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【EU離脱】人材と資金求めイギリスのテック業界はどこへ行く?

アイルランドなどへの移転の動きも

ロンドンのテック・スタートアップ企業のハブになっている東ロンドン。EU離脱が国民投票で決まった後、街角に「スタートアップの皆さん。落ち着いて。ベルリンに拠点を移しなさい」という言葉を掲げた1台のバンが現れた。

The vultures are circling 🇩🇪 ... #london #Berlin #brexit #startups

この6年間、イギリスのデジタル産業の投資規模は35億ポンド(約4700億円)となり、他の業界よりも32%速い速度で成長してきた。

しかし、イギリスの有権者が先週、EU離脱を決定したことで、今、ジョージ・オズボーン英財務相が進めてきたテック産業の推進計画は、先行きが不透明になっている。

BuzzFeed Newsは経営者やテック業界の専門家たちに、イギリスのEU離脱の影響や、ロンドンを出ることを考えているのかなどについて聞いた。

業界の人たちは、EU離脱後、次のような事柄について心配している。

  1. 移民に関する新しいルールによって、企業は以前のように、世界中から優秀な社員を雇えなくなるかもしれない。
  2. 潜在的な景気後退傾向が始まる中で、イギリスの銀行は小規模事業者への貸付を引き締めるかもしれない (イングランド銀行は貸付を継続するよう促してはいるが)。
  3. ベンチャーキャピタルの投資家がお金を出さなくなり、イギリスよりも先行きが不透明でない国々に投資するかもしれない。

パトリック・アーネソンは、アクティブユーザー数が月300万人に達するアプリ、Forza Footballを運営するスウェーデンのスタートアップ、Football Addictsの共同設立者でCEOだ。アーネソンはBuzzFeed Newsに対し、ロンドンにオフィスを開設する計画だったが、離脱が決まって以降は保留にしていると語った。

「イギリスはサッカー発祥の地で、我々は世界最大のサッカーアプリを運営しています。しかし、テック企業にとっての重要なのは、素晴らしい人材を見つけることです。素晴らしい才能の持ち主を見つけるには、世界中を探さなくてはいけません」と彼は話した。

「人が自由に移動できるのは、最も重要なことの一つです。イギリスがEUを離脱してしまうと、それが難しくなります。なので、ロンドンオフィスの計画は保留にすることにしました。そのメリットがなくなってしまうからです」

「イギリスが英語圏でもあることも、我々にとっては大きなメリットでした。しかし、最も重要な部分は人が自由かつ簡単に移動できることで、その機会がなくなるのであれば、それはとても、とても困ったものです」

彼は現在、8カ国から30人のスタッフを雇っている。EUの一部であるアイルランドの地位を利用するために、ダブリンに会社を移転することを考えているという。

フィンテック企業 (金融分野のIT企業)にも影響が出るかもしれない。

KPMGの報告書によると、イギリスのフィンテック企業は、ロンドンのテック業界の中の主要なもののの1つであり、4万4000人の従業員を雇用している。このうち5500人は、ヨーロッパ大陸の国の出身者だという。

KPMGのテック業界発展担当部長のパトリック・インバックは、英EU離は、ロンドンのテック・スタートアップを窮地に追い込む可能性があると警鐘を鳴らした。

「ロンドンの最も魅力的なところの1つは、ヨーロッパ進出の跳躍台として、利用できること」と彼は話した。

「イギリスに拠点を置く企業からパスポート権が奪われ、ヨーロッパ全体のテック業界の人材が、イギリスのフィンテック企業で柔軟に働けないとなると、既存のフィンテック企業は移転を余儀なくされます。また、スタートアップ企業は、ビジネスを立ち上げるために、別の場所を検討することになるでしょう」

IDチェック技術の会社で、41カ国、35ヶ国語を話す社員を雇用しているIT企業Onfidoのフセイン・カッサイ社長は、雇用が一番の問題であり、テック業界のハブとしてのイギリスの将来に課題を突き付ける可能性があると話した。

「我々が必要としているスキルを持っているイギリス出身の候補者は、十分にはいません。我々の採用活動が難しくなるだけでなく、より強固な人材プールを持つEUの企業戦うことも、さらに大変になります」と彼は話した。

「イギリス国外の人材にとって、我々があまり魅力的でない雇用主となることは横に置いておくとしても、国外から人を雇うために我々が処理しなければならないペーパーワークや、事務作業の量だけでも、競合他社の後れをとることにつながるでしょう。機敏性やスピードが我々の優れている点でしたが、他社に先んじることはできなくなるでしょう」

彼はまた、EU離脱が国際的な経済成長を阻害すると警告し、必要ならば事業を海外に移す可能性もあると語った。「我々は既にリスボンにオフィスを置いていますが、イギリスが大変な状況に陥れば、そこを主要拠点にせざるを得ないかもしれません」

カッサイは、希望も少しあるという。従来型の銀行に生じる混乱に、ビジネスチャンスを見つけることだ。

情報・知識集約サービスを提供するDueDilの最高経営責任者、ダミアン・キンメルマンもこの意見に賛同し、ブログ記事にこう書いている。

EU離脱は、市場に不透明感や規制上の泥沼を生じさせるかもしれない。これはイギリスや経済にとっては不幸なことだが、フィンテック企業が繁栄するために必要な環境を作り出すことにもなるだろう。イギリスのスタートアップは金融機関にはできない場所で事業を展開し、新しい問題に革新的な解決策を提示して、顧客や企業がお金をより賢く使う手助けをするのだ。

しかし彼はこう警告している。「はっきりさせておこう。EU離脱は悲劇だ。ヨーロッパのパートナーと一緒に課題を引き受ける代わりに、イギリスは間違った道を歩み、不要な不透明感や悲観性を経済に織り込んでいるのだ」

雇用問題が片付いたとしても、問題は残る。この業界に一体誰が資金提供し、イギリスのテクノロジーの未来に誰が投資するのだろうか?

KPMGのインバックによると、投資家らはすでに懸念を持ち、資金を撤退し始めているという。

「英国のEU離脱をめぐる不確実性は、イギリスでは今年の第二四半期の主要な話題になりました。そして明らかに、この国でベンチャーキャピタルの投資が今年の第一四半期と比べて50%近く下落したことに実質的につながっています。しかし、ベンチャーキャピタルの資金はまだ、EU離脱の影響を恐れて止まっているわけではありません」と彼は語った。

とはいえ、多くのテック企業は、他の投資・金融業界と同様に、不確実性がビジネスにとってマイナスであることには同意している。

これは、オズボーン大臣が「イギリスは今でもビジネスの扉を開いている」と繰り返し主張している理由を上手く説明している。

この国のテック業界のハブであるテック・シティUKの最高経営責任者、ジェラルド・グレッチは、大臣の主張に賛同し、その将来をさらに明確にするよう求めた。

「今後2年間にEUとの交渉期間があります。それがどう転んでも、イギリスはイノベーションとアントレプレナーシップの最前線に立ち続けます。問題解決の精神を持ったテック業界は、その中核を成すと確信しています」と彼は話した。

専門家もこれに賛同している。ロンドンやイギリスのテック業界は、EU離脱を生き延びるだろうが、将来的にどのような形になるのかは、不透明な状況だ。

Simon Neville is business editor at BuzzFeed UK and is based in London.

Simon Nevilleに連絡する メールアドレス:simon.neville@buzzfeed.com.

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