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ある本「99%の医者は自分に抗がん剤を使わない」→「そんなわけない」と医師ら反発

同時期の読売新聞「医師の25%抗がん剤に消極的」→「なぜ“75%は積極的”じゃないの?」

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『医者は自分にどんな「がん治療」をとる? 99%が抗がん剤を使わず』というセンセーショナルな見出しの記事に、医師らから批判の声が上がっている。

掲載されているのはライブドアニュースで、ライフハック情報サイトの『ライフハッカー』から配信されたもの。公開日は2015年11月13日となっている。

*7月10日追記:ライブドアニュース上の記事は7月6日に削除された。また、ライフハッカー編集部によれば、同サイト上の元記事は2015年11月13日の公開日に「内容についての指摘を受けて」削除したという。同サイト編集部は「当時、外部配信先の削除を怠ったことにより、情報拡散をとめられなかったことについては責任を感じております。現在は厳格な基準を設けており、再発防止に努めております」とした。

公開時点でも多数シェアされていたが、6月12日にあるTwitterユーザーが“自分が拒否する治療を患者には勧める不思議。”とコメントしたことで再度拡散された。

しかし、これにTwitter上では医師らが反発。記事の信頼性を疑うコメントが相次いでいる。

んなわけないだろ

医者は自分にどんな「がん治療」をとる? 99%が抗がん剤を使わず #ldnews https://t.co/Id6MSj48jx んなわけないだろ

何も勉強しない、時代の進歩についていけない思い込みだけが激しい医師

医者は自分にどんな「がん治療」をとる? 99%が抗がん剤を使わず #ldnews https://t.co/csPL5BOo2Z きっとこの周りの医師はそうなのかも 何も勉強しない、時代の進歩についていけない思い込みだけが激しい医師 いやとんでもでもうけたいだけの医師?

「99%の医者は自分に抗がん剤を使わない」にはどのような根拠があるのか。記事の内容を確認してみると……。

まず、この記事は“西洋医療と相補・代替治療を組み合わせた”医療に携わってきた川嶋朗医師が執筆した書籍『医者は自分や家族ががんになったとき、どんな治療をするのか』(アスコム)の書評であることがわかる。

そして、この記事では、「99%の医者は自分に抗がん剤を使わない」ことの根拠が、この書籍のまえがきを引用して次のように紹介されている。

私の知人が国内外の医者271人に「あなたやあなたの家族ががんになった場合、抗がん剤を使用しますか?」と尋ねたところ、なんと270人が「絶対に拒否する」と答えたそうです。(中略)「99%」というのは、驚異的な数字です。(「まえがき」より)

書籍の中ではもう少し具体的に説明されていた。実際に確認してみると、これは、“末期の腎臓がんを乗り越えた経験のある”寺山心一翁氏が、“数年前、 国内外の医者に対し、匿名を条件に”行なった調査に基づくものだった。

また、寺山氏の公式サイトでは、寺山氏は48歳のときに患ったガンについて“ガンという=自分に愛を送ることで、自然治癒力が働き、病は姿を消したようでした”と言及している。

このような情報を元に「99%の医者は自分に抗がん剤を使わない」としたのであれば、伝聞で、詳細のわからない調査を元にした情報ということになる。別の医師はこうコメントした。

医師271人に「自分がガンになったら抗がん剤治療をするか?」と質問したら、270人ぐらいは「がん腫や病期による」と聞き返すと思います。

ほぼ同時期の6月9日、読売新聞の『自分が患者なら…医師の25%抗がん剤に消極的』という記事も話題になっていた。

この記事は大森赤十字病院・外科部長の佐々木慎医師がまとめた調査結果によるもの。

東京都と神奈川県でがん治療を行う大規模病院計5施設を対象に実施し、「胃がん患者になったと仮定した場合」の抗がん剤治療に対する考え方などについてのアンケートに、医師53人・薬剤師29人の計82人が回答した。

「受けたくない」「限定的なら受けても良い」と消極的な回答をしたのは21人(25.6%)。理由は「根治しない」「時間が無駄」「延命を望まない」「副作用がつらい」だったという。

この結果について、記事では「医療関係者の本音が表れた形だ」と述べられている。

一方、この記事にも、医師らから「75%が積極的という表題にならないのはなぜか」「回収率、医師と薬剤師の差は」との疑問の声が上がっていた。

「医者は自分に抗がん剤を使わない」と誤解される可能性のある記事を、一般の読者はどう捉えるべきか。BuzzFeed Newsはコメントした医師に話を聞いた。

『「ニセ医学」に騙されないために』(メタモル出版)著者であり、インターネット上の医療情報を検証する内科医のNATROM氏は、BuzzFeed Newsの取材に次のように回答した。

「抗がん剤を使うかどうかは、がんの種類や状態、患者さんのパフォーマンスステータス(*)や価値観によるため、ひとくくりにはできません」

*全身状態の指標のひとつで、患者の日常生活の制限の程度を示す。

また、「最近の抗がん剤治療は、効果も副作用対策も進歩している」ため、自分だったら「標準医療の抗がん剤治療は受けます」とした。家族などの場合は、「その家族自身が適切な情報提供を受けた上で決めます」(NATROM氏)

家族から助言を求められたら「標準治療であること」「年齢や病状を考慮」した上で助言をするため、「概ね、主治医の意見と似たようなものになる」という。では、身の回りに専門家がいない場合は、どうすればいいのか。

NATROM医師は、まず「がん種や病状は千差万別なので、抗がん剤を受けるかどうかという重要な判断は、あなたの病状をよく知る主治医とよく相談した上で行う」ように注意を促した。

「主治医に対して“もし先生が私と同じ病状なら、先生は抗がん剤治療を受けますか?”と質問をするのはいい方法だと思います」

また、抗がん剤は進歩が早いため「このような記事はすぐに古くなります」とNATROM医師。

「たとえば、今後数年の間に進行胃がんに対するよい薬が承認され、数年後に“読売新聞の記事”と同じ調査をしたら違う結果になるかもしれません。その意味でも主治医に聞くのが一番です」


Seiichiro Kuchikiに連絡する メールアドレス:seiichiro.kuchiki@buzzfeed.com.

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