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医療法改正のウェブサイト規制「Twitterやブログも対象にする方針」 範囲めぐり議論

厚労省は「バナー広告やリスティング広告、病院の口コミサイト(特に、ランキング形式のアフィリエイトサイト)も規制の対象になり得る」との見解。

これまで、実質的に医療法上の「無法地帯」となっていたインターネットの医療広告について、厚生労働省が規制への取り組みを始めている。

6月14日に公布された改正医療法(医療法等の一部を改正する法律)では、広告規制の対象が「広告その他の医療を受ける者を誘引する手段としての表示」とされた。

対象となるのは、医療機関のウェブサイト、メルマガなど。10月4日に開催された厚労省の『医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会』では、他にもいくつかの候補が示され、議論された。

具体的には、バナー広告やリスティング広告(*)、そして「医療機関のTwitterアカウント」。また、病院の口コミサイト(特に、ランキング形式のアフィリエイトサイト)も規制の対象になり得るとの見解が、厚労省から示された。

*GoogleやYahoo!などの検索エンジンにおいて、ネット利用者がある検索ワードで検索したときに、その結果に連動して表示される広告。検索連動型広告ともいわれる。

規制のポイントは「誘引性」と「特定性」。わかりやすく言えば「医療機関が患者を呼び込もうとしていて」「その医療機関を特定できるようになっている」かどうかだ。

ウェブサイトが「無法地帯」になっていたわけ

そもそも、なぜ、ウェブ上の医療広告が医療法上、「無法地帯」になっていたのか。それは、従来の医療広告の要件に「誘引性」「特定性」の他、「認知性」があったからだ。

認知性とはつまり、一般の人が「受動的に」医療広告に接するかどうかの基準。これまで、テレビCMや看板、折り込み広告は、内容に興味がなくても目に飛び込んでくることがあるため、規制の必要がある、という考え方だった。

この考え方に立つと、患者が自ら情報を求めて「能動的に」たどり着くウェブサイトは、規制の対象外になる。

しかし、最近は医療に関する情報を提供するウェブサイトなども、受診を検討する人の重要な情報源になっている。その中には「国民の健康を守る上で、目に余る広告もある」(同検討会に出席した日本医師会常任理事の石川広己氏)。

また、同検討会に出席した消費者機構日本の常任理事・福長恵子氏は、かねてから問題になっていた、美容医療サービスに関する消費者トラブルの相談件数の増加を指摘した。

改正医療法で「認知性」が規制の要件から除かれたのは、このような経緯からだ。

改正医療法の施行には、公布から1年以内、つまり遅くとも来年の6月までに省令を策定しなければならない。今回の検討会は、省令及びガイドラインの方向性や、具体的な内容を議論するための場だ。

同検討会では、医療機関のウェブサイトが改正医療法の規制対象になることが、あらためて確認された。

さらに、厚労省は「バナー広告」や「リスティング広告」、「アフィリエイト広告」など、情報の掲載により費用が発生しているものは、誘引性が証明しやすく、やはり規制の対象になるとの見解だった。

また、厚労省担当者によれば、前述した誘引性や特定性の要件を満たせば、医療機関のTwitterやブログなども規制の対象になり得るという。

それでも、ネット上の膨大な量の情報を、どう監視するのかという問題は残る。同検討会に出席した栃木県保健福祉部医療政策課長の國井隆弘氏は、実際に取り締りをおこなう地方自治体の立場から次のように述べた。

「SNS等の監視までわれわれ(都道府県)が責任を負うというのは、難しいのではないかと思う」

「適切な選択の支援」と「利用者保護」のバランス

医療法による規制には、「広告可能事項」による制限と「広告禁止事項」による制限がある。テレビCMなどでは、前者により、広告可能な内容が厳しく定められている。

今回、ウェブサイトについて、厚生労働省からは、広告可能事項による制限をしない方針が提案された。その上で、何を広告禁止事項とするかが、今後議論される予定だ。

例えば「術前術後」の写真などの掲載。厚労省からは、これを禁止事項とする提案があった。ガイドラインにより、効果に関する事項は現在、広告可能となっておらず、撮影条件の変更・加工は禁止されているためだ。

しかし、これには複数の出席者から「乳がん手術後の乳房再建術では、患者にとって手術後の見た目は治療を選択する上で必要な情報」との異論が続出した。

一方「客観的事実が証明できない事項」、例えば「難病の治療で、海外では承認されているが、日本では承認(効果が証明)されていない薬」は、現行のガイドラインでは記載できない。

そのため、厚労省は「客観的事実が証明できない事項」を広告禁止事項に設定しない、という方針を提案した。

しかし、これでは昨今、問題になっている、保険適用外の「効果が証明されていない免疫細胞療法」のような治療の紹介が許容されてしまうのではないか、との懸念がある。

ただし、改正医療法では、従来の「虚偽」だけでなく、誇大な広告なども禁止している。そもそも、虚偽・誇大広告は景品表示法や健康増進法でも規制の対象であり、内容によっては医薬品医療機器等法(薬機法・旧薬事法)にも抵触する。

厚生労働省としては、客観的事実が証明できない情報のうち、虚偽および誇大な広告については、上記の条文や関連法案により、規制したい考え。

改正医療法上、ウェブサイトに虚偽の情報があれば直接罰が設定されており、虚偽・誇大のおそれがあれば立入検査や中止・是正命令をすることになる。

問題があるサイトについては、厚労省は「医療機関ネットパトロール」事業を実施している。8月24日の事業開始から9月末までに、279件の審査をしたという。問題のあるサイトについては、通知等をおこなう予定だ。

このネットパトロールには誰でも通報できる窓口がある他、消費者庁も電話番号「188」でホットラインを設定している。不審なサイトを発見した場合、これらの窓口に連絡することが可能だ。