二丁目に馴染めなかったゲイは、どこで出会えばいい?

    「好きな人ができたとしても結ばれる可能性は限りなくゼロ」地元で絶望感を感じて上京したゲイ男性。二丁目にも自分の居場所を見つけられない時、どうすればいいのか。

    ゲイの出会いの場と聞くと、多くの人は新宿二丁目などのゲイバーを想像するかもしれない。また、ゲイ向けのデートアプリを使う人も多い。

    そんな中、渋谷区にある株式会社リザライは、同性のパートナー探しを支援するユニークな「婚活サービス」を提供している。

    内容は異性愛者向けのサービスと変わらず、登録者の性格や好みを見ながらコンシェルジュが見合いの場をセッティングするというもの。これまでに約80組を超えるカップルが成立した。

    BuzzFeed Japanはそんな「ゲイ向け婚活サービス」を利用する3人に話をきいた。


    好きな人と結ばれる可能性は「限りなくゼロ」

    Tさん(30)は大学に進学するまでの18年間を地元・沖縄で過ごした。地元の学校ではもちろん、家族にもカミングアウトをしていない。

    「沖縄にいた頃は、将来的に男性と結ばれて暮らしていく未来は描けてなかったです。自分自身がゲイということにどこか嫌悪感を感じてました。

    人には言えないし、認められるわけでもない。好きな人ができたとしても結ばれる可能性は限りなくゼロという感覚があって、自分はずっと一人なんだろうなと思っていました。絶望感の方が大きかったです」

    そんな「絶望感」が薄れていったのは、上京後、友人にカミングアウトできるようになってからだ。

    女性の友人と宅飲みをしている時に、話の流れで自身がゲイであることを打ち明けた。Tさんの予想を裏切り、友人の反応はあっさりしたものだった。

    「彼女はレズビアンの友達がいたので、当事者に慣れていたのかもしれません。それから少しずつ色々な人に話せるようになりました。

    言えば言うほど気が楽になるんですよね。みんなと普通に話ができるようになってからは、自分の中の不幸感はなくなっていきました」

    二丁目とアプリで感じた、2度目の絶望感

    東京で希望を持ち始めたTさんは、同性のパートナーを探し始めた。国内最大のゲイコミュニティ、新宿二丁目にも足を運んだ。

    「二丁目は、20代の時にレズビアンの友人に連れて行かれたのが最初で最後でした。お酒を飲んでみんなでワイワイ騒ぐ場の雰囲気が、当時の自分に合わないと感じて、それっきりです」

    沖縄では使えなかったゲイ男性向けのデートアプリを使って、何人かとデートもしてみたという。

    「職場や学校で自然と出会うことはほぼありませんから、デートアプリも使いました。

    アプリでメッセージをしてる時はいつも楽しいんですが、会うと自分と相手のモチベーションが違うと気づかされるんです。

    こちらは真剣なお付き合いをしたいと思っていても、相手は気楽な関係性のためにアプリを使っているということがあって。突然、身体の写真を送りつけられることもありました。

    そういうことが続いて、やっぱり自分にはアプリでの出会いは難しいのかなと。20代後半はもういいやって感じになってしまって、それまでに持っていた出会いのモチベーションが落ちてしまいました」

    アプリや二丁目での出会いが難しいと感じる一方で、Tさんは自身と同じような人もいるはずだと思った。メディアやSNSで見る華やかな姿とはちがう、自分のような当事者の存在があるはずだと。

    「出会ったことはないけど、自分のようなタイプの人もどこかにはいるんだろうとずっと思っていました。

    お互いに真剣な出会いを求めていても、自分もその人もそれを表に出せないままでは、会うのは難しい。

    いると分かっていても、出会い方が分からなかったんです」

    偶然見つけた「婚活」という選択肢

    それでも、30歳になってからTさんの心境が変わった。

    「30歳になったのをきっかけに、このままじゃダメだなと思い始めました。このままだと、誰ともお付き合いせず、ずっと同じ状況なんだろうなと」

    そしてTさんは新宿二丁目以外のゲイバーに行くようになった。バーで知り合った男性と仲良くなり、デートの約束をした。真面目なお付き合いができるかもと思った。

    大きな期待を寄せた初デートに、彼は現れなかった。

    「その話を友達に愚痴っていたら、友達は『男性同士の婚活サイトみたいなものはないのか』って言ったんです。

    その時は自分も、そんなものはないだろうって思ったんですが、 その場でググってみたらあったんですよね。その勢いですぐに登録をしました。落ち込んでないで、すぐ次に行こうと思って(笑)」

    担当のコンシェルジュはTさんに対し、相性の良さそうな登録者を毎月紹介する。

    「最初の面会は緊張しました。上手くいくかどうかは別として、お互い真剣な関係を求めているという同じモチベーションがあるのは良いなと思いました」

    パートナーシップ制度で「家族みたいなもの」になれれば

    インタビューの最後に、パートナーとの理想のゴールについてきくと、現時点では結婚にはあまりこだわっていないと言う。

    「でも同性パートナーシップ制度もあるので、一緒に住んで、家族みたいなものになれたら一番理想かなと今は思っています」

    「同性パートナーシップは婚姻制度に向けた一歩として、良い制度だと思います。僕の地元でも認められているのですが、パートナーができて一緒に帰って暮らす事があっても、制度を利用できるのは安心感がありますよね。

    これから良いパートナーに出会えたら、カミングアウトして、沖縄の家族にも紹介出来たらいいなと思っています」


    メディアではセクシュアリティに関してオープンなLGBT当事者が注目される。しかしその一方で、二丁目のカルチャーに馴染めなかったり、地方在住でカミングアウトや出会いの難しさを感じている人も少なくない。

    多様化するLGBT向けのデートアプリやお見合いサービスは、そうした当事者の受け皿を増やしつつある。

    取材協力:株式会社リザライ

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