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「カフェイン中毒により5年で3人が死亡」…本当に気をつけるべきは? 専門家に聞く

「もっと安価に、もっと手に入りやすいものを」で深刻化する依存のメカニズム。

コーヒーやエナジードリンク(清涼飲料水)など、カフェインを含む身近な飲料。納期や試験の直前、追い込みのお供にする人もいるだろう。

一方で、これらを「飲みすぎる」人もいる。例えばAさんは現在34歳の男性。一番多い時期には1日24本のエナジードリンクを飲んでいたという。

AさんはIT企業でウェブエンジニアとして勤務し、他のエンジニアを束ねるマネージャーだ。3〜4年前の一番多い時期には、Aさんは毎日1時間に1〜2本ずつ、合計24本のエナジードリンクを飲んでいた。理由はやはりハードワークだ。帰宅もままならず、床で寝ることもあり、徹夜も常態化していた。

飲み始めたきっかけは街頭などで行われている「エナジードリンクの無料配布」だった。Aさんは「味が好き」で飲み始め、飲むと「目が覚めるような気がした」。しかし、効果を感じることは次第に少なくなり、「プラセボ(*)のようなものとわかりつつ飲んでいる」という。

*有効成分を含まないが心理的作用により効果があるように感じられる偽薬

Aさんもまた、デスクに飲み終わったエナジードリンクの缶を積み上げていた。それを会社のメンバーが写真に収め、“Aさんヤバイwww”といった文言とともに社内向けのSNSに投稿。それにたくさんの「いいね」がつくなど、エナジードリンクの乱用を容認する雰囲気もあった。

しかし、そんなにエナジードリンクを飲んで、体は大丈夫だったのだろうか。当時「足のしびれを感じるようになり、怖くなって医療関係者に相談したことがある」そうだ。しかし、「カフェインの飲みすぎで健康被害があるとは知らなかった」とAさんは振り返る。

カフェインを原因とする症状により国内で救急搬送された人は、2011年からの5年間で101人にのぼり、3人が死亡しているとする調査結果が発表された。

日本中毒学会でまとめられた調査で、実施したのは埼玉医科大学救急科教授の上條吉人医師。この調査では、学会員が所属する264の救急医療施設に調査を依頼、うち39施設が回答した。カフェインを含む風邪薬や鼻炎薬などを同時に飲んだケースは調査対象から除かれている。

救急搬送された101人は14~54歳で、18歳以下は16人いた。また、この数字は2013年以降に86人と急増。症状は激しい吐き気・嘔吐やイライラ、興奮、動悸などで、重症例では7人が心停止していた。内訳は、眠気防止薬が97人、清涼飲料水が10人、コーヒーが5人だったという(重複回答あり)。

2014年には、東京都監察医務院の鈴木秀人医師らの研究グループが、東京都23区内で発生したカフェイン中毒死22事例に関する報告をしている。また、2015年には福岡で20代男性がカフェイン中毒により死亡した事例もメディアで注目を集めた。

福岡の事例では、死亡した男性は24時間営業のガソリンスタンドで深夜から早朝にかけての勤務があり、日常的にエナジードリンクを多用していたとされる。胃の中からはカフェインの錠剤も発見され、カフェインの血中濃度は致死的なレベルに達していたそうだ。

BuzzFeed Newsの取材に「カフェイン中毒は最悪の場合、死に至る」と上條医師は警告する。実際のところ、どれくらい摂取すると危険なのか。

上條医師によればカフェインは常用量(一般的に飲まれている量)と中毒量(中毒に至る量)が比較的近い成分。吐き気やイライラ・落ち着かないなどの症状に始まり、不整脈による心停止が起きることもあり「短期間に大量に摂取するのは危険」だという。

