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「うそや大げさな表示」の医療機関ウェブサイトは、誰でも通報できる

厚生労働省が「医療機関ネットパトロール」を開始。どこに何を通報すればいい?

厚生労働省は8月24日に「医療機関ネットパトロール」を開始したと発表した。

これは医療機関のウェブサイト上の虚偽・誇大広告を取り締まる目的でおこなわれるもの。

「うそや大げさな表示」がなされている医療機関のウェブサイトがないか、厚労省に委託された日本消費者協会が監視する。

不適切な表現には日本消費者協会が修正を求め、従わない場合は自治体による改善指導につなげる。

自治体による指導後には、ウェブサイトが改善されたかどうかの追跡調査もおこなうという。

また、厚労省は一般のネット利用者にも情報提供を呼びかけ、専用サイトの通報窓口や電話番号(03-3293-9225)も開設した。

今回、通報の対象になるのは、厚労省の『医療広告ガイドライン』『医療機関ホームページガイドライン』違反の疑いがあるウェブサイト。

ウェブサイトはネット利用者が能動的に訪問するため、チラシや看板のように受動的に目に入る広告と区別され、規制の対象外だった。

しかし、美容医療サービスについて消費者トラブルの相談件数が増加していることなどから、今年6月に成立した改正医療法では規制の対象になっている。

先述のガイドラインでは「絶対安全な手術」「がんが消える」などが禁止表現とされている。

そもそも、医療に関する広告が規制されるのはなぜか。医療機関ネットパトロールを管轄する厚労省医政局の担当者はBuzzFeed Newsの取材にこう回答する。

「医療は人の生命・身体に関わるサービスです。不当な広告により一般の方が誘引され、不適当なサービスを受けた場合の被害は、他の分野に比べ著しいと考えられます」

「また、医療は極めて専門性の高いサービスでもあります。広告を見る側に医学知識がないと、提供されるサービスの質を事前に判断することが非常に困難です」

同担当者によれば、医療機関のウェブサイトで禁止されるのは、主に以下のような広告だ。

「虚偽、または客観的事実だと証明できないもの」「他との比較により自らの優良性を示すもの」「事実を誇張、または過度に強調するもの」「科学的な根拠が乏しい情報に基づき、国民・患者の不安を過度に煽るもの」

例えば、ウェブサイト上の「絶対安全な手術を提供」といった文言は禁止。「絶対安全な手術」というものは存在しないため、虚偽(うそ)となるためだ。

また、施術効果を示すために、画像をPhotoshopなどのソフトで加工・修正することも虚偽となる。

虚偽広告は、患者が適切な受診機会を失ったり、
不適切な医療を受けるおそれがあることから、罰則つきで禁止されている。

直接的な宣伝だけでなく、暗示的や間接的に「医療に関する広告である」と一般の人が認識し得るものも規制の対象だ。

例えば「がんが消える」は「がんが治る」ことを暗示している。治療の効果は本来、広告可能ではなく、誇大広告にも該当し得るため、認められないという。

また、保険適用でない、いわゆる「免疫細胞療法」などの自由診療については、以下のことを記載しなければならない。

「自由診療をおこなう医療機関の広告に限っては、通常必要とされる治療内容、費用、治療のリスク・副作用などをウェブサイトに記載していただくことが、ガイドラインに明記されています」

事業者は他にも、医療法だけでなく、医薬品医療機器等法(薬機法・旧薬事法)や景品表示法、健康増進法、不正競争防止法などの法令も遵守する必要がある。

「リスティング広告」「リターゲティング広告」など進化するネット広告も対象。

先述のガイドラインでは、ウェブサイトやインターネットならではのテクニックについても言及されている。

例えば、病院などのウェブサイトのURLに“www.gannkieru.ne.jp”(gannkieru=がん消える)とある場合も、やはり治療効果を暗示させるため、認められない。

メールアドレスも同様に、“nolhospi@xxx.or.jp”とあった場合、nolhospiがNo.1 Hospital、つまり日本一の病院を連想させ、比較広告となり認められない。

さらに、最近のネット広告では、ネット利用者の行動などから情報を得て、個別に広告を勧めるシステムが発達している。

BuzzFeed Newsでも、健康食品のネット広告について、「がん」と検索した利用者につきまとう広告の問題を、消費者庁や厚労省を取材し、指摘した。

このような広告、例えば「リスティング広告」や「リターゲティング広告」と呼ばれるものについても、ガイドラインで規制の対象になり得るという。

「患者の受診などを誘引する意図がある(誘因性) 、医業もしくは歯科医業を提供する者の氏名・病院などの名称が特定可能である(特定性)、一般の人が認知できる(認知性)の条件を満たせば、医療に関する広告と認められます」

これまで、インターネットの広告においては、技術の発達が先行し、行政機関が把握しきれていない経緯があった。同担当者は「規制だけでなく、監視も必要だということで、このような取り組みが始まった」と説明する。

「ウェブサイトによっては“これは広告ではありません”などと記載されている場合もありますが、重要なのはそれを見た一般の方がどう感じるか。気になるウェブサイトを見かけたときは、ぜひ通報してください」

禁止されている表現について、他にもさまざまな具体例を交えて詳しく説明している厚労省のガイドラインはこちら(『医療広告ガイドライン』『医療機関ホームページガイドライン』)。

BuzzFeed JapanNews