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どのお酒がダイエットにいいの? 一筋縄ではいかないアルコールと糖質の関係

「ハイボールはダイエットにいい」を検証する。

「ダイエットのために、お酒を変えよう」ーーそう考える人もいるだろう。何を隠そう、筆者もダイエットをするにあたり、常飲していたレモンサワーをハイボールに変えた。

「ハイボールはダイエットにいい」とはよく言われるが、何がいいのか。他にもダイエットに適したお酒はあるのか。BuzzFeed News Medicalは北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟医師に話を聞いた。

レモンサワーよりハイボールの方が有利なのは「糖質量」の差。

まず、ダイエットのために、レモンサワーをハイボールに変更した筆者の選択は、妥当と言えるのだろうか。

山田医師は「レモンサワーよりはハイボールの方がダイエットに向いている」という。その理由は近年よく話題になる「糖質量」だ。

文科省の『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』を参照すると、「缶チューハイ(レモン風味)」の利用可能炭水化物(ほぼ糖質と同義)は100gあたり1.8g。1杯350mlとすれば、約6gの利用可能炭水化物が含まれていることになる。

では、ハイボールはというと、一般的には蒸留酒であるウィスキーを炭酸水で割ったもので、利用可能炭水化物は0g。場が盛り上がって3杯ほど飲んだとすれば、約20gと0gで、それなりに大きな差になる。

糖質を減らすと体重は減りやすい。ただし、極端な糖質制限は勧められない。

そもそも、なぜ糖質量がダイエットに関係するのだろう。山田医師によれば、そのメカニズムは以下のようなものだ。

「糖質を摂取すると血糖値が急に上がり、それを下げるためにインスリンというホルモンが大量に出るのです。インスリンは脂肪を溜め込むように働くため、糖質を減らした方が体重は減りやすい、ということになります」

「とはいえ、極端な糖質制限はかえって健康を損なう恐れ(*)も。そこでおすすめなのが、ゆるやかな糖質制限、通称“ロカボ”です。この場合、糖質をまったく取らないのではなく、1食あたり20〜40g、1日70〜130g以内が目標になります」

*1日に50g以下の極端な糖質制限をおこなった場合、生成されるケトン体が健康に悪影響を与える可能性が現時点では拭えないとされる

食事と飲み物の合計で1食20〜40gの糖質量を目標とするなら、ハイボールはたしかにいい選択だったといえる。

レモンサワーの中でも、「生搾り」として無糖のサワーに実際の果物を搾るものなら? レモン果汁の利用可能炭水化物は『日本食品標準成分表』によれば100gで1.5gなので、糖質量は下がると考えられる。

しかし「果糖(果物に含まれる糖)は中性脂肪に変わりやすいため、果物のサワーや果汁のカクテルは、普通の糖質以上に気をつけてください」(山田医師)。

ちなみに、飲み物に添加されている「果糖ブドウ糖液糖」なども、果糖が加わっており、またそもそも血糖値の上下を激しくさせる「異性化糖」であるため、山田医師によれば摂り過ぎはよくないそうだ。

他のお酒の利用可能炭水化物量は? 清酒やワインは飲み過ぎなければ問題ないレベル。

引き続き、『日本食品標準成分表』を参照すると、100gあたりの利用可能炭水化物量は、清酒の普通酒で2.5g。ワインはいずれも推計値だが、白ワインで1.1g、赤ワインで0.2g、ロゼワインで2.5g。

1杯の量からすると「飲み過ぎなければそうそう目標をオーバーしない値」(山田医師)。

一方、糖質量の多い、いわゆる「甘いお酒」はどうか。例えば梅酒には、作り方にもよるが、100gで20g前後の糖質が含まれている。2杯も飲めば1食の目標を超えてしまうので、注意したい。

このように、ダイエット目的に限らず、飲むお酒の種類を変えることによって、糖質の摂りすぎで健康を害するリスクを避けることもできるのだ。

気になるビールとダイエットの関係。実は最近になって大きな変化が……。

さて、もうひとつ、大事なお酒を忘れている。もちろんビールだ。愛飲している人も多くいるお酒だが、なんとなくダイエットに良くないイメージが……。

「実は、ビールは最近になってその位置づけが大きく変わりました。結論から言うと、強い警戒は必要ないでしょう」

先述した「利用可能炭水化物」という考え方は、日本では2015年から『日本食品標準成分表』に取り入れられているもの。

近年、世界的に「実際に体内で利用可能な(血糖値を上昇させる)炭水化物の量を記載しよう」という動きが広がっているためだ。

ビール(淡色)自体の炭水化物量は100gあたり3.1g。350mlなら1杯で約10gと一見多い。このため、レモンサワーよりも警戒する必要があるように思われる。

しかし、実はそのうち利用可能な炭水化物の量は極めて少ないことがわかった。同成分表でも、利用可能炭水化物の値が「微量」となっている。

もちろん、銘柄によっては糖質を多く含むものもあるため、確認が必要だが、全体としては「強い警戒の必要なし」という結論になるそうだ。

アルコールと糖質の関係は複雑だが、基本は「糖質をある程度まで控える」のがダイエットに効果的。

山田医師によれば「アルコールと糖質の関係は複雑」で、糖質量が一定以下のものについては、どれがダイエットにいいかまでは断言できないという。

「他の食べ物と一緒に摂取した場合、どのお酒が血糖値を上げるのか上げないのか、それがアルコール量の差による作用なのかどうかなど、まだ解明されていないことがたくさんあります」

一方で、「一般的に、糖質をある程度まで控えることは、体重を減らす、つまりダイエットに効果的」(山田医師)だ。

酔っ払い、ついついおつまみや締めのラーメンなどを食べ過ぎていないか。また、ソフトドリンクとして、利用可能炭水化物量が100gあたり10g以上(350mlで30g以上)と推計されるコーラなどの清涼飲料水を飲み過ぎていないか。

「ダイエットを望まれる方は、お酒だけではなく、飲み会の飲食全体に配慮が必要です。また、アルコールの摂り過ぎはいずれにせよ健康を損なうので、くれぐれもお酒の量には気をつけてください」