女性たちがSNS上にアップしたのは、カラフルで美しい伝統衣装を着た写真ーー。
アフガニスタンにルーツのある女性たちが、復権したイスラム主義勢力タリバンが私立女子大学生らに対して目以外の部分を覆う「ニカーブ」や長衣「アバヤ」を着るよう命令したことに、オンライン上で抗議しています。
女性たちは、#DoNotTouchMyClothes (私の服に触れるな)、#AfghanistanCulture (アフガニスタンの文化)、#AfghanWomen(アフガン女性)などのハッシュタグをつけ、SNSで写真をアップしています。
「これがアフガニスタンの文化です」
この動きは、一人の女性のツイートから始まりました。各国に住むアフガンルーツの女性たちが賛同し、次々と加わりました。
初めにツイートしたのは、歴史学やジェンダー学が専門のバハール・ジャラリさん。
「これがアフガンの文化です」と、カラフルな衣装を着た写真を掲載しました。
ジャラリさんは「この抗議活動は、ただファッションを紹介しているだけではありません。アフガンアイデンティティーへの攻撃に対する文化的抵抗です」とツイートし、こう呼びかけました。
「皆でアフガニスタンの真の服装の写真をアップして、本当のアフガニスタン文化がどのようなものかを知ってもらいましょう」
女性たちは、政府等により強制されてベールなどを着用するのではなく、自由意思で着用を選択できるべきだと主張しています。
その思いに答え、欧州などアフガン国外在住の、アフガンにルーツを持つ女性たちが次々と写真をアップしました。
BBCなどのジャーナリストらも参加し、以下のように呼びかけました。
自身が伝統衣装を着ている写真を投稿した、タマナ・ナシールさん(オーストラリア・メルボルン在住)がBuzzFeed Newsの取材に応じました。
ナシールさんは「アフガン文化に馴染みのない人たちにも、アフガニスタンの伝統衣装がどれだけ色鮮やかで美しいかを知ってほしいと思い、SNSでの抗議運動に参加しました」と話します。
ナシールさんが投稿したのは、イスラム教の犠牲祭「イード・アル・アドハ」の際に、いとこや妹とアフガンの伝統衣装を着て撮影した写真。
ナシールさんの両親はアフガニスタンで生まれ育ち、ドイツに逃れた後にオーストラリアに移住。ナシールさんはメルボルンで生まれました。
ナシールさんは語ります。
「タリバンが権力を握っていない時は、女性たちは自分が好きな伝統衣装を身につけることができました。もちろん、黒いニカーブを自分の意思で着用したい女性の思いは尊重すべきです。しかし、強制されたり、ニカーブなどがアフガン女性の装いだと思われることは望んでいません」
アフガニスタンは多民族国家であることから、それぞれの民族の、細部の装飾までこだわった色鮮やかな伝統衣装があるといいます。
そして、イスラムという宗教の伝統と、アフガン各地の地域の伝統は同じとは限らないのです。
イスラム教を極めて狭く解釈し、それを政治に当てはめようとするタリバンが復権したアフガニスタン情勢と、女性たちの生活が今後どうなっていくのかも懸念しています。
タリバンは会見で、「イスラム法の枠内で、女性の権利を保障する」と話しています。
しかし、イスラム法は日本の法律のように条文ごとに規定があるようなものではなく、聖典コーランや、預言者ムハンマドの言動の言い伝えなどの解釈を積み重ねたもので、一つの問題に対していくつもの解釈を出すことも可能なのです。
つまり、タリバンは「女性のルールは自分たちの解釈で決める」と言っているのに等しく、タリバンがこれまで示してきたイスラム法解釈が、極めて保守的、復古的だったことを鑑みると、服装を含め女性の権利に大幅な制約をかけてくる可能性が高まっています。
ナシールさんはアフガニスタンにいる女性たちを思い、国境を超えた女性たちの連帯を呼びかけています。