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「このままでは勉強が続けられない」3人の学生が語ったこと。困窮学生への緊急給付金のあり方とは

学生支援緊急給付金の要件に反対する5万筆の署名が提出されました。また、要件の対象から外れた学生ら3人が、文科省に自らの思いを語りました。

新型コロナウイルスの影響を受け困窮している学生に対し、最大20万円が支給される「学生支援緊急給付金」の応募の要件に関し、批判が起こっています。

要件で、特定の奨学金の受給者であることや、留学生用には成績基準が設置されているからです。

留学生用の成績要件に関して反対の声をあげるオンライン署名には、5万筆を超える署名が寄せられました。

署名発起人は5月29日、文部科学省に署名を提出し、外国人支援団体など5団体と学生たちが、文科省に成績要件など要件の変更を求めました。

今回、会見を開いた5団体は5月25日、共同で声明を発表しました。その声明や今回開かれた会見で、文科省に改定を求めたのは以下の3点です。

1:困窮している全ての学生を対象とすべき。第一種(無利子)奨学金等を貸与されているか、貸与を受ける予定の学生に限るなどと、奨学金と紐付ける要件は撤回してください。

2:留学生に対する成績要件を外してください。

3:対象校に朝鮮大学校なども入れてください。

会見では、それぞれ上記の点が理由で、緊急給付金の対象にならず応募できない学生らなど3人が意見を述べました。3人の声を紹介します。

「私のように奨学金を受けずに、学費を払っている学生は」「次回の学費支払い、困難」

桜美林大学3年の星玖藤原 愛紗(シェイクフジハラ アイシャ)さんは、卒業後の返済の負担を避けるために、奨学金を利用せず、母親と協力して学費を払っています。

今回の学生支援緊急給付金の要件には、第一種(無利子)奨学金等の貸与、または貸与予定であることなどが含まれているため、星玖藤原さんは対象にならないと話します。

「母子家庭で、私はカラオケでバイトをして学費を稼いでいます。しかしカラオケもコロナの影響で休業状態。4月から無収入です。このままでは次回の学費を払うことは困難です」

「周りに同じような状況に置かれている人が多い」と話す星玖藤原さんは、「私のように奨学金に頼らず、学費を払っている学生のことも考慮して」と訴えかけました。

星玖藤原さんはBuzzFeed Newsに対し、次回の学費振込や生活費のために新しいバイトを見つけようと思うも、コロナへの感染が怖いとも話しました。

星玖藤原さんはペルー人の母とパキスタン人の父を持つ日本生まれ日本育ちです。返済が不要な給付型の奨学金を見つけても「国籍が日本でないために、条件に当てはまらないことも」とも語りました。

「勉強のために留学しているのに、勉強が続けられないのではと不安」

成績要件が設けられている外国人留学生を代表して話したのは、ネパール出身のダリマ・タマンさんです。

タマンさんは来日7年目で、17歳で日本語学校に通い始め、その後、東京国際大学へ進学、現在は、上智大学大学院で学んでいます。

自身は成績基準を満たしているとする一方で、留学生のみに成績要件が設けられていることに「なぜ日本人は成績に関係なく申請できるのに、留学生には基準があるのですか」「壁を作るのはおかしい」と疑問を投げかけました。

タマンさん自身、母子家庭に育ち、17歳で来日してからは奨学金を受給しつつ、バイトで生活費などをまかない、税金なども支払ってきました。

「留学生は日本人みたいにならないと認められません。なので7年間、日本語も頑張って話せるようになり、今では『日本人みたいだね』と褒め言葉をもらうことさえあります。でも、給付金の要件になると、日本人と同じようには受給できません」

コロナの影響で、働いていたレストランのシフトも3月末から激減し、生活が厳しくなったので、5月の初めからはスーパーのバイトを始めたといいます。

「開店から昼12時まで働き、急いで家に帰って午後、オンラインで授業を受けます。体はもちろんですが、心も疲れてきました」

「『出稼ぎのために来ている』などと批判されますが、私たちは勉強したくて留学しています。しかし勉強するためには働くしかありません。いま、勉強が続けられないのではと不安でいっぱいです」

ネパール人留学生の状況に関しては、海外在住ネパール人協会がオンライン調査を実施し、回答者の9割以上の学生がコロナの影響で、学費や生活費、または両方の支払いに困窮していることが明らかになっています。

