「あなたらしさは、あなたのもの」「あなたが『らしく』いられるなら、それが正解」
あるコスメブランドが企画した写真プロジェクトは、こんなメッセージを発信しています。
5人のモデルは、病気などが原因で、顔のアザや脱毛など人とは異なる外見の特徴がある人たちです。
プロジェクトの主宰者、そしてモデルたちの思いを聞きました。

「あなたらしさ」をテーマにした写真プロジェクトを企画したのは、メンズコスメブランド「BOTCHAN」と、見た目に特徴がある人たちが抱える問題について取り組むNPO法人「マイフェイス・マイスタイル」。
「男らしくを抜け出そう」をコンセプトに掲げてきたBOTCHANが、「それぞれのありのまま」を応援したいと、コラボ企画を立ち上げました。
モデルには、生まれつき肌や毛髪が白く、弱視などの視覚障害も伴う遺伝子疾患の「アルビノ」や、顔の骨が十分に発育しない「トリーチャーコリンズ症候群」、全身の体毛が抜ける「汎発性脱毛症」などの当事者が参加しました。
見た目の特徴への理解を広げ、差別や偏見をなくしていくために発信する同NPOの活動に携わってきた当事者たちです。

コスメブランドが企画した写真プロジェクトですが、撮影で手に商品を持ったり、化粧の際に商品を使ったりはしていません。
その理由についてBOTCHANの担当者は、「商品を売るためのキャンペーンではないから」と話します。
「みんな違って当たり前。自分らしくいることが美しく、素晴らしいということを伝えたくて企画しました」
写真は、BOTCHANのInstagramで投稿されています。
「それぞれでいいんだ。とらわれなくていいんだ」
アルビノ当事者の神原由佳さんはBuzzFeed Newsの取材に、撮影を経て感じた思いについて、こう話しました。
「化粧品会社のモデルと聞いてイメージするのは、いわゆるルックスが整った人や肌が綺麗な人。でもこのプロジェクトではそうでなくて、見た目に症状がある人たちが起用されていて、画一的なものにとらわれない企画だと感じました」
「社会では、一重でなく二重が良いとされるなど『美しさの基準』の風潮があります。でも、撮影を通して、同じ方向に向かっていくのではなく、それぞれでいいんだ。とらわれなくていいんだなと改めて感じました」
「幸せに生きていける」アルビノの子を授かり不安に思う親に伝えたい

アルビノのエンターテイナーとして活動する粕谷幸司さんは、今回の撮影での写真を見て、「人間らしさがとても出ていて、芸術に近い力があると感じた」と話します。
20代半ばでアルビノであることを公にして活動を始めた粕谷さんは、15年間にわたってブログや寄稿、音声メディアでの発信などを続けています。
そこには、見た目に症状がある人たちの存在を「知ってほしい」という思いがありました。
「見た目に症状がある当事者も非当事者も、一緒の社会で暮らしています。非当事者はそのことについて知らなかったり、『自分とは違う』と感じたりして、距離を置きながら生きているかもしれません。でも、すごく近くにいて、一緒の社会で生きていることを知ってほしいです」
「アルビノや見た目に症状がある人たちをめぐるメディアでの報道などでは、大変な話や苦しみを伝えるものが多いです。それも大切ですが、自分は『人生を楽しんで生きている』ということを発信していきたいと思っています」
「それは、アルビノの子どもを授かり、子の将来について不安に思う親がアルビノについて調べた時に、幸せに生きていけるということを知ってほしいからです。アルビノを含め、見た目に症状がある人たちも、幸せに生きることができるとアピールしたい」
日本社会でも「受け止め方が変わってきた」
「私の顔、私のスタイル」という意味の団体名で活動する「マイフェイス・マイスタイル」は、見た目の特徴への理解を広げ、差別や偏見をなくしていくために活動を続けています。
見た目に特徴があることで、学校や日常生活、就職などあらゆる場面で当事者は困難や差別に直面しています。それを「見た目問題」と呼んで、解決に向けて日々取り組んでいます。
20年以上、見た目問題に取り組む代表の外川浩子さんは、「社会の受け止め方は変わってきた」とします。
「活動を始めた当時は、当事者で顔出し・実名で発信したり、取材に応じたりする人は数えるほどで、ものすごい覚悟で取材に応じていました。でも今では、TikTokやYouTubeで、見た目に症状がある多くの当事者が自ら発信して、『なんでも聞いて!』と呼びかけるほどです」
「今の10、20代の若者と、50、60代の人たちでも捉え方が違うと思いますし、映画やメディアへの当事者の露出なども大幅に増え、日本社会での受け止め方が大きく変わってきたと感じています」
BOTCHANとの写真企画について外川さんは、「普段は人権問題に関心がない人たちにも、写真を通して、見た目に症状がある人たちについて知ってほしい」と話します。