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体罰・暴言で子どもの脳が「萎縮」「変形」 厚労省研究班が注意喚起

「愛の鞭(むち)」のつもりが「虐待」になることも。

一見、子どものしつけに効果がありそうな「体罰」と「暴言」。しかし、それは恐怖によって子どもをコントロールしているだけ。

子どもは「なぜ叱られたのか」を理解できていないかもしれない。また、最初は「愛の鞭」のつもりでも、いつの間にか「虐待」へとエスカレートしてしまうこともある。

危険なのはそれだけではない。厚生労働省は5月15日、全国の自治体に子どもへの「体罰」「暴言」の影響をまとめた資料を周知した。

厚生労働省の研究班による資料「愛の鞭(むち)ゼロ作戦」によれば、体罰や暴言により、子どもの脳に「萎縮」や「変形」が起きること、親子関係の悪化や精神的な問題が起きやすいことが、国内外の研究で明らかになっているという。

例えば、福井大学子どものこころの発達研究センター教授・友田明美医師は、子ども時代に辛い体験をした人の脳の変化を指摘している。

友田医師の研究によれば、厳しい体罰により、前頭前野(社会生活をする上で非常に重要な脳の部位)の容積が19.1%減少し、言葉の暴力により、聴覚野(声や音を知覚する脳の部位)が変形していた。

また、約16万人分のデータに基づき、親による体罰を受けた子どもと、受けていない子どもの違いを分析した研究もある。

このグラフによれば、親による体罰を受けた子どもは、「親子関係の悪化」「精神的な問題の発生」「反社会的な行動の増加」「攻撃性の増加」などの「望ましくない影響」が大きい。

資料では、他にも親による「愛の鞭」を防ぐテクニックや、親自身が助けを求めるための方法が紹介されている。

BuzzFeed Newsが取材した厚労省の担当者によれば、この資料は2016年5月の児童福祉法改正の附帯決議を受けて作られた。「今後、自治体や関係機関・団体などを通じて、広く国民に対する意識啓発に活用していく予定」という。

背景にあるのは、親による体罰・暴言の危険性への理解度の低さだ。過去には「親による体罰」に「賛成」「どちらかといえば賛成」と回答した人の割合が6割を超える調査もあった。同担当者は次のように話す。

「“子どものしつけには体罰が必要”という誤った認識・風潮を変えることができれば、児童虐待の予防にも大きく寄与する。この(資料の)ような科学的な知見を広く国民に普及・啓発するとともに、子育て世代に対して体罰によらない育児を実践するための支援を推進していきたい」