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がん治療や美容整形のネット広告に法令違反のおそれ 厚労省見解と乖離する実態

自由診療のバナー広告には「公的医療保険が適用されない旨」「標準的な費用」の記載が必要との見解を厚労省が示したが、実態は追いついていない。

6月1日の改正医療法施行後、インターネット上の多数の広告が、違法と判断される可能性のある状態で掲載されている。厚生労働省がBuzzFeed Japan Medicalの取材に対し、見解を示した。

厚労省、そしてインターネットの広告事業者が加盟する一般社団法人日本インタラクティブ広告協会(JIAA)を取材した。

何に「違法と判断される可能性」があるのか

医療機関の悪質なネット広告から、利用者を守るために改正された医療法。しかし、利用者保護に不可欠な事項が、今もなお、記載されていない。

厚生労働省によると、医療機関のバナー広告(リスティング広告を含む)について、自由診療を広告する場合は「公的医療保険が適用されない旨」「標準的な費用」の記載が必要だという。

公的医療保険は、基本的に効果が証明された治療に適用される。一方、公的保険が適用されない自由診療には、効果が証明されていないものがある。これを明記することは、利用者の選択を助ける。

さらに、自由診療は内容や費用が医療機関ごとに大きく異なるため、標準的な費用など、その内容を明確化し、料金などに関するトラブルを防止することが必要とされていた。

一方、実態はかけ離れている。自由診療に該当する多くのがん治療や美容整形などのバナー広告・リスティング広告には、これらの記載がない。取り返しのつかない選択のための情報にも、違法のおそれのある広告が並んでいるのが現状だ。

高額「治療」を売り込むネット広告の現状

改正医療法が施行されて約半年が経過した11月21日時点。ノーベル賞受賞で話題になったがんの「免疫療法」のキーワードの検索結果には、高額治療を売り込む医療機関の広告が並ぶ。

これらの「治療」はすべて自由診療。自由診療で提供されるがんの免疫療法については、有効性が証明されていないものがあるとして、国立がん研究センターが注意喚起をしている。また、全額自己負担になるため、費用も高額になる。

しかし、「公的医療保険が適用されない旨」、つまり自由診療であると記載されているのは4つのうち1つだけだ。

費用については、1つに「初診20,000円」の記載がある。しかし、リンク先を確認してみると、治療費の例として「194,400円」という数字が挙げられており、初診料とは開きがある。広告の記載が「標準的な費用」とは言えない。

「抗がん剤に耐えられない、他の治療を探している方」「ステージ4対応」「あらゆるがん腫に対応」「心と体にやさしい希望」などの謳い文句が記載されているが、これらは違反広告に該当するおそれがある。

美容医療広告の実態も法改正と開き

今回の医療法改正は、そもそもトラブルの絶えないネット上の美容医療サービスの広告について、消費者保護をすることを目的としたもの。

現状はどうか。調査してみると、自由診療に該当する具体的な美容医療の手術についても、必要な記載のない広告が複数、確認できた。

「二重 整形」の検索結果に表示される広告に、「公的医療保険が適用されない旨」の記載があるものはない。費用の記載も4つ中2つにしかなかった。

広告主・事業者は旧ルールの運用を続行

厚労省の見解は、6月1日に施行された改正医療法の医療広告ガイドラインに基づく。

前述の見解を示した厚労省医政局総務課は「個別のケースについては、都道府県の判断となりますが、公的医療保険が適用されない旨、および、標準的な費用を記載していない場合、医療法関係法令に違反する可能性があります」とする。

同ガイドラインには、広告違反には行政指導や行政処分などの指導および措置が、各都道府県などによりおこなわれるとの記載もある(医療広告ガイドライン P33-34参照)。

なぜ、ガイドライン違反の恐れのある広告が、表示されたままなのか。その理由は、医療法上のバナー広告について、取り扱いが変遷してきた経緯にある。

改正医療法の施行前、「バナー広告とリンク先の医療機関ウェブサイトは一体的に取り扱う」こととされていた。

そこで、ネット広告事業者は広告主に対して、自由診療について「公的医療保険が適用されない旨」「標準的な費用」の項目は、バナー広告かリンク先のウェブサイトのどちらかに記載があればよい、というルールを定めていた。

しかし、今回の医療法改正に伴い発表された医療広告ガイドラインQ&Aでは、バナー広告もリンク先のウェブサイトも、それぞれが医療広告として判断される、という方針が示されている(医療広告ガイドラインQ&A 1-7参照)。

このことから、バナー広告自体にも「公的医療保険が適用されない旨」「標準的な費用」の記載が必要になると判断できる。しかし、同ガイドラインやそのQ&Aに明記はされていなかった。

そこで、事業者や広告主は「どちらかに記載があればよい」という運用を続行していた。厚労省も、バナー広告について現状を把握しきれていなかった。

業界団体は「法令を遵守し、適正化していく」

ネット広告事業者の業界団体である一般社団法人日本インタラクティブ広告協会(JIAA)は、ガイドライン違反のおそれのある広告が、加盟社の媒体に掲載されている可能性について「法令を遵守し、適正化していくべき」と回答する。

「医療法の改正については、厚生労働省様からの通知に基づき、会員にも周知しています。法改正時、解釈が十分でないことはあり得るので、見解が示されたのなら、私どもでも確認し、それに準じた対応を加盟事業者に促していきます」

自由診療についての広告ルールについては「会員からの疑問も上がっていた」が、「法の運用規則は徐々に明らかになっていくことが多いので“規制動向を注視しましょう”という状況だった」(同会担当者)という。

「法改正後、起こり得るすべてのことを予測するのは難しく、今はまさに過渡期にある状況です。法に抵触している状況があったとしたら、今後、広告審査の運用ルールを変えていく、ということになるでしょう」

「法的には広告ルールを確認し、法令を遵守する責任は、まず広告主にある」と同担当者。しかし「消費者を保護し、媒体価値を毀損しないために、広告事業者も自ら適正化を図るべきである」という。

「ですので、広告事業者としては新たに法に沿ったルールを加え、それに則って審査する。そしてそれが遵守されていない場合には広告主に修正を促すか、広告の掲載を中止するというのが本来的な対応になります」

担当者によれば、過去には貸金業法の改正時に、貸付条件を広告する場合に表示義務事項をすべて広告面に記載しなければならない、というルールが改めて明らかになったことがある。

その際には、スペースが限られた広告面にそのすべてを記載できないことから、それまで出稿されていた利率を記載しただけのバナー広告やテキスト広告は出稿できなくなった経緯があるという。

ネット利用者にもできることがある。違反のおそれのある広告を発見したら、誰でも厚生労働省委託事業の医療機関ネットパトロールに通報が可能だ。

また、各医療機関を所管する地方自治体や保健所に相談することも、前述の医療広告ガイドラインで推奨されている。問い合わせ窓口一覧が厚生労働省公式サイトに掲載されている。


BuzzFeed Japan Medicalはネットと医療情報に関して取材を続けています。情報提供は記者のTwitterアカウント( @amanojerk )かメールアドレス( seiichiro.kuchiki@buzzfeed.com )などにご連絡ください。