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小さな命の灯、絶やさぬように……小児救急を守る「最後の砦」の理想と現実

国立の専門病院がネットで広く寄付を募る真意とは。

重い病気やケガで、一刻を争う状況の子どもたち。その命を救う「最後の砦」になるのが、国内の小児科病院の拠点である国立成育医療研究センターです。24時間365日、全国から子どもが運び込まれます。

時事通信フォト

東京・世田谷区にある国立成育医療研究センター。城のような外観で、内部には子どもが楽しめる遊具が並ぶ。

そんな救急搬送の現場を、見学させてもらいましょう。今回、注目したのは医師の乗るドクターカー。119番通報ではなく、クリニックや総合病院からの要請で出動し、到着直後から治療を開始します。まずは患者さんを迎えに行く準備。

成育医療研究センター

ひと口に「小児」といっても、1歳と10歳では必要な器具や機械が大きく異る。そこで、同センターでは各年代にあわせたものを常備。その中には、大人用のチューブを手作業で短くするなど、スタッフが創意工夫を凝らしたものもある。

小児の重症患者は1000人あたり約1.4人。多くはありませんが、それだけに対応できる医師の数も少なく、どんな病院でも命を救えるわけではありません。そこで、ドクターカーの出番です。

成育医療研究センター

担架をドクターカーの中に入れて、ドライバーと打ち合わせ。人工心肺装置や一酸化窒素の供給装置などはかなりの重さがあり、載せるのも一苦労だ。

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現場に到着。車内から現場と情報共有をしておいて、スムーズに引き継ぎ、同センターに戻ります。このように、治療を継続したまま搬送できるのが、ドクターカーの利点です。それにしても、さすがにちょっと、狭そう……。

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子どもはドクターカーだけでなく、ヘリコプターや民間のジェット機で近くまで運ばれることもあります。こちらは2016年7月におこなわれた肝移植手術で連携した、航空自衛隊・航空機動衛生隊の乗る輸送機。

時事通信フォト

写真は2011年3月の東日本大震災での初出動時に撮影されたもの。治療をする機動衛生ユニットは「空飛ぶ集中治療室」とも呼ばれる。

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今でこそ、充実した体制の同センターですが、かつて搬送に利用していたのは、なんとタクシー。タクシーに器具や機械を積み込み、小児の重症患者の元に向かっていたのです。もちろん、この中でできることは限られます。

現在のドクターカーを使い始めたのは、2012年からと、ごく最近。同センターのOB医師が、ドクターカーを病院に「寄付」したのだそう。自身も開業直後で決して豊かでない中、小児救急医療の発展のために、私費で寄贈したといいます。

Seiichiro Kuchiki / BuzzFeed

そもそも、国立の病院であるにもかかわらず、なぜ寄付に頼るのか。まず、同センターはここ数年、赤字を計上している。そして、国からの助成金や補助金は決められた用途にしか使えず、ドクターカーは購入できない。このような理由で、寄付に頼らざるを得ない現実がある。

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以来、たくさんの子どもの命を救ってきたドクターカー。しかし、車内が狭いため、医師が患者の両側に立てず、容体が急変した際に対応できない、という問題もあります。車内に置けない機器もあり、伴走車が必要な場合もあります。

「小児救急は小児科・救急科・集中管理など、複数の領域にまたがる高い専門性が求められます。国内にもそれを担える施設がまだ少なく、教育プログラムと搬送システムの確立が必要です」(同センター救急診療科・植松悟子医長)

Seiichiro Kuchiki / BuzzFeed

若手医師がドクターカーでの治療の経験を積むには、当然、ドクターカーに乗らなければならない。「搬送」は「教育」にも結びついているが、国内の小児科病院のトップでも、資金が十分ではなく、ドクターカーは1台という現実。これを変える一助となるのは、寄付という選択でもある。

Seiichiro Kuchikiに連絡する メールアドレス:seiichiro.kuchiki@buzzfeed.com.

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