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【座間9遺体事件】事件研究のプロが語る「特異なのは『数』だけではない」

神奈川県座間市のアパートで発見された9人の遺体。その数や手口にメディアの注目が集まるなか、犯罪研究のプロはこの事件の特異性をどこにみるのかーー。

犯罪史から比較する

時事通信

神奈川県座間市のアパートで9人の遺体が見つかった事件ーー。各紙の報道によると、死体遺棄容疑で逮捕された白石隆浩容疑者(27)は、警視庁捜査一課の調べに対し、この9人を殺害したという趣旨の供述しているという

捜査は始まったばかりであり、白石容疑者が語っていることが事実かどうかはまだわかっていない。仮に報道の通りだとすると、8月下旬からわずか2ヶ月の間で9人が殺害されたことになる。

これは日本の犯罪の歴史にどう位置付けられるのか。どこに特異な点があるのか?

日本の殺人』などの著作がある、桐蔭横浜大の河合幹雄教授(犯罪社会学)に聞いた。

①日本で連続殺人は珍しい

時事通信

河合さんは「いまの段階(11月1日時点)の報道をベースに考えてみます」と断ったうえで、まず人数に着目する。

《これまでの白石容疑者の供述として新聞各紙で報じられていることをもとに考えると、8月下旬からの2ヶ月で9人が殺害されていることになります。

8人〜10人の大量殺人事件というのは、日本の大量殺人の歴史の中にいくつかあります。

しかし、ほとんどは一家を全員殺害する、火を放つといった、一度に殺害してしまうケースなんです。

いわゆる連続殺人で9人というのは、日本の殺人のなかでは極めて珍しいパターンで、本当に白石容疑者が殺害していたとするなら、これは間違いなく特異だと言えます。

1971年に群馬県で起きた連続殺人事件(大久保清元死刑囚が逮捕される)が類似の事件だと言えるかもしれません。

日本の警察は歴史的に殺人事件の検挙率がとても高く、90%台半ば〜後半で推移しています。(※法務総合研究所研究部報告50も参照)

つまり、ひとたび殺人事件が発覚すればほぼ捕まるということです。

海外では、もっと多数の殺人を起こした例がいくつもありますが、それは検挙されないからであって、犯罪者の側の特性ではないです。

大量に連続殺人をする前に日本の警察は容疑者を逮捕して、止めていたとも言えます。》

②発覚するまでにかかった時間にこそ特異性がある

時事通信

《今回、私が着目している特異な点がもう一つあります。

2ヶ月で事件に巻き込まれ9人目で発覚するまでの間、事件発覚につながるような被害者周辺からの声が報じられていないということです。》

10月24日から行方不明になっていた東京都八王子市の女性(23)の兄は、ツイッターなどで情報提供を呼びかけていた。白石容疑者につながる証言も寄せられ、事件発覚につながったという。

この女性とみられるツイッターアカウントには、自殺願望が書き込まれており、白石容疑者はツイッターを使って、連絡を取り合っていた可能性があるとされる。

なぜ被害者の情報が少ないのか?

《この事件を例えば「インターネットの闇」という言葉で片付けて、思考を止めてはいけません。

今回、9人の遺体が見つかるまでに2ヶ月発覚しなかったこと、そして、見つかっても被害者がすぐに判明していないこと。

供述したと報じられているように、本当に10代の若い女性が複数人行方不明になる、急にいなくなり事件性がありそうだとなれば、これまでに報道もされていそうですが、そういう情報はない。

そして、事件が発覚してからも、いまのところ被害者の身元につながりそうな情報がほぼ出ていない。事件の最も特異な点です。被害者側の情報が極端に少ないのです。

容疑者の手口、として報じられていることを読んでも、これまでの殺人事件と比べて、そこまで特異な点はありません。

仮に一件でも、自殺願望を書き込んだツイッターユーザー、ネットユーザーが行方不明になったと報じられれば、もっと前に事件の捜査が始まっていたでしょう。

しかし、こんな数になるまで発覚しなかった。何も対処しなければ、このパターンで、同じような事件がまた起こりうる可能性がある。

警察に対し、本当に誰からも声があがっていなかったのか。被害者の周囲でおかしいと思う人はいなかったのか。この先の捜査では、ここに着目したいと思います。》

自殺願望に対する書き込みに対処は必要なのか。河合さんはこう話す。

《インターネットの書き込みについて、例えば「〜〜を殺すぞ」という書き込みならば、真偽はともかく、捜査側もまずは放置せずに対応しようというコンセンサスができつつあるところです。

ところが、自殺願望、自殺をほのめかす書き込みはキャッチできていない。

人を殺したいという願望を持った人を事前に見つけることは無理ですが、自殺したいと書き込んでいる人を放置することで、事件に巻き込まれるリスクが高まる。

膨大な書き込みから見つけ出すというのは難しいことなのは理解できます。

しかし、自殺防止という観点からも、自殺に関する書き込みに対して、なんらかの対応は必要です。》


最後に、もし自殺が頭をよぎったときのために。全国の相談窓口は自殺総合対策推進センターにまとまっている。また、いのちと暮らしの相談ナビは、悩みや条件別に相談窓口を検索することができる。

バズフィード・ジャパン ニュース記者

Satoru Ishidoに連絡する メールアドレス:Satoru.Ishido@buzzfeed.com.

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