「差別、許されない」東大特任准教授の解雇に対し、学生が思うこと

    「中国人は採用しません」などツイートで発言し、問題となっていた大澤昇平特任准教授に懲戒解雇の処分が発表されました。学生ら関係者に話を聞きました。

    東京大学は1月15日、差別発言で問題となっていた同大学院の大澤昇平特任准教授について、懲戒解雇処分とした、と発表した。

    大澤氏は2019年11月、自身が経営するAI(人工知能)開発会社「Daisy」では「中国人は採用しません」などツイート。さらに、「そもそも中国人って時点で面接に呼びません。書類で落とします」などと相次いでツイートし、「中国人に対する差別」と批判を浴びていた。

    東大は1月15日付けのプレスリリースで、大澤氏がSNS上で「『東大最年少准教授』の肩書きのもとに国籍・民族を理由とする差別的な投稿」をしたことなどは「遺憾」とし、「このような行為は本学教職員として決して許されるものではなく、厳正な処分をいたしました」と説明した。

    さらに、教員ら大学関係者に対する根拠のない誹謗・中傷をするツイートをしていたことから、懲戒解雇を決めたとしている。

    大澤氏が寄付講座で教えていた情報学環では多くの留学生を受け入れており、特に中国からの留学生が多かったことから、学内からも多くの批判が集まっていた。

    大澤氏は12月、自身の発言について謝罪のツイートをしたが、今回の処分の発表を受けて、Twitterで「処分は不当だ」「東大の対応は間違っている」と反論している。

    東大情報学環長・学際情報学府長の越塚登氏は「特定の国籍または民族による差別が含まれており、学環学府として到底許容できるものではありません」などと、大学のホームページで繰り返し声明を出してきた。

    大学は学生や留学生などを対象に、説明会などを開いてきた。

    説明会に参加した学生はBuzzFeed Newsに対し、「説明会で中国人留学生は涙を流しながら、声を震わせてマイクを握り、大学側に説明を求めていた」と振り返る。

    大澤氏のツイートがあった4日後、大学側は見解を発表した。しかし、それは「学生たちの気持ちに寄り添い、学環・学府長として私自らが断固として差別と闘うことを表明するメッセージとはなっていなかった」として、11月28日に改めて学生へのメッセージを出していた。

    学生「差別禁止するルール作りを」

    差別問題の対策に取り組む学生団体「Moving Beyond Hate」の代表で東大1年生の長谷川トミーさん(19)は「このような差別発言は絶対許されるものではありません。今後も同様な差別が起こらないために、大学で差別を禁止するルール作りを徹底して行なっていく必要があります」と話す。

    大学側が主体的に学内の差別問題に取り組んで行くことはもちろん、「学生や留学生も連携して、動いていきたい」と語った。

    今回の懲戒解雇については、「解雇することでこれ以上東大の肩書を利用して差別できなくしたこと」については歓迎する一方で、「もし差別発言が教室などの閉ざされた空間で行われていたら、東大がそれを放置していた可能性は高いように思えます」とも話す。

    長谷川さんは、「そういうことにならないために、差別はそれが社会的評価を傷つけるなどの理由ではなく、差別そのものがダメだからこそ反対すべきだと思います」と話し、学内のルール作りの必要性を訴えた。

    同団体は11月末、都内の大学で集会を開き、大澤氏の発言や、差別にどう対応していくべきかということについて、学生や社会人の参加者と話し合った。

    「社会制度を設計する立場でヘイト、ありえない」

    BuzzFeed Newsは、実際に2019年夏、大澤氏が教えていた寄付講座で学んでいた社会情報学コースの学生に話を聞いた。

    情報学環では英語で授業を行うアジア情報社会コース(ITASIA)で多くの留学生を受け入れている。この学生によると、大澤氏の授業でも半数以上は中国人学生だったという。

    学生は「情報社会を研究し、社会制度の設計などに関わっている人物が、ヘイトスピーチをするということは、ありえないです」と大澤氏のツイートを強く批判した。

    大澤氏は大学関係者への中傷などを投稿していたことで、それにより医療機関にかかる関係者なども出ていたという。

    「今回の騒動で学生のために奔走している関係者が、情報が正しく伝わっていないがために批判されたりしていた。11、12月は修士論文の追い込みの時期だったのに、騒動で指導が受けられていない学生もいました」と話し、騒動が学問にも波紋を広げている状況を語った。

    「差別許さない」中国語部会が留学生にメッセージ

    駒場キャンパスで中国語を教える教員らがつくる東大教養学部中国語部会は、12月上旬、大学の対応などに懸念を示していた中国人留学生や学生に対し、日本語と中国語でのメッセージを発表した。

    東京大学には全学生・院生数の1割弱にもなる約2500人の中国人が在籍し、多くの中国人が専任や特任、常勤や非常勤の教職員として働いているという。

    メッセージで中国語部会は「私たちは東京大学で中国語教育に携わる組織として、当該教員の発言を断じて容認することはできません」と明言。大澤氏の発言について「絶対に許されない差別発言」とし、「発言は決して認めることはできず、強く抗議します」としていた。

    中国語部会の瀬地山角教授は、BuzzFeed Newsに「学生さんたちには、暴言を許す組織ではないということを伝えたい」と話した。