アマゾンで偽レビューが量産されている。 過去には大規模な訴訟も

    「偽レビュー」を投稿するのは、驚くほど簡単だ。

    世界最大のECサイト・アマゾンでは現在、商品の高評価レビューを獲得するための熾烈な競争が行われている。

    その中で問題視されているのが、手段を選ばない企業・個人による「偽レビュー」の投稿だ。

    BuzzFeed Japanは、レビュー獲得に躍起になり偽レビューを量産する企業や人々の姿を、数回に分けて報じていく。

    アマゾンで熾烈化する5つ星レビュー戦争

    先日、2年ほど使っていたイヤフォンが壊れてしまった。買い換えようとアマゾンで「イヤフォン」と検索してみたら、4000以上の検索結果が表示された。さて、どの商品を選ぼう。

    そんなときに私達が値段やブランド名などとともに意識するのが、他の購入者が投稿した商品レビューだ。

    情報通信白書によると、20代から60代を対象にした調査では、6割以上の人がインターネットショッピングにおいてレビューを参考にするという。

    競争が激化するアマゾン市場において、レビューの獲得は重要な戦略だが、良質なレビューを手っ取り早く集める方法がある。「レビューを買う」という方法だ。

    偽レビューの投稿は、驚くほど簡単だ

    アマゾンのレビューに関するガイドラインでは、報酬(商品の無償提供や割引も含む)を交換条件にレビューを投稿したり、させたりすることを禁じている。

    しかし実際には、SNSを使った商品レビュー募集や転売ビジネスが横行している。例えばFacebook上にはアマゾンの商品レビュー取引を目的としたグループが多数存在する。

    グループページには「商品を無料で提供するから、レビューを書いてほしい」という内容の投稿が次々と流れてくる。投稿するユーザーのほとんどは中国名で、英語や中国語で書かれた投稿もある。

    取引に必要なのはアマゾンのアカウントと、返金に必要なPaypalなどの口座だけ。取引で手に入れた商品は開封する必要もないので、そのまま転売することも可能だ。

    大量にレビューを買い集める企業の影

    Facebook上のアマゾンレビューのグループに入ると、複数のメンバーから、共通の商品を含むリストが送られてきた。

    そのリストを見ると、中国に拠点を持つとみられる特定の販売元の商品が多く含まれることがわかる。高評価レビューを大量に「発注」しているのだろうか。

    リスト内の商品の一つ、子供用のトラベル枕には、7月14日現在で23のレビューが投稿されている。そのうち17は5つ星のレビューだ。一見、評価の高い商品に見える。

    しかし、それらのレビューをつけたユーザーのレビュー履歴を確認したところ、6人が上述のリストにあった複数の商品、あるいは同販売元の類似商品に5つ星レビューをつけていた。

    それだけではない。他商品のレビューが全く無いユーザーも3人いたほか、2週間にスマートブレスレットを5つ購入するなど、購買行動が不自然なユーザーも複数みられた。

    BuzzFeed Japanは当該商品の販売元を含め、Facebook上でレビューを募集していると見られる8つの販売元にメールで取材を申し込んだが、現時点で返事はない。

    偽レビュー問題では、過去に大規模な訴訟も

    一般ユーザーが軽い気持ちで関与できてしまう偽レビューの投稿だが、過去にはユーザー個人も含め、法的措置がとられた事例がある。

    2015年には楽天市場がやらせのレビューを投稿したシステム会社に対し、約2億円の損害賠償を求め、結果的に1千万円の和解金を支払うこととなった。

    また同年、米アマゾンも偽レビューの投稿を斡旋したサイトと、投稿に関与した個人に対し訴訟を起こしている。

    アマゾンジャパンではこうした偽レビューの対策が追いつていないのが現状だが、一般ユーザーがレビューの真偽を判別するのは難しい。


    BuzzFeed Japanは、この問題について引き続き報じていく予定です。情報をお持ちの方は、担当記者までメール(shunsuke.mori@buzzfeed.com)にてご連絡ください。



    サムネイル画像:Elen11 / Getty Images