腹の虫がおさまらないときの対処法

    自分は怒りすぎているとわかっているのに、腹の虫がおさまらない。そんな時はこうしてみよう。

    ディズニー/ピクサー映画『インサイド・ヘッド』を見たことがあるだろうか。この映画に出てくる「イカリ」というキャラクターは、我慢ならないことがあるたびに、文字通り「頭を爆発」させる。その描写が見事だ。

    大げさすぎるとはまったく思えない。誰だって怒りで頭を爆発させたことはあるのだから。

    会議で話に割り込まれた、昇給願いを却下された、期待を大きく上回る働きを見せたのに昇進を見送られた、パートナーの助けを必要としていたのに裏切られた――。

    そういった場面を想像しただけで、はらわたがふつふつと煮えくり返るような気がしてくることだろう。

    心理学者のローレン・アッピオ博士は怒りについて、「不公平な扱いを受けたときに、自分や他人を守るためのエネルギーとなります」と話す。そういう時の怒りは正当な感情であり、腹を立てたからといって自らを批判する必要はない。

    その一方で、人と人との関係においては、通常はもっと良いコミュニケーション方法が存在する。ノーベル文学賞を受賞した作家トニ・モリスンは、かつて怒りについてこう語った

    「人を麻痺させる感情だ。何もできなくなる。人は怒りを、興味深い感情であり、情熱的で、心を燃え立たせるものだ、といったふうに考えている。私はまったくそんなふうには思わない。怒りは無力であり、自制心に欠けた感情だ」

    「怒りがこみあげてきたけれど何とかしてそれをなだめたい」と思ったときは、次に紹介する方法を試してみよう。専門家のお墨付きの方法だ。

    1. 自分の怒りが妥当かどうか、自分に問う。

    頭に血が上っている最中は、その怒りが妥当かどうかを考えるのは難しいだろう。けれども、何度か深呼吸をして、「なぜ怒っているのか」と自分に問えば、自分の感情を否定することなく、冷静さを取り戻せるかもしれない。

    アッピオ博士はBuzzFeedに対して、「腹立たしい思いを消そうとする前に、自分の怒りが妥当かどうかを考えてみてください」と語った。

    「他の人も、自分と同じ状況に置かれたら、やはり怒りを感じると思いますか?そう思うなら、あなたが怒りを感じるのはもっともなのです。自分の感情を認めてあげるということは、怒りに任せて他人を攻撃してもいいという意味ではありません。自分が必要としていることは何かを確認し、その必要性を満たす方法を考えましょう」

    2. 怒りの下に隠れている、ほかの感情を明らかにする。

    怒りは、恐怖や苦痛、恥ずかしさなど、無力さを生むほかの感情の代役を果たしている可能性があると、アッピオ博士は指摘する。

    怒りのままに行動を起こさず、怒りという感情自体を観察するよう、努めよう。そして、怒りの下に隠されたさまざまな感情について、自分で分析してみよう。

    「怒りの正当性について自問したり、状況を変えたり、自分の要望を伝えたりして隠された感情に対処すると、怒りもおさまっていくはずです」とアッピオ博士は述べる。

    3. その場から離れる。

    セラピストのアニタ・アヴェディアンは著書『Anger Management Essentials: A Workbook for People to Manage their Aggression(アンガー・マネジメントの基本:攻撃性を抑制するためのワークブック)』の中で、我慢ならないことがあったら「場面を変える」よう勧めている。

    その場を離れるもよし、散歩するもよし。怒りに油を注いでいる状況からとにかく抜け出すのだ。それから、前述した1と2の方法を試してみよう。

    アヴェディアンに言わせれば、頭に血が上っている時は、外を散歩するのがとりわけ効果的だという。散歩をするとエンドルフィン、つまり「幸福のホルモン」が脳内で放出され、「痛みの認識」を和らげてくれるからだ。

    だからと言って、喧嘩相手に何も言わずに、無言でその場を離れてはいけない。相手に、「自分には独りになる時間が必要だ。20分後(あるいは好きな時間)に戻るから、それからもう一度話をしたい」と伝えることが大事だ。

    4. 自分のなかの「内なる子ども」と話をする。

    こうした「疑似科学的」なアドバイスは一気に飛ばして先に進みたいと反射的に思った人も、最後まで読んでほしい。

    人に対して怒りを抱くということは、置かれた状況のなかで自分を大切にしていない兆候かもしれないと、心理学者のマーガレット・ポール博士はBuzzFeedに語った。

    その場合は、心のなかにいる「内なる子ども」と話をすると、心を落ち着かせることができるだけでなく、問題点が明らかになって、自分自身にもっと優しくなれるという。

    「怒っている自分は、かんしゃくを起こしている内なる子どもであり、思いやりを必要としているのだと想像してみてください。腹を立てている子どもを、優しく、思いやりと共感をもって抱っこしているところを想像するのです」とポール博士は言う。

    「内なる子どもに、自分の何について怒っているのかを尋ねてください。十分に自己主張できていないから怒っているのでしょうか? 自分のことは我慢して、相手の言いなりになっているからでしょうか? 傷ついた思いや孤独、無力さなど、心の深いところにある感情を無視して、他人や状況を優先させていないでしょうか?」

