知ってほしい、あるヒーロー映画の予告編がなぜ、これほどまでに議論されているのかを

    この記事は映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』および『スパイダーマン:ホームカミング』のネタバレを含みます。

    「インフィニティ・ウォー」の衝撃

    「なんてことをしてくれたのですか!」――もし会うことが叶えば、そう問い詰めたい相手が私にはいる。

    その相手とは、ルッソ兄弟。今や世界的なエンターテイメント作品群となった映画『アベンジャーズ』シリーズの『インフィニティ・ウォー』そして『エンド・ゲーム』の監督を務める、アンソニー・ルッソ氏とジョー・ルッソ氏だ。

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    アンソニー・ルッソ氏(右)とジョー・ルッソ氏(左)。

    2012年に1作目が公開された『アベンジャーズ』シリーズ、そしてそれを内包するマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の始まりは、2008年公開の『アイアンマン』にさかのぼる。

    10年前、いわゆる“アメコミ“であるマーベル・コミックのヒーローたちは、今ほどには知られていなかった。

    マーベル・スタジオはコミックを原作とし、アイアンマンやキャプテン・アメリカ、マイティ・ソー、ハルクといったヒーローたちが同一の世界観の中で活躍する映画を世に送り出し、人々を魅了していった。

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    マーベル・スタジオ代表のケビン・ファイギ氏による挨拶。

    歳月を経て、MCUは自国以外でも多くのファンを獲得し、そこに新しいヒーローたちが加わっていく。

    『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)・『アントマン』(2015)・『ドクター・ストレンジ』(2016)・『ブラックパンサー』(2018)、そしてもちろん『スパイダーマン』(2017)も。

    作品数はこの10年で20を超える。こうした映画に興味がなくても、いずれかのヒーローの名前に聞き覚えがある人もいるのではないか。それ自体、大きなMCUの功績だ。

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    数々のキャラクターを生み出したマーベル・コミック原作者のスタン・リー。

    映画『アベンジャーズ』シリーズは、そんなMCUの中でも特別な存在感を放っている。単独作もあるヒーローたちが一堂に会し、一人では敵わない巨大なヴィラン(悪役)と戦い、打ち勝つ。

    アベンジャーズ2作目の『エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)まで、ある意味ではこの“イメージ通り”の展開と言うこともできた(MCU全体が徐々に込み入った展開になるきらいはあったものの)。

    それを根本から覆したのが、アベンジャーズ3作目(MCUとしては19作目)の『インフィニティ・ウォー』(2018)だった。ネタバレを望まない人は、ここで読むのを止めてほしい。

    ここからは、『インフィニティ・ウォー』を観て、あの苦しみを味わった人に向けて書いていく。

    ヒーローたちの「大敗」

    同作で描かれたのは、ヒーローたちの“大敗”だった。

    序盤からあっさりと失われていく人気キャラクターたちの命――『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)を経て成長したロキをあんな形で見送ることになるなんて――そして、終盤の怒涛の展開。

    強敵・サノスにより、ヒーローの半数が塵のようにバラバラと消え去る。あのビジュアルは『アイアンマン』に心を掴まれ、以来、MCUの新作を欠かさず鑑賞してきた私のようなそこそこのファンから言葉を奪うには十分だった。

    私が参加した試写会では、上映後、座席から立ち上がれずに泣きじゃくる人がいた。しかし、私はそれを大げさとは感じなかった。

    「何かの間違いだったのでは」と公開後にもう一度、観に行った。だが、感想は同じだった。

    「みんなやられちゃって、話す気になれない」。一緒に見に行った知人とは、肩を落として劇場近くの駅まで歩いた。

    特に、作品を重ねるごとに苦悩や迷いが増えていく古参のヒーローたちに比して、底抜けの明るさを見せてくれていた新鋭のヒーローたちが消滅したことが、私にはこたえた。

    例えば、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の主人公であるスター・ロード。彼にいたっては消滅した上に、敗因となる行動をしたキャラクターとして一部で名前が挙がる。

    古くから日本でも愛されたヒーローながら、権利の関係でこれまでMCUに参加できなかったスパイダーマンは、ソニー・ピクチャーズとマーベル・エンターテインメントが権利を分ける形で合意。ようやく『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年)からMCUに参加、アイアンマンらと共闘した。

    新進気鋭の俳優、トム・ホランドが演じるピーター・パーカーによってフレッシュにリブートされた新スパイダーマンシリーズの記憶も新しいうちに、ピーターもまたアイアンマンの腕の中でサラサラと塵になってしまったのだ。

    この映画は『アントマン&ワスプ』(2018)、『キャプテン・マーベル』(2019年3月)を経て、アベンジャーズ4作目の『エンドゲーム』(2019年4月)につながる。

    つまり、登場人物たちの多くを退場させた上で、その後どうなったかの説明はすべて、1年後のエンドゲームまで“おあずけ”にしたのだ(MCUは基本的に公開順が時系列であることが多いが、『エンドゲーム』までに公開される上記2作は『インフィニティ・ウォー』以前の出来事とされている)。

