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厚労省はダジャレ好き? 「ガンダム」コラボが救う「人類の未来」

「2050年には全世界で年間1000万人が薬剤耐性菌により死亡することが推定されている」と厚労省。

厚生労働省には、ダジャレ好きの担当者がいるに違いないーーそう確信させる出来事があった。

9月29日、厚生労働省が名作アニメ『機動戦士ガンダム』とのコラボを発表したのだ。

ポスターに大きく描かれているのは、初代ガンダムと、そのパイロットであるアムロ・レイ。発進時の掛け声は「アムロいきまぁーす!」。

アムロ、AMURO、AMR……。そう、このポスターでは「アムロ」と「AMR」をかけているのである。しかし、こう思った人もいるはずだ。「AMRって何?」と。

AMRとは“Antimicrobial Resistance”の略で「薬剤耐性」のこと。医療現場で深刻になっている問題だ。

病気になったときに、抗生物質(*)や抗菌薬を処方されたことがあるだろう。これらは病気の原因となる菌の増殖を抑制、または殺す薬だ。

*狭義には生物から作った抗菌薬を「抗生物質」と呼ぶ

人類はこれらの薬により、たくさんの病気を克服してきた。だが、使用量が増えると、これらの薬が効かない「薬剤耐性菌」が生まれることが知られている。

厚労省によれば、2050年には「全世界で年間1000万人が薬剤耐性菌により死亡」することが推定されているという。

つまり、抗生物質や抗菌薬は、適切な病気の、適切な時期に、適切な量を使う必要がある。そうしないと、たくさんの人の命を奪いかねないのだ。

しかし、もっとも身近な病気のひとつが、AMRの原因になっている。その病気とは「かぜ」だ。

実は、かぜの原因の多くはウイルスだ。厚生労働省結核感染症課の担当者は、BuzzFeed Japan Medicalの取材に、以下のように回答した。

「かぜの定義は少し複雑ですが、近い概念の急性気道感染症では、原因の9割がウイルスであることが知られています」

「抗生物質や抗菌薬は、細菌を退治する薬。つまり、ほとんどのかぜには、抗生物質や抗菌薬は効果がないのです」

効果がないにもかかわらず、抗生物質や抗菌薬の処方をすれば、薬剤耐性菌を生み出し続けることになる。

一方、同担当者は厚労省の調査で「約半数の方が、抗生物質や抗菌薬について、かぜにも効果があると誤解しているか、わからないと回答」したことを明かす。

だが、かぜのときに抗生物質や抗菌薬を処方された経験がある人もいるはずだ。なぜ、ほとんどのかぜに効果のない薬が処方されるのか。

効果がない薬が処方される責任は、医師と患者の双方に。そこに、ガンダムの出番がある。

今回のキャンペーンを企画したのは、厚生労働省結核感染症課の成瀬浩史さん。過去には『マジンガーZ』と「麻しんがゼロ」をかけた企画も担当している。

いずれのキャンペーンも、核となるのは「懐かしいキャラクター」と「ダジャレ」だ。なぜ、このような企画をするのか、成瀬さんを直撃した。

「ポイントは、医師の方、患者の方、双方にアプローチする、ということでした」と成瀬さんはいう。

医療関係者向けに6月に発表された『抗微生物薬適正使用の手引き』では、ウィルス性のかぜには抗生物質や抗菌薬を処方しない方針が示されている。

AMRが問題になって以降も、習慣的にかぜを疑う患者に抗生物質や抗菌薬を処方していた医師には、あらためて再考を求めたともいえる。

それでも未だに、かぜにも抗生物質や抗菌薬が処方される背景には「患者が求め医師が応えるという、固定化したコミュニケーションがある」(成瀬さん)。

「かぜには抗生物質」といった患者側の誤解がある中では、処方を求められれば、医師は応えざるを得ない、という事情だ。

「しかし、AMRは人類にとって差し迫った問題です。そこで、多くの人が知っていて、憧れるヒーローなら、この状況を打破できるのでは、と考えたのです」

成瀬さんがこの企画を思いついたのは「シャワー中だった」と笑う。AMRの危険性を啓発する方法を模索していたところ「アムロ(AMURO)だ!」と閃いた。

「著作権者の方への提案時はかなりドキドキしましたが、企画の背景をプレゼンし、議論の末、ご快諾いただきました」

ちなみに、「麻しんがゼロ」はダジャレ好きの医師と麻しんの啓蒙について話し合っていたときのアイディア。

「全体的にしょうもないのでは」と質問すると「それ(ダジャレ)でも、国民のみなさんの心にいかに届けるかを考え続けていきたい」と回答した。

「この企画には、作品の“困難に立ち向かう”というメッセージになぞらえて、抗生物質や抗菌薬が効かなくなる未来に立ち向かう、という思いを込めています」

「日頃から手洗い・咳エチケットを心がけて感染を防ぎ、抗生物質・抗菌薬を正しく使うことで、このような未来は防げるということを、伝えたいのです」

訂正

成瀬さんの名前を訂正しました。