「頼ることを怖がらないで」「困ったら相談して」ーー。
4月1日から成年(成人)年齢が引き下げられ、18歳で「大人」になります。
成人とみなされることで、できることも増える一方で、様々な責任も伴います。
漫画『ちはやふる』の作者、末次由紀さんと、若者支援のNPO法人「D×P」が、新成人となる若者に対して、応援のメッセージを送っています。

末次さんが新成人のために書き下ろしたイラストには、ちはやふるの主人公、綾瀬千早と、物語の中で彼女を見守ってきた宮内先生が描かれています。
千早も実は、新成人と同じ18歳です。
「誰かに頼ることを怖がらないで」
満開の桜の中で開かれた卒業式で、花束を抱える千早に、宮内先生がこう語っています。
「卒業おめでとう綾瀬さん。あなたも4月から成人なのね?」
「不安でたまらないわ…。お金とか何かの契約とか、わからないままにしてちゃだめよ」
「誰かに頼ることを怖がらないで。でも、頼る人を間違えないでね」
宮内先生が千早を心配する理由は、成年年齢が20歳から18歳になったことで、様々なことが変わるからです。
変わること、変わらないこと
/ 18歳から携帯やアパートの契約はOK? じゃあ、お酒やタバコ、ギャンブルは? \ 今週末4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられます。 でも、飲酒や喫煙、競馬などの公営競技は、これまで同様20歳から。 本人たちだけでなく、周りの大人も知っておいてくださいね。 https://t.co/fTgr16HMm4
今後は、18歳で10年有効のパスポートを取得したり、公認会計士や司法書士、医師免許、薬剤師免許などの国家資格を取ることができるようになります。
女性の結婚可能年齢が16歳から18歳に引き上げられ、男女ともに18歳になります。
「成人」になれば、法律上の責任も基本的に本人が取ることになります。
親の同意がなくても、携帯電話の契約やクレジットカードをつくる、ローンを組む、一人暮らしの部屋を借りるといったことができるようになります。
しかし、支払いなどの責任も伴い、高額な物を売りつけようとするなど悪意を持って接近する人もいないとは言えないため、注意が必要です。
一方で、飲酒や喫煙、競馬・競輪などの投票権を買うこと、大型・中型自動車免許の取得は引き続き、20歳にならないとできません。
「幸せになるためには知識が必要です」

末次由紀さんは新成人に、以下のようなメッセージを贈っています。
《18歳で成人となっても、幸せになるためには知識が必要です。 あらゆることに知識を持つことは難しくても、誰かと繋がることでお互いの知識を武器にすることができる。そのことを知っていてください》
《教えてくれそうな人を、声が届く範囲に見つけておいてください》
《思う通りにならないばかりの子供時代をすごして、いつの間にか大人になった私は声を大きくして言いたいと思います。 大人の今が一番楽しいよ。 みなさんが、成人の日々を楽しく自由に生きられますように》

新成人から「不安」「自信がない」の声も
今回、「D×P」が末次さんと共にメッセージを発信したのには、理由がありました。
D×Pでは、経済的困窮や不登校、家庭内不和などの悩みを抱える若者を支援していて、18・19歳の新成人からは「責任が増えるのは不安」「自信がない」という声が寄せられていました。
広報担当者は、「10代の若者をサポートしている中で、若者の声を聞いていて、(成年年齢引き下げについて)楽しみ、不安などいろいろな声があった」と話します。
少しでも成年年齢引き下げをめぐる変化について知ってもらおうと、D×Pが運営するLINE相談「ユキサキチャット」で、引き下げで変わること・変わらないことについてのクイズも発信しました。

これから成人を迎える10代に対し、D×Pはこのようなメッセージを贈ります。
《これから先、いろんなことを自分で選べるようになります。そんななかで困ったこともあるかもしれません》
《ひとりで解決しようと思うのもいいですが、さらにもう一歩進んで、誰かに頼れる人になってほしいなって思います。困ったとき、「困った」と言えて誰かの力を借りながら、ぼちぼちやっていくことが自立なんじゃないかなと思うのです》
《「大人なんだから自分で考えろ」などというような人には相談しなくてもいいです。あなたの気持ちを聞き、一緒に考えてくれる人に相談してほしいと思います。そうやって頼るべき人も自分で選ぶことができます》
「不安な時はまず相談を」「頼ってもいい」
LINE相談のユキサキチャットでは、13〜19歳に向けた進路・就職相談や、コロナ禍で困窮する25歳までの若者の生活相談に応じています。
LINEで相談すると、スタッフが個別に応じ、困窮状態にある人には、食糧支援や現金給付を行なっています。
「ギリギリの状態になって相談してくる若者も多くいる」と話す広報担当者は、新成人を含む若者に対し、こう呼びかけました。
「複雑な状況を抱え、自分はまだ他の人に比べて大丈夫だから…と誰にも相談できなかった声もきいています」
「困ったことがあったり、不安な時はまず相談をしてほしいです。頼ってもいいんだよ、というメッセージを伝えたいです」