    試写会があった2018年4月24日、私はこんなツイートをした。

    最新作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の試写に行ってきました。感想は投稿OKとのことなのでこれだけ。「 #アベンジャーズ4観るまで死ねない 」です。まじで。来年までに不慮の事故とかに遭ったらどうしてくれるんだ監督。何が何でも生き残るぞ。 #アベンジャーズ #インフィニティウォー

    幸いなことに、私は今、最新作まであと数カ月というところまで生き延びた。

    しかし、この1年の心境を振り返れば、やはりルッソ兄弟に一言だけでも物申したい、と思うのは私だけではないだろう。

    「復活」説の根拠

    ファンが期待しているのはやはり、『エンドゲーム』でのヒーローたちの復活。その根拠の一つが、映画の公開予定だ。

    なんと、辛すぎる最期を迎えたはずのスター・ロードとスパイダーマンは、それぞれを主役とする続編が『エンドゲーム』後に公開予定なのだ。それも、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年7月)・『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3』(2020)と、立て続けに。

    『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』の原作コミックスのエピソードにもヒーローたちが復活する展開があり、そのため『エンドゲーム』での復活説は根強く支持されている。

    そうした事情を背景に、公開順で『エンドゲーム』直後の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の予告編に注目が集まったのは、当然のことだろう。

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    1月15日に公開され、24時間で1億3000万回の再生回数を達成したこの映像についての論点は一つ。「この映画は『エンドゲーム』後なのか、前なのか」ということだ。

    “特定班”ともいえるインターネットの猛者たちは、この予告編をくまなくチェックし、いくつもの謎を見つけ出した。

    主人公のピーターを始め、『インフィニティ・ウォー』で消滅したはずのキャラクターたちの登場。

    「年号」のないピーターのパスポート。

    ピーターのメンターだったトニー・スタークの不在(『エンドゲーム』の予告編で、彼は消滅こそしないものの、宇宙を漂流している)。

    そして製作者不明の新スパイダースーツ。

    海外版ティザーポスター

    『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の海外版ティザーポスター。

    これらの謎はさまざまな予想を生み、ファン同士の絆を深めた一方で、時系列を解明できるものではなかった。

    最初からわかっていた(けれど受け入れられなかった)ことだが、『エンドゲーム』の結末は、『エンドゲーム』公開まで明かされることはない。したがって、ヒーローたちがその後、どうなったかはまだわからない。

    しかし、ファンの心を落ち着かせてくれる見解や情報も、あるにはある。

    MCU世界の中で死が確定した後で、その人物が主役の映画を公開するか――希望的観測で言えば、答えはノーではないか。

    また、製作者サイドからのリークも存在する。例えば、マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギ氏は、IGNのインタビューに「『ファー・フロム・ホーム』の舞台は、『エンドゲーム』の後に設定されている」と述べた。

    また、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントのエイミー・パスカル氏も、FANDOMのインタビューに「『アベンジャーズ4』の物語が終わった、その数分後から始まる作品」と明かしている。

    しかし、当然これらは、公式の情報とは言えない。

    「卒業」に向き合う時間に

    『エンドゲーム』、そして『ファー・フロム・ホーム』公開まで、私たちにできることはあるだろうか。

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    『エンドゲーム』予告編。トニー・スタークは宇宙を漂流している。

    一つは『キャプテン・マーベル』を観に行くことだろう。『アントマン&ワスプ』同様に、作品中やエンドロール後に、MCU世界の“今”についてのヒントが隠されているかもしれない。

    もう一つは「健康管理」だ。

    決して、ふざけているわけではない。私がツイートしたように、万が一、残り数カ月で命を落とすようなことがあれば、死んでも死にきれない。

    とはいえ、この1年は悪いことばかりでもなかった。『インフィニティ・ウォー』の衝撃は、私にとって、今後のMCUの見守り方を見直すきっかけになったからだ。

    『エンドゲーム』の結末がどのようなものであれ、『ファー・フロム・ホーム』の時系列がいつであれ、これまでも10年以上、続いてきたように、これからもMCUは続いていくだろう。

    新しいヒーローの登場が起こり得るように、以前からのヒーローの卒業も起こり得る。『インフィニティ・ウォー』で消滅してしまった古参の登場人物は、復活するかもしれないし、しないかもしれない。

    同様に、消滅を免れたヒーローたちも、宇宙を漂流しているトニーのように、依然として窮地に陥っている。そこから抜け出せずに、あるいは新しい窮地を迎え、卒業ということもあり得るのだろう。

    悲しくはある。しかし、長く続く作品において、入れ替えは必然だ。時間をかけて、私はようやく、そう思うようになった。

    願わくはMCUの作品群が、これからも多くの人たちを――私がそうされたように――魅了してくれることを。

    そんなことを考えながら、私は元気に4月26日を迎えるために、今日も日課のランニングをこなしている。

    Contact Seiichiro Kuchiki at seiichiro.kuchiki@buzzfeed.com.

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