガラスに「反送中」(逃亡犯条例反対)が書かれている。

    ーカンさんは日本に拠点を置いて、故郷の香港でのデモも撮影されています。日本の人々に伝えたいことはありますか。

    カンさん「雨傘運動なども撮っていましたが、今回のデモは6月から9月の間に8回くらい香港に渡航して撮影しました。日本に住む香港人の私ができることは、日本の皆様に伝えることだと思っています。日本の周辺国の韓国、台湾、香港では次から次へと大規模なデモが行なってることで、日本の人々へも刺激になるんじゃないかなと思います」

    「香港と台湾に比べてより健全な制度が持ってる日本は平和に見えて、実は社会課題がいっぱいあると思います。例えば、原発、特定秘密保護法、年金など、せっかく市民の権利が確立してる国なので、香港の状況を見て、日本国内への関心がちょっとでも増えたらと思います」

    Viola Kam

    7月28日の集会の後、デモ隊が中央政府駐香港連絡弁公室の周辺に集結、警察は市内でデモ隊へ4時間に渡り催涙ガスとゴム弾を発砲した。

    Viola Kam

    8月11日、集会後、家に帰ろうとするデモ隊が警察に太古駅でエスカレーターの上から蹴り落とされた。また、警察は住宅街で催涙ガスを発砲。そのまま、西灣河駅まで広がり、警察が無装備だと両手を挙げている一般市民に対して警棒を振り、逮捕すると脅迫した。

    Viola Kam

    7月1日のデモに、今年は55万人が参加した。「香港加油」(香港頑張れ)と書いた看板を持つデモ参加者たち。

    ーなぜ香港の人々はデモに参加して意思表示をすると思われますか。

    カンさん「本当に危機がきたからだと思います。今、闘わないと、もう闘う機会すら失うことを意識しているからだと思います。そして、デモをやってる期間中に、政府と警察の理不尽さと残酷さに気づいて、もっといろんな人が参加してきたと思います」

    チャンさん「今回のデモは『何かを求める』ではなく、『何かを断る』ということだと思います。本当に望まないことを『断る』『押し返す』。反送中は香港の皆に影響があるので、今回のデモは多くの人が参加するようになりました」

    Viola Kam

    7月1日のデモで、夜には、デモ隊が立法会を占拠。ビルのガラスを全部割った。

    Viola Kam

    7月1日の夜、警察が制圧にくるという情報を得て、立法会を占拠したデモ隊に、全員撤退するように呼びかける人々。

    Chan Long Hei

    7月14日、香港の各区で普段参加しない人も身近に参加できるようにデモを行った。沙田でデモが行われる日、子供が橋の上からデモを見ていた。

    ー香港の若い人々は、中国政府や香港の独立についてどのように考えていますか

    カンさん「多くの香港人は、香港は独立してはないと思ってますが、一国両制(一国二制度)という制度は守りたいと思ってます。ですが、このデモの中で、中国政府の発言と行動などを見ると、中国政府は明らかに、守るつもりすらありません。そのような『本性』を見た後と言いますか、香港の30代以下の人たちはすでに『自分は中国人』という認識は0%になってしまいました」

    チャンさん「個人として、自分は若い世代の一人で、中国人という認識と一国両制(一国二制度)の信用度はすごく低いと思います。2012年の反国教(中国の「愛国教育」に反対するデモ)から、2014年の雨傘(民主化要求デモ)、今の反送中と、鎮圧がどんどん酷くなってきています。若い人は声を発する場所がなく、大人たちも聞こうとしないので、このような現状になっています」

    Viola Kam

    8/11、警察が尖沙咀で救急隊の女性隊員の右眼をビーンバック弾で打ち潰した。1万人規模のデモ隊が航空業界と共にストライキを行い、空港で集結。デモ参加者は右目を隠して「警察、目を返せ」と抗議した。


    Chan Long Hei

    「ジョン・レノンの壁」という、デモ応援メッセージを書いて壁に貼るという企画。最初は雨傘運動時、政府本部周辺の階段で行なっていたが、香港中各所で作られた。(7月21日)

    Viola Kam

    G20会議の前に、香港で起こっていることに対して国際社会の注意喚起を目的とした集会が行われた。疲れたデモ参加者が看板を抱きながら床で寝ていた。(6月26日)


    Chan Long Hei

    8月31日、デモの申請が再び却下され、デモ隊が政府本部周辺に集結した。警察の制圧に対して、火炎瓶を投げ、バリケードを作り燃やした。

    Chan Long Hei

    8月31日、警察が太子駅構内で、デモ隊ら市民を攻撃し、逮捕した。最初警察は救急隊が駅に入れるのを「怪我人はいない」と断って、後怪我人が10人程いたのを発覚したが、結局、記録に残された入院患者数は7人。後の三人は行方不明となり、警察に殺されたという説もある。それに対して人々は空港で抗議を行った。公共交通機関は全て停止されたため、観光客は高速道路を沿って市内まで歩いた。

    Chan Long Hei

    9月15日、五大要求のうち残りの4点の要求にも応じてほしいと、再びデモが行われた。警察が放水砲を装着する車両をデモ隊に使用。

    香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は9月4日午後7時、抗議デモのきっかけとなっていた「逃亡犯条例」改正案について、香港政府が正式に撤回することを、テレビで発表したビデオメッセージで明らかにした。

    一方で、デモを行う市民側は「警察と政府の、市民活動を『暴動』とする見解の撤回」「デモ参加者の逮捕、起訴の中止」「警察の暴力的制圧の責任追及と外部調査実施」「林鄭月娥長官の辞任と民主的選挙の実現」など、4点について政府に引き続き要求を続けている。

    中国建国70年の式典が行われた10月1日には、香港では大規模なデモが行われ、警察と衝突したデモ隊にいた、男子高校生が実弾で胸を撃たれ重傷をおっていた。

    カメラマンのカンさんは、こう語る。

    「この運動が始まってから、気付いたら香港へ帰って最前線で撮っています。香港警察から記者への暴力は日々増しています。日本での仕事もあり毎日は撮れませんが、カメラマンとして、できるだけ香港の歴史を未来に残せたらと思っています」


    Contact Sumireko Tomita at sumireko.tomita@buzzfeed.com.

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