イギリス人親子が始めたあるプロジェクトが、Twitterで話題になっている。10歳の息子からフォトショップの使い方を教えてほしいと言われた父親が、わが子と一緒に東西の名画に救助船や救助ヘリを加工して入れ込み、投稿したところ、そのユニークな作品が注目を集めたのだ。
1月半ば、アンディ・ドウさんは息子のヘンリーくんからフォトショップの手ほどきを頼まれた。ヘンリーくんはアートを創作したり、ボートに乗ったりするのが好きな男の子だ。ふたりは家でフォトショップ講座を開催。有名な絵画を題材に、駆けつけるレスキュー隊の画像を足していった。
その週末、アンディさんが作品のいくつかを軽い気持ちでTwitterに投稿したところ、みるみるうちに拡散。5万件を超える「いいね」がついた。
アンディさんは王立救命艇協会(Royal National Lifeboat Institution)の救命ボランティアとして活動しており、イングランド南部の町ヘイスティングズにある救命ボート基地に所属する。メール取材に答えてくれたアンディさんによると、ふたりが絵に救命ボートを加えてみようと思いついたのは、自身が海での捜索救助活動をしていることに加え、「有名な絵には、人が海で危険にさらされている場面がとても多い」からだという。
「最初はおもしろ半分でした。Twitterに載せたのも、救命ボランティアの仲間が何人か見るかなと思ったからというだけでした。かなりマイナーなネタだと思ったのですが、あっという間にこうなって、救命ボートが好きな人は意外とたくさんいるんだなとわかりました」
するとすぐに、友人はもとより知らない人からも、「この絵にも救助隊を」と出動依頼が入るようになった。
「自分の子どもに関することを何かネットに上げるのにはいつもやや神経質になるのですが、今回の反応は圧倒的に好意的なものばかりでした。例外は何人かのクライアントから、これくらい注目されるコンテンツをなぜウチのために作ってもらえないのかと言われたくらいでしょうか」。アンディさんは大学の講師として講義をしているほか、デジタルマーケティングのコンサルタントでもある。本業では、クラシック音楽のアルバムデザインなどを手がける際にフォトショップを使っている。
「一緒にやるのにとてもいいプロジェクトでしたし、僕と息子の趣味を結びつけられて楽しかったですね」
ヘンリーくんにお気に入りを聞いてみると、一番はじめにやったウィリアム・ターナーの「Wreck Off Hastings(ヘイスティングズ沖の難破船)」かな、という(下のツイート)。ここに描かれた海は、父親のアンディさんが実際にボランティア仲間と救助活動をしているエリアだからだ。
「うちのバスルームには前からこの絵が貼ってあるんだけど、ぼくが作ったやつに替えてみたらママは気がつくかな」とヘンリーくん。
こうして、10歳のヘンリーくんには新しい楽しみができた。今度はフォトショップで絵の中の有名な建物を入れ替えて遊んでみようかと思っているそうだ。
「新しいツールの使い方とかテクニックを学ぶのにちょうどいいし、ぼくが大きくなって本物の救助隊に入れるようになるまでは、これでいろいろ遊んでみようかな」