Amazonの偽レビューがうざすぎて、「レビュー判定アプリ」を作っちゃった話

    ネット通販のAmazon(アマゾン)では、金品と引き換えに高評価を集める「サクラレビュー」の問題が深刻化している。レビューが本当に信用できるのかを判断するアプリの開発者に話を聞いた。

    ネット通販大手、Amazon Japanは7月に行なわれた会員向けセール「プライムデー」で「史上最大規模の注文数」を達成したと発表した。Amazon好調の影で、近年問題視されているのが、蔓延するサクラレビューだ。

    サクラレビューとは、金銭や物と引き換えに高評価のレビューを集めることだ。Amazonの利用規約に反する行為でありながら、レビューの売買はSNSのグループなどを使って日常的に行われている。中には「5つ星必須」の条件で商品を無償提供するものもある。

    カオス化するサクラレビュー市場

    BuzzFeed Japanのこれまでの取材では、中国に拠点を置くと見られる悪質なセラー、副業としての転売目的で協力する日本のレビュワー達の姿が浮かび上がった。

    中国・深センのAmazonセラーで働く日本人女性は、BuzzFeed Japanの取材に対し「現地のスタッフは、サクラレビューの買収も事業が軌道に乗るまでの必要悪だと考えているようです」と話す。

    また「最近は、中国のセラーが在庫を日本の倉庫から即時発送するのを良いことに、転売目的で在庫を買い占められる事例もありました」と言う。状況はさらに混沌としている。

    Amazonもこれを問題視し、規約違反のセラーに対する訴訟の他、関連するアカウントの一時停止や閉鎖などの対応をとってきた。しかし、悪質な事業者との攻防はいたちごっこの状態が続いている。

    サクラレビューをあぶり出す、レビュー判定アプリが誕生

    そんなサクラレビュー問題の対策アプリが国内で発表され、ユーザーの間で話題となった。Androidのアプリ「レビュー探偵」は、Amazonの個別の商品に対し、レビューの信頼度をアルゴリズムで判定するアプリだ。

    このアプリを開発したのは、自らもAmazonの「ヘビーユーザー」だというスタジオゴロリンさん。日頃からAmazonで商品選びをするなかで、偽造レビューのない商品を選ぶのを煩わしく感じていたという。

    「たくさんの商品を比較するタイプなので、“嘘を見抜く”という余計な作業が発生するおかげで商品選びにすごく時間がかかるんです。

    たまにだまされて買ったりもしました。高評価のUSBケーブルを5本買ったのに、1か月ですべて使えなくなったこともあります。

    お金の無駄もそうですが、到着までに待った2週間待ってすぐ壊れてしまったら、その時間は何だったんだと」

    スタジオゴロリンさんはそうした偽レビューの問題はAmazonの対策により解決していくだろうと考えていたという。しかし数年経っても、状況は悪化する一方だった。

    「僕の感覚と調査では特にここ2年くらいはもう目も当てられない位サクラと思われるレビューが増えています。

    ユーザーとしてたまにバグを見つけてAmazonに報告することもあったんですが、重要かつ凄く簡単な修正なのに半年~1年とかかかるんです。もしかしてサービス改善に十分なリソースがさけない理由があるのではないかと感じていました」

    そんなAmazonの動きを見るうちに「この問題は時間を待ってても解決しなそうだな」と思いはじめた。

    怒った勢いで、1日で作ってみた

    「ある日、いつものように買い物をしようとAmazonでレビューを何時間も眺めていたところ、あまりの時間の無駄さ加減に急に怒りがこみあげてきて『もー怒ったぞ!自動化してやる』と怒りながらレビューの判定ロジックを1日で適当にプログラミングしてみたところ、割といい感じになったんです。

    その勢いに任せて改善を1か月ほど重ねました。そんな感じで生まれたのがアプリの『レビュー探偵』です。

    実際は、しばらく自分だけで使うつもりで作って、とりあえずリリースしてみたという状況だったのですが、予想以上に早く周りの反応があって驚いています」

    アプリで一気に解決するのは「不可能」

    海外では既にReviewMetaやFakespotなど、偽レビューを判定するサービスがあり、日本版Amazonに対応する同様のサービスを望む声があった(現在、日本版Amazonに対応するブラウザ上のアプリは存在する)。

    スマホでかんたんにレビューをチェックできる「レビュー探偵」は、すぐに日本のAmazonユーザーに歓迎された。

    しかし、米国Amazonの偽レビュー問題がこれらのサービスの存在で解決できていないように、日本の状況も楽観視できるわけではない。スタジオゴロリンさんは、次のように考えている。

    「Amazonの対応は後手にまわっている感があるので、いったんどこかで売上やユーザー数の減少など、数字で顕著に現れたり、TVで連日取り上げられるくらいの騒ぎになったりするまで状況は変わらないような気がしています。

    私の意見ですが、不正の類を一気に排除するのは、不可能です。

    唯一の解決策は『不正作業にかかる手間に対して、利益が割にあわない状態を作ること』だと思っています」

    Amazon出店者からの応援・情報提供も

    「レビュー探偵」のレビュー判定ロジックは公開されていないが、数十のチェック項目があるという。

    アプリの配信後はAmazonの出店業者や団体などから応援の声が寄せられた。ネット上ではあまり書かれていない不正の詳細なロジックについてなど、情報提供もあったという。

    「実際の声を聴いて、ユーザーだけでなく真面目に運営している業者さんにとっても本当に本当に深刻な状況であることがわかりました。

    判定ロジックの仕組みはこれからも一番力をいれていきたいです」

    「レビュー探偵」に対し、早くもiOS版やWeb版のリリースを希望する声があがっている。どちらも対応を予定しているが、iOSのリリースを先行させる予定だ。

    取材の最後にスタジオゴロリンさんは「Amazonに対する批判的な意見が多くなってしまったかもしれませんが、基本的に大好きですし、これからもずっと使うつもりで愛をもってお話しています」と強調した。

    もちろん、レビューを買収するセラーの商品が必ずしも粗悪なわけではない。しかし、商品を選びの大きな障害となっているのは確かだ。