「民族で差別しないで」「崖っぷちにいる生徒が多いのに、学びが否定された」

朝鮮大学校政治経済学部で学ぶ男子学生は「民族で差別することなく、等しく支援してください。教育には平和が必要です」「今、私たちの共通の敵は民族などでなく、ウイルスであるはずです」と語りました。

今回の緊急給付金の対象は、国公私立大学(大学院を含む)・短大・高専・専門学校(留学生・日本語教育機関を含む)の学生。男性が通う朝鮮大学校は、緊急給付金の対象から外れています。

男性は朝鮮大学校に通う学生へのコロナの影響について、こう語ります。

「私が通う朝鮮大学校では、両親が飲食店を営んでいる家庭が多く、また多くの学生も飲食店でバイトをしています。コロナの影響で、収入が大幅に減少したり、無収入となった学生は94%にも上ります」

朝鮮大学校によると、アルバイトをする学生の28.9%が、学費の全て、または大部分をアルバイト収入により賄っているということです。

男性は、朝鮮大学校が対象から外れていることに対し「弟や妹がいる家庭は特に、学びを続けられるかどうか崖っぷちにいる学生が多いのに、私たちの学びは否定されました」とし、朝鮮大学校を対象校に含むことを強く求めました。

「学びを続けるための給付金なのに、対象者数が少なすぎる」

今回、緊急給付金の要件について共同声明を発表し、会見を開いたのは、「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」、「外国人人権法連絡会」、「人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット)」、「のりこえねっと」、「反差別国際運動(IMADR)」の5団体。

移住連の鈴木江理子・副代表理事(国士舘大学教授)は、「学びを続けるための特別給付金ですが、対象者そのものが少なすぎる」とも指摘しました。

また、文科省が「要件はあくまで基準であって、最終的に判断するのは大学」としている点については、このように話しました。

「困窮している大学生を側で見ている大学が判断できるのは良いことです。しかし、同じように困窮している学生をスクリーニング・排除しないといけない現状があります。困窮度合いを大学が判断し、困窮しているという状況だけを軸に判断できればいいのですが、枠が狭いということもあります」

今回、学生が文科省職員に要件について反対の声をあげ、学生目線での意見を伝えたことに対しては「文科省は、学生の声を受け止めてくれたと信じたいです」としました。

「成績達してなくても諦めず応募して」呼びかける大学も

外国人留学生をめぐっては、文科省が発表した要件では、「学業成績が優秀な者」などの条件があり、成績評価係数(上限3)で2.30以上という成績基準が明記されています。文科省によると、2.30以上を保持しているのは「上位3割程度」。

一方で、受給学生選定に関しては文科省も「最終的には大学の判断になる」としていて、大学ごとに分け与えられた枠の中で、困窮しており優先度が高い学生に受給される仕組みです。

文科省が定めた要件を基準とする一方で、「諦めず応募して」と呼びかける大学もあります。

京都市立芸術大学の教務学生課学生・国際の担当者はBuzzFeed Newsに対し、「文科省が決めた成績基準なども見ます。しかし(成績が足りていなくても)自己判断で諦めたりせずに、応募してほしいです」と話しました。

5月26日に学校ウェブサイトで掲載された同給付金に関するお知らせでもこのように呼びかけています。

「原則として『支給対象者の要件』を満たす方を優先的に推薦することになりますが、最終的には大学が学生の自己申告状況に基づいて実情を勘案して、総合的に判断します。学生の皆さんは、積極的に応募してください」

また、28日に掲載された赤松玉女・学長による学生へのメッセージでも、同様の呼びかけがなされました。

「申請される学生、留学生を分け隔てなく大学が総合的な判断をして、応援したいと考えています」

「要件の記述等でややわかりにくい部分があります。迷っている方はどうぞ躊躇せずに教務学生課に相談してください」

LINEで緊急給付金申請も

また、LINE株式会社は5月28日、文部科学省からの依頼にもとづき、学生支援緊急給付金の申請を行うためのLINE公式アカウント「文部科学省 学生支援緊急給付金」を提供・開設したと発表しました。

応募を希望する学生は、学校ごとに発行されたQRコードを読み込んで友達追加し、家庭の収入減少などの申請要件に該当するかどうかをチェック、必要書類などを添付して申請できる仕組みです。