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申請しないとコロナワクチンが受けられない…。そんな人が3千人もいる。

難民申請中などで仮放免中の外国人も、新型コロナウイルスのワクチンを無料で接種することができます。しかし接種までの運用には課題も。厚生労働省や群馬県館林市、埼玉県川口市・蕨市を取材しました。

新型コロナウイルス対策の切り札として期待される、ワクチンの接種。

日本社会に暮らす全ての人々が、必要とする接種を受けられるようになることは、社会がコロナ禍を克服していく基本になる。

こうした状況で厚生労働省は3月31日、「仮放免中」の外国人もコロナワクチンを無料で受けられると各自治体に通達した。

しかし、接種券の発行方法など運用面には課題が残る。BuzzFeed Newsは、厚生労働省と出入国在留管理庁、そして仮放免中の人たちが多く暮らす3つの自治体の担当者を取材し、問題点を整理した。

「仮放免」とは、難民申請中の外国人など、入管の収容施設に収容されていた外国人が、仮放免を申請して許可を受け、一時的に解放された状態を意味する。

ワクチンが必要なのは、入管に収容され、「仮放免」の認定を受けて地域での生活に戻った外国人も同様だ。

しかし、仮放免中は自治体に住民登録ができないため、住民票がない状態だ。

一方、コロナのワクチン接種は、各自治体の住民基本台帳(住民登録)の情報に基づいて、住民それぞれの接種の順番が来れば、各自治体が接種券を郵送している。

長期滞在の資格を持つ外国人は住民登録ができるため、住民票の情報に基づいて接種券が送られ、公費で無料接種を受けられる。

このため、住民票がない仮放免中の外国人からは「接種を受けられるのか」という不安の声もあがっていた。今回の通達で、仮放免中の外国人からは安堵の声も上がる。しかし、接種までの流れは複雑で、行政側の課題は多い。

出入国在留管理庁によると、仮放免中の外国人は現在、およそ3千人。

厚生労働省予防接種室の担当者は取材に、ワクチン接種は「仮放免中の本人からの申請を、基本とします」と話す。

仮放免中の外国人は、住所を入管に報告し、居住する県から出られないなどの制約がある。

入管側は仮放免中の外国人の住所を把握していることになるが、ワクチン接種券発行や送付に関しては、自治体にこうした情報は共有されないという。理由については厚労省の担当者は「ワクチン接種のために提供された情報ではないため」と話した。

このため、仮放免中の外国人は、住んでいる自治体のコロナワクチン担当窓口などに、自分で申請する必要がある。

自治体側は申請を受けてから居住実態などの確認をとり、接種券を発行することになるという。

突然の通達に現場も混乱。現場の対応は

難民申請中の外国人は、同胞を頼り、近くに集まって暮らす生活するケースも少なくない。

BuzzFeed Newsは、ミャンマーで弾圧を受けているイスラム系少数民族ロヒンギャの人々が多く暮らす群馬県館林市と、トルコで弾圧を受けるクルド人が多い埼玉県川口市、蕨市を取材した。

館林市でコロナワクチン接種を担当する健康推進課の担当者は、「外国人住民との共生などを担当する市民協働課などとも連携し、市内に住む仮放免中の外国人の人数把握などを図る」と語る。

仮放免中の外国人がワクチン接種を希望する場合は、健康推進課に連絡し、居住の実態の確認をしたうえで、接種券の発行などの手続きをするという。

館林市では現在、65歳以上の高齢者に接種券を送付する段階に入っている。健康推進課の担当者は、高齢者の接種開始間際になって、仮放免の人に関する厚労省の通達が出たことに困惑した様子もみせながら、「仮放免中の人たちが普段していそうな施設などとも連携し、ワクチン接種を希望する人に情報が届くようにしていきたい」とした。

支援団体などによると、埼玉県蕨市と川口市には、1500人〜2000人ほどのクルド人が暮らす。多くは先に日本に逃れた家族などを頼って来日し、難民申請している。

クルド人は「国を持たない世界最大の民族」と呼ばれ、トルコ、シリア、イラク、イランなどに広がる。いずれの国でも少数民族として差別を受けたり、冷遇されたりしてきた。シリアではその多くが無国籍の状態に置かれ、トルコではクルドの民族運動に対する軍や警察の弾圧が続いてきた。

しかし、日本政府は一貫してトルコ出身クルド人の難民申請を認めておらず、蕨市と川口市のクルド人の多くは、仮放免などの不安定な状態に置かれている。

川口市の新型コロナワクチン接種推進室の担当者は「仮放免許可書やパスポートなどを確認し、居住の実態が確認され次第、接種券を出したい」と話した。

仮放免中の外国人が接種を希望する際の連絡先や、決定後の告知方法についは検討中のため未定という。蕨市健康福祉保健センターも「検討中」とした。

コロナワクチン接種をめぐっては、多言語での情報提供もされているが、仮放免中の外国人に対して申請方法などを告知する際にも、多言語での発信が必要になりそうだ。

オーバーステイは「個別ケース」。入管収容施設での接種は「検討中」

日本で暮らす外国人には、仮放免中の人のほかにも、オーバーステイ(超過滞在者)など行政・医療につながりにくい人々がいる。

厚労省の担当者はこうした人々について「ケースバイケースとなりますが、居住の実態があり、止むを得ない理由があれば、接種の可能性を一律に排除するものではありません」と答えた。

一方、オーバーステイの外国人は、在留資格がないことが明らかになると国外退去処分の対象となるため、自ら自治体に接種の申請をするには、高いハードルがあることも想定できる。

アメリカでは、正規の滞在資格がない、いわゆる不法移民も、ワクチン接種の対象としている。韓国も同様に、約39万人の不法滞在者を接種の対象とする方針を打ち出している。

滞在資格を問わず国内で暮らす全ての人にワクチン接種を広げ、社会全体をコロナから守ることが、その理由にあるとみられる。

また、東京入国管理局の収容施設では2月、コロナ感染のクラスターが発生していた。

出入国在留管理庁の担当者は、入管に収容されている外国人へのワクチン接種は「厚生労働省と入管庁の間で検討中。スピーディーに進めていく」と語った。


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