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「無理しなくていい」忙しい毎日を生きる、あなたへ。著者が今、伝えたいこと

「簡単なことではないけれど、大丈夫な人になりたい」の著者に聞いた、自分に優しく生きる方法。

「もう頑張ることに疲れちゃったな」「なんで周りの人はうまくできているのに、自分はできないんだろう」

誰もが一度は抱いたことがある思いではないでしょうか。

韓国人イラストレーター、ホン・ファジョンさん(27)が、自身の経験をもとに描いた四コマ漫画エッセイ「簡単なことではないけれど、大丈夫な人になりたい」が、日本語に翻訳されて出版されました。

韓国・ソウルでの都会の生活に疲れ、地方の実家に帰り、自分の心や仕事と向きあう主人公。「頑張りすぎずに生きること」について、ホン・ファジョンさんに聞きました。

「自分に厳しくしすぎていることに気付かずに、心が先に泣いてしまう」

「自分に『大丈夫』って言ってあげられる人に」

「忙しい街」で生き、感じたこと

この本の著者のホン・ファジョンさんは、2015年に「一人でいたくない日」を出版し、その後、本格的にフリーランスのイラストレーターとして活動を始め、出版社や企業、行政機関など様々なセクターでイラストを描いています。

しかし、そのように活躍するまでには、ソウルでの生活でのストレスなど、様々な困難があったといいます。

イラストレーターとしての仕事を夢見て、生まれ育った地方からソウルへ移住し、働いていたファジョンさん。

しかし、アルバイトをしながら続けるイラストレーターの仕事でのプレッシャーや将来への不安で、心を病んでしまったといいます。

精神科に通い自分の心と向き合いながらも、ファジョンさんは都会での生活に終止符を打つことを決意しました。

その間、ずっと書き続けていたのが「日記」。この四コマ漫画エッセイでは、地方に住む家族のもとに帰り、自分と向き合う様子が、やさしいタッチのイラストで描かれています。

韓国と日本には、ストレスや競争社会が共通の社会問題として存在します。BuzzFeed Newsは、文面取材を通じて、ファジョンさんに話を聞きました。

ファジョンさんは、ソウルで暮らしていた時のことをこう振り返ります。

「ソウルに住んでいた頃は、そこに住んでいるだけでもかっこよくて、流行りに乗っていて、時代を先走っているような気持ちでした。それは、私が生まれ育った場所が地方だったからだと思います。Uターンして地元に戻ると敗者になる気分だったんですよね。なんとかソウルに居ようとして、結局心と体の病気になり、ボロボロになって地方に戻ってきました」

地方の実家に帰り、父親と妹と生活する中で、初めはUターンしたことに対してマイナスな感情を頂いていたというファジョンさん。しかし、自分が成し遂げたいことや仕事など本質的な部分を見つめ直した時に、考え方が変わったといいます。

「しばらくの間は地方で生活している自分が敗者みたいで恥ずかしかったのですが、今は全くそうは思いません。住んでいる場所が自分の全てであるように感じることの方が、より問題だと思います」

「どこで暮らしていようと重要なのは『どのような生き方をしているのか』ということですから。個人的には、地方に戻ってきて暮らしながら感じた適度な孤独と生活費の余裕、隙間時間などが、健康を取り戻すための大きな助けになったと思います」

ストレス・競争社会を生きる日韓の人々へ

ソウルでの忙しい日々に疲れてしまったファジョンさん。そこには、韓国、そして特にソウルにある、仕事で成功することなどへの社会的なプレッシャーやストレスの問題もありました。

しかし、それらは韓国だけでなく、日本にも存在する社会問題でもあります。

都会に住み、仕事やプレッシャーに追われている人に、ファジョンさんはこう伝えたいと話しました。

「ソウルも東京も、両方とも素晴らしい都市ですよね。私も再びソウルに行って、新しいことを始めてみるつもりです。都会で一生懸命生きる人生も、地方に戻って一生懸命生きる人生も、両方とも十分すごいことを私はわかっています」

「でも、あまりにも懸命に生きすぎると体も心も傷つくので、住んでいる場所が自分の体と心を酷く苦しめるなら、一度振り返ってみてください。自分がなぜここでこんなにも懸命に耐えて生きているのか…ということを」

「大丈夫な人になる」って?

この本のタイトルは「簡単なことではないけれど、大丈夫な人になりたい」です。

少し不思議なこのタイトル。作品中にも「周りの人は自分に『大丈夫』と言ってくれるけど、自分は自分に厳しい。自分にも『大丈夫』と言ってあげる人になりたい」というエピソードが出てきます。

ファジョンさんは、「大丈夫な人になる」ということについて、こう話しました。

「先日読んだ本では『結局もっと良い人にならなきゃいけない』という文章に下線を引きました。私もどうせ生きるなら、少しでも良い人になりたいです。他人に対しても、環境に対しても、キャリア的にも、自分の内面に対してもです」

「いつか命が終わる時、貧しい魂のまま終わりたくはありません。でも、もっと良い人になることは決して簡単なことではありません。ただ思うがままに生きるのが一番ラクですから。それでも、なんとか、ゆっくりと、もっと『大丈夫な人』になれたらいいなという思いを込めました」

ソウルでの忙しい日々が原因で、精神科にも通ったファジョンさん。ベッドから出られない日や、何も手につかない日もあったといいます。

この本を手に取った、「少し疲れたな」と思う人たちに、こう伝えたいと話しました。

「私たちは最終的には、今よりもっと『大丈夫な人』になれます。ベッドから抜け出せない日があっても、無敵な気持ちで1日を過ごせたのに翌日は何もできなくなっても、状況が何も変わらないような気がしても、希望を失わないでほしいです。時間は漠然と流れて、自分の中にいる自分も自分自身がうまくいくように願っていますから」

「簡単なことではありませんが、どうか寛容な心と繊細な視線で自分自身を大切にしてください」