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女性を無意識に軽蔑した自分に嫌気がさした 「名無し」の性を持った私とは

「本当は、“ひとつ”って無限に多様なのだと思う」

「性的マイノリティー」を表す、「LGBT」。

L=女性の同性愛者「レズビアン」

G=男性の同性愛者「ゲイ」

B=恋愛対象が男女両性である「バイセクシュアル」

T=生まれた時に割り当てられた性別とは異なる性を自認する人を指す「トランスジェンダー」

これら4単語の頭文字を並べた言葉です。

最近では、この言葉の他に「LGBTQ+」という言葉も使われるようになってきました。

Qとは、性的マイノリティーの総称である「クィア」や、もしくは自分の性別が定まっていない人を指す「クエスチョニング」などを意味しています。

「特に自分の性の在り方に名前を与えていない」

「いつから自分が女性でも男性でもないジェンダーだと思っていたのかは、分からない」

BuzzFeedの取材に対してこう話すのは、クィアを自認しているというSさん。

「ジェンダーに関して、私は特に自分の性の在り方に名前を与えていません。あえて言うならQueer(クィア)」

そう定義づけるのには、「多様な意味を持ち、歴史的に社会の“ふつう”に対抗するこの言葉の力強さが好きだから」という理由があるからだといいます。

「私は、女性でも男性でもないジェンダーを自認しており、好意を抱く相手のジェンダーに関係なく好きになる。私にとって“誰かに惹かれる”というのは、性的な感情ではなく、心が惹かれるという感覚なんです。自分のセクシュアリティは固定されたラベルではなく、変化するものだと思っています」

「中高を女子校で過ごした」

男女どちらでもない性を自認するSさんが、「女子」であることに違和感を覚え始めたのは女子校に通っていた中高生時代のことだったと振り返ります。

「今思い返してみると、女子校で“女子”という性があたりまえの環境の中で、いつしか女性を“自分とは違う性”の存在として見るようになっていました。だからといって、自らを男性だと認識していたわけではないです。中高生当時の自分は、自分の性に対して抱いた感覚を形容する言葉も知識も持っていなかったので、その違和感にフタをし、自分は女性なんだと言い聞かせながら生きてきました」

「しかし同時に、女性として扱われたり呼ばれたりすることに違和感を抱き、いつしかそれは、自分の中で“女性”に対する無意識な軽蔑へと変わっていきました。そしてそんな自分に嫌気がさしていました」

「最近、改めて自分のジェンダーを問い直し、他の方の経験談などを読み、自分の男性でも女性でもないジェンダーの在り方に気がついたんです。これはこれまでの性的違和、女性蔑視、自己嫌悪からの解放へとつながりました」

高校を卒業したSさんは大学に入学し、1年生の時にバイト先で出会った女性の先輩に一目惚れします。

自分の中のそんな気持ちに気が付いてから、惹かれる人のジェンダーに境がなくなったそうです。

しかし、「惹かれる」という感情についてもすんなりとは受け止めることができず、悩みました。

「先輩に抱いたその思いを、“恋愛”と形容するのは難しかったです。日本では一般的に、emotional attraction(感情的な魅力)とsexual attraction(性的な魅力)は“恋”という言葉で一括りにされることが多い。そして未だに、異性間恋愛が“普通”とされています」

「そんな中、私は女性を好きになった。でも他人には性的な感情は湧いてこない。だから私は、自分の胸のうちに湧いたその感情を“憧れ“なのかも、と言い聞かせていました。知り合いにも『それは憧れだよ』『女子校行ってたから異性への恋愛がわからないんだよ』と言われました」

「しかし1年経っても、その女性への恋愛感情が消えなかった私は、自分がどんな性を好きになり、なぜその性を好きになるのかなどを探るよりも、自分の“好き“という感覚に正直になろうと思ったのです。私にとって、自分を特定のセクシュアリティにカテゴライズすることは、違和感でしかありませんでした。私の性の在り方は、私の日々の振る舞いや感情を通して、“名前を与えなくても存在するものだ”と自分で確信できたからです」

「いつ・どこで・誰に伝えるかは私が決めること」

自分自身のアイデンティティを見つけ、自分らしさに素直でいることを決めたSさん。

周囲との関わりの中ではどのような経験をしてきたのか。

話を聞いてみると、大学の友人によって、自分の合意なく性的指向や性自認を暴露される「アウティング」を受けたことがある、と。

過去には、一橋大学法科大学院の男子学生がアウティングを受けたのちに、転落死した事件も起きているほど、当事者にとっては深刻な問題です。

「友人が私の知らない間に(友人の)親に対して、私がLGBTQ+であると話していました。その親はLGBTQ+に対して差別的だったため、『Sとは距離を置くように親から言われた。あなたがLGBTQ+だから』と、後から友人に言われました」

「その時私は、友人が勝手に私のセクシュアリティを広めていたことにも、まるで私が悪いように言われたことにも違和感を感じました」

加えて、アウティングは当事者間でも起こりうることだと指摘します。

「ゲイの友人が、私が大学内のLGBTQ+当事者のコミュニティに所属していることを、他の学生の前で話したのです。大学では自分のセクシュアリティを隠してはいませんが、いつ・どこで・誰に伝えるかは私が決めること。自分のアイデンティティの所有権を失ったように感じました」

さらに、自分の性を明確には定めていないからこそ、周囲とはこんなすれ違いも......。

「自分の性自認や表現したい性について、周りの人に上手く説明できないなと思う時はあります」

「自分のことを話すと、周囲に『じゃあこういう髪型にした方がより中性的に見える』と言われることなどもありますが、そうした私を評価するようなコメントは必要としていないのに…など」

「必死に自分の性の名前を探し、それを証明しようとしていた自分へ」

周囲とのすれ違いを経験してきた一方で、こんな声をかけてくれた友人も。

「クィアである事は、あたりまえを壊し、みんなが自分らしく生きられるような社会の新しい可能性をつくっていく存在だ」

Sさんの心に残っている言葉なのだと教えてくれました。

そして、悩み苦しんでいた頃の自分に向けては、こんなメッセージを送りたいといいます。

必死に自分の性の名前を探し、それを証明しようとしていた自分へ。

社会で存在を認められるように、ジェンダーやセクシュアリティに名前を与えようと頑張らなくても、あなたがあなたらしくいればいい。

誰が何と言おうが、あなたの感情も感覚も存在するもので、あなたの「名無し」の性の在り方もあなたと共に確実に存在するのだから。

誰が何とそれを評価しようとも、You are living your life.(あなたの人生は、あなただけのもの)

最後に、読者の皆さんに伝えたいことも聞いてみました。

「セクシュアリティもジェンダーも、人によって様々。認識も経験も感覚も人それぞれ。

「違い」を認めることは難しいかもしれません。

でもそれって、実はひとつの在り方しか存在しないと思っているからではないでしょうか?

ーー恋愛は異性愛だけ、男女二元論だけ、ゲイは〇〇でなければならない、トランスジェンダーは〇〇でなければならない...。

でも、本当は「ひとつ」は無限に多様なのだと思う。

「違い」は「多様性」。

「多様性」は「可能性」。

社会のあたりまえと違う存在を差別するのではなく、それを可能性と再定義するところからはじめませんか?

(サムネイル:Getty Images)

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