
ニコラは中学生対象のファッション誌で、発行部数は20万部。流行のファッションやメイクなどを紹介する人気雑誌です。
「ニコモ」と呼ばれる専属モデルは、女子中学生や小学生の憧れとなっています。
和香子さんは、今回の署名で「容姿にコンプレックスを抱く子どもをこれ以上増やしたくない」「女子中学生雑誌No.1のニコラは、見た目に優劣はなくありのままで美しいことを子どもたちに発信してください」と求めています。
体型に悩み始めた小学生時代。雑誌で「美の多様性」は?
大学4年生の和香子さんは、小中学生の頃、毎月ニコラを読むことを楽しみにしていました。雑誌で憧れのモデルが着ている洋服を親に買ってもらってうれしかった思い出もあるといいます。
しかし和香子さんは、その頃から自身の体に対するコンプレックスを抱き始め、10年間にわたり悩み続けました。
「ちょうどニコラを読み始めた小学校高学年の頃、生理が始まった時くらいから太りはじめました。今思うと成長として普通のことだったと思うのですが、当時は『太ることはダメなこと』と思ってしまっていたので、すぐにコンプレックスになりました」
無意識に雑誌に載っていた、やせ型のモデルと自分自身の体型を比べて、落ち込んでいました。
「ボディポジティブ 」という言葉を知って、変わった考え
中高大と、体型や濃い体毛などにコンプレックスを抱えていましたが、考えが変わったのは、昨年、ある雑誌を読んでいた時に「ボディポジティブ」という言葉を知った時でした。
体型など、ありのままの体を愛そうという考えを知り、和香子さんも自分の体に対して前向きな気持ちを抱けたといいます。
「その時、小中学生の時に接していたニコラをはじめとしたメディアを思い返し、やせていることや肌が白いことなどの『美の基準』が、ごく当たり前のこととして発信されていたと感じました」
「キャンペーンを通して、ニコラさんだけでなく社会の人たちに、美の多様性について考えてもらえるきっかけになればと思います」
最近では、ボティボジティブについて発信するメディアやブランドもあり、リアルサイズモデルを起用する雑誌や広告なども増えています。
大好きだった雑誌だからこそ、ボディポジティブや美の多様性についても積極的に発信してほしい。そう考えています。

「色んな体型の子がいていいと伝えて」「いろんな肌の色の子も」
ニコラでは、女性の体の成長などについての読者からの質問に、医師や専門家が答える「ニコラ保健室」などのコーナーもあり、読者に体や健康に関する知識を紹介しています。
一方で、雑誌内ではダイエット企画が掲載されることもあります。
「ダイエットすること自体は個人の自由だと思いますが、今のニコラの発信の仕方だと、やせていないと美しくないからダイエットしよう、太ったらやばい、みたいな発信の仕方だと感じました」
9月号では、「ヤセたい!モテたい!白くなりたい!ニコモと一緒に夏休み本気あか抜け計画」と銘打って、数ページにわたりダイエットや「美白」の方法を紹介。
この特集では、ダイエットや「美白」に取り組むビフォー・アフターの写真を掲載。
「写真を見てあきらかにヤバイって思った!顔はまんまるだし脚もパンパン」「アゴとほっぺに肉!!!」「自分が真っ黒でショック」といった記載もありました。
昨年も7・8月合併号では「自粛太り解消」のダイエット企画を組んでいました。
若い女性の「やせ願望」やダイエット指向が引き起こす栄養問題については、厚生労働省もウェブサイトで注意喚起しています。
署名ではニコラ編集部への具体的な要望までは盛り込んでいませんが、和香子さんは以下のような改善点があると指摘します。
「たとえばメイクの企画も『美白』という言葉を頻繁に使い、『肌を白くした方が良い』というメッセージがあると感じます。実際は色んな肌の色の子がいるので、どんな子も楽しめるようなメイク、様々な肌の色に合わせたメイクを紹介するのが良いかなと思います」
「洋服に関しては、色んな体型の子がいてもいいということを伝えて、色んなサイズやタイプの洋服を紹介してほしいです」
署名は、現在活動しているモデルや雑誌そのものを否定するものではありませんが、発信内容が多様になっていくことを望んでいるといいます。
8月末にスタートした署名は12月上旬ごろまで集め、ニコラ編集部に提出する予定です。

和香子さんが署名を立ち上げることを友人に話すと、実は友人も体型に悩んだ過去があり、やせようとするあまり生理が止まってしまった経験を打ち明けられました。
「私から見ると細くてダイエットする必要がないような体型の友人です。しかし彼女自身も、ニコラが好きで読んでいたけど、その頃からやせなきゃと強迫観念のようなものに縛られて、ずっとコンプレックスだったと話してくれました。彼女が署名の趣旨に賛同してくれたことも、後押しになりました」
ユニリーバのビューティーケアブランド「ダヴ」が発表した「少女たちの美と自己肯定感に関する世界調査(2017年)」によると、日本の10代女性の93%が、容姿に「自信がない」と答えています。
ダヴが調査した世界14カ国のうち、容姿に「自信がない」と答えた割合は、日本が最多でした。
和香子さんさんはこのような現状を受け、署名スタートと共に、子どもや若者の自分らしさをテーマにする学生団体「as I am」(@asIamasyouare)を立ち上げました。今後、活動を広げていく予定です。
「もっとファッションや美容に関する発信が多様になれば」
ニコラに限らず、やせていることや「美白」を良しとするような発信をしているメディアは多くあります。
「いま読んでいる雑誌でも、肌が白くて、細くて、小顔で、髪の毛もさらさらという『美の基準』を前提として発信されているものも多いです。ボティポジティブに出会って、自分と向き合うことができたんですが、そのような発信を見てしまうと、やせた方がいいかな…やせた方が服をかっこよく可愛く着られるかな…と思ってしまいます」
雑誌や広告では「プラスサイズモデル」のほか、平均的な体型の「リアルサイズモデル」も起用されていますが、全体のごく一部にすぎません。
「ボディポジティブの発信が増えている一方で、まだまだ美の基準を前提にしたものが多いとも思います。もっとファッションや美容に関する発信が多様になればいいなと思っています」
2020年には、外見を蔑視・卑下して脱毛やダイエット商品を勧める漫画広告に抗議するオンライン署名が大学生によって立ち上げられ、4万8千筆が集まりました。
和香子さんは語ります。
「ダイエットも脱毛も、自分がやりたいと思ってやる時に選択肢があるべきですが、今の多くの広告や雑誌の発信の仕方だと、そこに選択権がないような書き方のものも少なくありません。そこは個人の自由だということを前提に発信をしてほしいなと思います」
BuzzFeed Newsはニコラ編集部に対し、署名に対する見解や今後ボディポジティブについて発信していく予定があるかを質問しましたが、「今回は回答はなしということでお願いできればと思います」ということでした。
(サムネイル:Getty image)
UPDATE
一部を編集しました。