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Updated on 2018年10月23日. Posted on 2018年10月23日

ノーベル賞受賞で話題のキーワード「免疫療法」がネット検索にもたらす変化

新しい局面を迎えるネットの医療情報。

よく知らない言葉を目にしたときに多くの人が頼るのが、ネット検索。最近では、本庶佑(ほんじょ・たすく)さんがノーベル医学生理学賞を受賞したことで、「免疫療法」という言葉が注目を集めた。

時事通信

受賞後、インタビューに回答する本庶さん。

しかし、「免疫療法」という言葉は現在、一部のがんに対して効果が証明された治療と、そうでない治療について、混在して使われている。

この言葉が独り歩きすると、切実な想いを抱えた患者が、効果が証明されていないのに高額な「治療」に誘導されてしまうこともある。

ノーベル賞の報道前後で、実際に「誘導」は起こっていた。BuzzFeed Japan Medicalは「免疫療法」というキーワードを追った。

報道後に「関心」が4倍以上に

ネット上の注目度を表す指標として、Google トレンドがある。検索エンジン最大手Googleが提供するサービスで、「特定のキーワードについての検索ユーザーの関心の推移」を確認できる。

Google / Via trends.google.co.jp

「免疫療法」というキーワードの最近の動向。

「免疫療法」という言葉への関心の推移を確認してみる。日本において「免疫療法」という言葉は、ノーベル医学生理学賞が発表された10月1日、「人気度」がそれまでの4倍になった。

その後、関心は下がったが、9月22週と比較すると高止まりしている。このようにノーベル賞報道後、ネット上で「免疫療法」の情報の需要は増していた。

広告でファーストビューが埋まるGoogle

では、ネット検索結果はどうなっていたのか。10月22日時点のGoogleの検索結果は以下のようになっている。

Google / Via google.co.jp

「免疫療法」のGoogle検索結果。

画面に並ぶ項目のうち、一番上から3番目までは、表記にもあるように「広告」だ。

Googleが定めるアルゴリズムによって決まる「自然検索」の結果は、その次の「免疫療法:【国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ】」から。自然検索1〜3位はいずれも国立がん研究センターの運営するページだ。

このページでは、「免疫療法」には本庶さんの研究成果が開発につながった「免疫チェックポイント阻害剤」のように効果が証明されているものと、そうでないものがあることを紹介している。

「自由診療で提供される免疫療法(広義)」では、「有効性(治療効果)が科学的に証明されていない免疫療法も多数」あるため、「慎重な確認が必要」として注意喚起をしている。

しかし、これら国立がん研究センターのすぐ下に表示されている検索結果は、別のクリニックの公式サイト。内容を確認すると、まさにセンターが注意喚起している「自由診療で提供される免疫療法(広義)」だった。

そもそも、国立がん研究センターよりも上に表示されていた「広告」の3件も、「自由診療で提供される免疫療法(広義)」だった。

このような免疫療法を提供するクリニックのひとつは、BuzzFeed Japan Medicalの取材に、以下のように回答している。

「標準治療(*)の科学的根拠程には及ばないのは確か」(*科学的根拠が証明された、現在利用できる最良の治療)

「治療効果についても標準治療より勝るものでも、それに代わるものでもございません」

アルゴリズムが進化しても「完璧」はない

そもそも、2017年12月に実施されたGoogleのアップデートにより、医療・健康情報は「医療従事者や専門家、医療機関等から提供されるような、より信頼性が高く有益な情報が上位に表示されやすく」なったはずだった。

Getty Images

SEO(検索エンジン最適化)の専門家・辻正浩さんは「ここ1~2年で医療関連の検索が改善されてきていることは確か」とした上で、こう話す。

「しかし、それはごく一部にしか過ぎません。医療機関や大手報道機関が優遇される現在のアルゴリズムにおいては、これらの機関が質の低いコンテンツを出しても、それが上位に表示されてしまいます」

長年、日本語のネット検索の移り変わりを見つめる辻さんは「どれだけ改善されても、検索結果が完璧になることはありません」と強調する。

問われる検索「広告」への対策

問題は、自然検索に留まらない。いくら自然検索のアルゴリズムが改善されても、前述した検索連動に連動して上位表示される広告の質が低ければ、問題が根本的に改善されたとは言い難い。辻さんはこう指摘する。

「検索結果は自然検索と、検索連動型広告に分かれていますが、多くの利用者は広告の部分とそうでない部分の区別がついていないという調査結果も多くあります。著しく改善された自然検索と比較し、広告はあまり改善が進んでいません」

このような状況の中で、国立がん研究センターと連携し、がん関係のキーワードの検索結果に同センターのページを固定表示するなどの取り組みをしてきた国内大手の検索エンジン・Yahoo! JAPANが動いた。

国立がん研究センターは10月17日、Yahoo! JAPANで「免疫療法」などを検索すると、検索連動広告よりも上に、同センターが公開しているコンテンツが検索結果の上位に表示されるようになったと発表した。

改善前のヤフー検索結果

Yahoo! / Via yahoo.co.jp

改善前のYahoo!検索の結果(PC)。

改善後のヤフー検索結果

Yahoo! / Via yahoo.co.jp

改善後のYahoo!検索の結果(PC)。

運営するヤフーの広報担当は、BuzzFeed Japan Medicalの取材に「内容等についてはさらなる改善を検討中です」と回答した。

しかし、国立がん研究センターのコンテンツが上に表示されても、その下に表示されているのは引き続き、自由診療で提供される免疫療法(広義)や健康食品の検索連動型広告だ。

広告とそれ以外の部分の区別がつかない人が多い現状を踏まえ、辻さんは「自然検索が改善されても、検索連動型広告が改善されないままだと意味は非常に薄い」と指摘する。

ヤフーだけではない。「利用者のより多いGoogleでは、検索連動型広告についての対応が取られた様子はありません」(辻さん)。

2016年末のWELQ問題以降、改善が進んだ自然検索に対して、検索連動型広告の問題は度々、指摘されてきた。

検索連動型広告は、グーグルやヤフーなどプラットフォームの売り上げに直結する。そこに規制を加えることは、自然検索への改善以上に自浄作用を働かせることが難しい。

しかし、情報の流通を握るプラットフォームが社会に与える影響は絶大だ。自浄作用が働かなければ、次に出てくるのは公的な規制の議論だろう。


「ネットの医療情報の今」を伝える連載。次回は検索連動型広告について、もう少し詳しく紹介します。

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Contact Seiichiro Kuchiki at seiichiro.kuchiki@buzzfeed.com.

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