今回の調査では、不整脈による心停止が起きた人のうち、最低の摂取量は6グラムだったため「これが(成人の)最低致死量と想定される」という。一方、同医師によれば、成人の中毒量は1〜2時間に1グラム。例えばこれをコーヒー(1杯約100ミリグラム)で摂取するには、10杯で中毒、60杯で死に至る計算になる。

1〜2時間でコーヒーを60杯飲み終えるというのは、あまり現実的ではないだろう。上條医師も「だからこれまではあまり問題にならなかったのでは」という。しかし、福岡の死亡例で目撃されたエナジードリンクも、カフェインの含有量自体は36〜150ミリグラムと、コーヒーとそう変わらない。

では、なぜカフェイン中毒による死亡事例が急増しているのか。浮かび上がってきたのは「カフェイン」が手に入りやすくなった弊害だ。

上條医師は「通常の嗜好品として楽しむ分には問題はない」が、「きっかけになったのはエナジードリンクの普及だろう」と指摘する。

「エナジードリンクにより、カフェインが“眠気覚ましになる”“疲労回復に効く”といったイメージが一般に定着したために、カフェインをより多く含む眠気防止薬の乱用につながっているのではないでしょうか。実際に、重症のカフェイン中毒患者は眠気防止薬が主体でした」

眠気防止薬は第三類医薬品で、ネットで安価での購入が可能になった。例えばエナジードリンクが1本200円だとして、同じ量のカフェインを摂取するのに、眠気防止薬なら1錠10〜20円で済む。起こり得るのは、カフェイン依存の人たちが、より安価で手に入りやすい眠気防止薬を常用するようになる、という流れだ。

眠気防止薬を使う人の実態は。編集者として働く29歳の女性・Bさんに話を聞いた。Bさんもハードワークをカフェインでカバーしている。

Bさんは眠気防止薬を常用している。「先日も締切前に深夜の追い込みが必要になって、眠気防止薬を口に含んだのですが、飲み込む前にデスクで眠っていました」と話す。眠気防止薬を使うようになったのは、大学生の頃から。タイミングはやはり試験や課題提出前などの「追い込み」だった。

眠気防止薬を使うことに抵抗はなかったのだろうか。Bさんは「もともと高校生くらいのときからエナジードリンクで眠気を抑えることをしていた」が、「エナジードリンクでは眠気を抑えられなくなった頃に、眠気防止薬の存在を知り、使うように」なった。

現在、Bさんは多いときで月に4〜5回、眠気防止薬を使っているが「だんだん効果がなくなってきている」(Bさん)。量を減らしたり、使わないようにできないのか。そう聞くと、Bさんは「もちろん、忙しさに応じて、ほとんど使わない月もあります。でも、仕事が終わらないときは、仕方がないですね」と答えた。

「今よりもさらに仕事が忙しくなれば、眠気防止薬の量が増えるということは、あり得ると思います」

冒頭のAさんは、今は「午後イチで眠いとき」などにエナジードリンクを飲む。量を減らしたきっかけは「効果を信じているわけではないので、“味が好き”だけではコスパが悪い」と思うようになったから。では、「コスパが良い」眠気防止薬に手を出すことはあるのだろうか。

「薬と聞くとちょっと怖いかな……。でも、仕事の関係で仕方なく徹夜することは今でもあるので、簡単に手に入るなら使ってみたい気持ちはあります」

中毒域、致死量までカフェインを摂取するというのは、そう一般的なことではないだろう。上條医師も「カフェイン自体が悪いわけではない」と強調する。しかし、それは過剰摂取により命を落とすのと、同じ成分でもある。上條医師はあらためて、次のように話す。

「カフェインを含む飲料はあくまで嗜好品として、きちんと間を空けて、飲みすぎないことを意識してください。また、風邪薬や鼻炎薬などには、眠気やだるさ対策としてカフェインが配合されているものがあるので、一緒に飲まないように注意が必要です」


Seiichiro Kuchikiに連絡する メールアドレス:seiichiro.kuchiki@buzzfeed.com.

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