    5. 無意識のうちに怒りを抱いているときに現れる兆候を自覚し、心の準備をしておく。

    誰かに対して突然怒りを爆発させたあとで、そんな自分の行動に驚いた経験はないだろうか。あるとすれば、怒りが最初、どんな身体的兆候になって現れるのかを、まだ自覚していないからだ。

    心理学者サリ・チャイト博士はBuzzFeedに対し、「怒りに反応して何らかの行動を起こすまで、自分が怒っていることに気がつかない人はたくさんいます」と述べた。

    そこでチャイト博士はこう勧めている。「肩に力が入ったり、あごを食いしばったり、こぶしを握ったりしていたら、気がつくようにしましょう」

    「自分の考えや感情を書き出してみるのも重要です。頭が混乱していて、明晰に思考できない、ということはありませんか? ひとつの視点に固執していて、ほかの可能性を排除したりしていませんか?」

    怒りの兆候を書き出しておき、そうした兆候が身体に表れ始めたら注意しよう。怒りをおさめるためには、深呼吸したり、その場を離れたりするのが役に立つ。

    6. 体のいろいろな部位を意識しながら、緊張を解く。

    ほとんどの人は、怒りを覚えたときに身体的なサインが表れる。そこで、アヴェディアンが提案する次のテクニックを試してみよう。

    「体のいろいろな部分にぎゅっと力を入れてみましょう。部位別に5秒間力を入れてからリラックスすることを、3回ずつ行います。肩や腕、手、太腿やふくらはぎ、脚がいいでしょう」

    そうすると、身体的な緊張が和らぎ、同時に怒りもおさまってくる。

    7. 笑える動画を見る。

    喧嘩の最中に相手が冗談を飛ばして、一気に気分が軽くことはないだろうか。喧嘩の内容がどれくらい深刻かにもよるが、効果的な場合もある(冗談を差しはさんだことでますますこじれることもある)。

    アヴェディアンは、何か笑える映像などを見るよう勧めている。YouTubeで好きな芸人のコントを見たりするといい。

    怒りが込み上げてきたときに――とりわけ、シンクが洗い物でいっぱいになっているなど、比較的ささいなことで怒りを感じたときに――ぜひ試してみよう。

    「自分を笑い飛ばすことを学びましょう」と、アヴェディアンはアドバイスしている。

    8. 自分の状態を確認する。

    「お腹が空いていると実際に怒りを感じる」ことが科学的研究で明らかになっている。だからこそ、腹を立てているときに自分がどんな状態かを確認するのはとても重要だと、セラピストのパトリス・ダグラスは話す。

    「嫌なことが続く日でしたか? お腹が空いていませんか? 疲れていたり、いつもの自分と違うと感じたりしていませんか? そんな気分のときは、人はたいていピリピリしているので、他人の言動を誤解して受け取ったりして、ついカッとしてしまうのです」

    9. 怒りを感じた相手が、「本当に」自分を傷つけようとしているか、自問する。

    友人やパートナーの発した言葉を誤解することは、誰にでもある。とりわけ、空腹だったり、疲れていたり、ストレスがたまったりしている時だ。

    だから、自分を傷つける発言だと感じたとしても、ほんの少し立ち止まって、本当の意図は何なのか考えてみよう。そうすれば、割とすぐに事態は収拾するだろう。

    セラピストのダグラスは、「腹を立てていると、相手を脅威だとみなし、(自分自身を)守らなくてはならないと考えます。しかし、私たちはときに、相手の行動を誤解したり、発言を正しく受け止めなかったりすることがあります」

    10. 手紙を書く。

    アヴェディアンは、自分を怒らせた相手に手紙を書くと、怒りに効果的に対処できると話す(この手紙は実際には送らない)。手紙を書くことで、「内なる子どもが積極的に行動を起こせる」からだ。

    ただし、電子メールのアプリで書いてはいけないとアヴェディアンは注意する。誤って送信してしまったら大変だ。代わりに、手書きするか、パソコンで文書ファイルを作成したりしよう。

    11. 音楽を流す。

    セントラル・カウンセリング・サービシズ」の共同創業者であるセラピストのシェリー・ショッキー=ポープによると、好きな音楽、特に、幸せな記憶にまつわる音楽を聴くことは、怒りを発散するのにうってつけだという。

    「音楽は変化を起こします。たくさんの感情と結びついているからです」とショッキー=ポープは話す。怒り狂っていたはずなのに、ビヨンセの「Love On Top」を耳にしたら、体が勝手に動いて歌い始めるかもしれない。

    ショッキー=ポープはさらに、体に心地よく感じるのは、1分間に60から80ビートを刻む音楽だと指摘する。そして、そのスピードの曲を集めたプレイリストを作っておき、大変なことがあった1日の終わりに流すよう勧めている。

    12. 自分を大切にするのを忘れない。

    いつも疲れている、働きすぎている、食生活が乱れている、運動が不足している、自分を支えてくれる大切な人と過ごす時間が足りていない――そんな人は、ちょっとしたことで腹を立てて逆上する可能性が高い。

    だからこそ、日ごろからしっかりとセルフケアすることが、より穏やかに暮らすためのカギだと、ショッキー=ポープは言う。

    だから、全然時間がないと思う状況でも、自分の時間を確保しよう。助けを求めよう。外に出よう。睡眠時間をたっぷりとろう。現在の職場環境のせいでイライラしがちなら、新しい仕事を探そう。怒ってばかりいるのはもったいない。


    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan