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なぜ#立憲民主党 は議席を伸ばしたのか?裏方に徹した元SEALDsの力

立ち上がったばかりの、立憲民主が躍進した。国会前デモ、野党共闘を呼びかけた参院選で培われた「動員力」が背景にある。

国会前デモは意味がなかったのか?

「国会前デモは意味がない、と批判された。でも、そこでの積み上げは無駄じゃなかったと言いたい」。この選挙で注目を集めた立憲民主のSNS戦略を動かしていたのは、元SEALDs(シールズ)のメンバーたちだった。

立憲民主の躍進は、彼らが主導した国会前デモ、野党共闘の先にあった。

想定外の人が集まった

10月21日、東京・新宿駅で最後の演説会を終えた立憲民主党の関係者はしみじみと語った。

「こんなに人が集まるなんて、最初を思えば想定外です」 

立憲民主は「勢い」を作りだした

立憲民主のPR戦略はとてもシンプルだ。「勢い」を演出することが基本にある。勢いとは、人を巻き込むことでムーブメントを作り出すこと。

基本カラーをブルーと白に揃えた。政党としての統一感ができ、印象にも残る。

演説会では、候補者や枝野幸男党首を支援者が取り囲むような会場設営をする。距離を近づけることで、人が多く映る「絵」になる。

そして演説は、政党を貫く理念を中心に。

動画は拡散しやすいように、30秒〜1分程度のものをすぐまとめて流す。添えるメッセージは演説からなるべくシンプルなものを抽出している。

SNSで好循環を作る

専門的な用語は避けて、日常的な言葉に寄せる。ハッシュタグをつけて、より拡散させる。

拡散されることで、ツイッターのトレンドには彼らのハッシュタグがあがる。盛り上がっている、と思った人たちが現場に足を運び、人が集まる。

集まった人はさらにツイッターで発信する。参加と発信の循環で、勢いは演出から本物に変わる。

集会を取材すると、元SEALDsのメンバーたちの姿をそこかしこでみた。彼らは大勢の群衆を前に充実した表情を見せていた。

手法は新しくない、これまでの積み上げだ

選挙戦最終日の10月21日、新宿駅に集まった人は8000人(主催者発表)。

雨が降っていたので建物の中から見ていた人、反対の車道から聞いた人——。人数以上に重要なのは、組織動員とは無縁の支持層を開拓したことだった。

もっとも、これ自体は目新しいことではない。SEALDsに限らず、世界各地の社会運動グループがやってきた手法そのままだ。

彼らは国会前デモ、そして野党共闘を訴えた2016年の参院選の流れそのままに、立憲民主党で戦った。

昨年の参院選でSEALDsの中心メンバーだった奥田愛基さんが、記者会見で語っていた言葉をそのまま引用する。

「一般的な選挙の絵は選挙カーに政治家が乗っているというもの。これだと政治家が上から説得するというような絵に見えてしまう」

「僕たちが提案したのは、低い台に登壇した候補者の周りを、支持者が囲むこと。なるべく同じ目線で候補者がしゃべっている絵です」

「デモをやってきたときから思っていたが、(ポスターなどの)色やフレーズが統一されていないことがある。僕からしたら、それはカッコ悪い。もっとどう見えたか気にしないといけない」

立憲民主党の戦略は、この延長線上にある。過去の経験、積み上げを生かしたことがわかるだろう。

国会前デモに参加していたメンバーは語る。

「国会前デモは現実の政治にとってなんの意味ない、無駄だと言われたこともある。でも、そのときの積み上げがあるから、いまがある」

自民に批判的だけれど、投票先がなかった人たち

今回のメッセージの打ち出し方は、「保守的で強権的な自民党には入れたくないけれど、既存の野党や自民党に考えが近い希望の党も...」と考える「日本のリベラル」層に響いた。

政治学者の中北浩爾・一橋大教授のインタビューをもとに、こう定義できる。

日本国憲法が持っている価値を肯定的にとらえる政治グループ。

基本的人権の尊重や国民主権、平和主義などを大事だと思っている——憲法を変えるにしても、これらの価値を尊重し、発展させていこうと考える政治家、その支持者。

彼らはかなりの確率で投票に行く。

しかし、投票先がないという思いがあった。そこに現れたのが、自民との違いを新しい形で訴える立憲民主党だった。

では、彼らにどんな言葉が響くのか。大きく3点ある。

  • 憲法の枠内の政治
  • 草の根、下からのネットワーク
  • 権力への意志


一つずつ見ていく。

憲法の枠内=立憲主義

第1に、憲法の枠内の政治を求めること。

憲法は「権力を縛るもの」だから、この憲法の制約のなかで政治をしてほしいということだ。

単に平和憲法、9条護憲と感情に訴えるのではない。

憲法の制約を超えるなという論理を伝えることで、いわゆる「護憲派」よりも幅広い層への訴えが可能になる。

経済、社会政策も「人権の尊重」を基本にしたパッケージで提案する。

草の根、下からのネットワーク重視

第2に「草の根」「下から」のネットワークを作ること。SNSもつかった発信を重視し、声を取り入れる。

「政党→組織・団体」で支援を呼びかけるではなく、「政党⇄個人」の双方向の関係を重視する。

枝野さんの演説は「立憲民主党は『あなた』が作った政党だ」「下からの政治」「『一緒に』戦ってほしい」と強調する。

呼びかけに応じて、SNSで発信することで「一緒に戦う」感がでる。ボランティアをSNSで集ったのもSEALDs型の「巻き込み」戦略だ。

参加した女性(25)は「今回は声が届いている」と語っていた。

政権を狙うと明言する

第3に権力への意志だ。

野党として批判勢力にとどまるのではなく、守るべきところを守り、自民党に対抗し、政権を奪う意志を見せること。

SEALDsも求めていた野党共闘とは、数の力を軽視しないという戦略だった。

広がりはリベラル層限定?

ただし、これでは政権に批判的な層にしか広がらない。

各政党、支持の強さのバロメーターでもある、比例区の投票先をみてみよう。

事前の世論調査をみると、立憲民主は選挙戦前の状況から、選挙終盤にかけて数字を伸ばした。この傾向は各社で共通している。

ただし、この伸びは民主党が政権を奪取した2009年のような、無党派層からも幅広い支持を集めたものではない。

与党から見ていく。

自民党の支持層は各社の世論調査で概ね30%台中盤で安定的に推移した。これに創価学会を支持母体とする公明党の固い支持基盤が加わる。

農村部では自民が圧倒的に強く、都市部に強い公明票で補強する。

立憲民主が最終的に伸びたのは、希望の党に呆れた政権批判票、これまで共産に消極的に投じてきたリベラル層を取り込んだことが大きな要因と言える。

現実をみれば、多くの有権者の関心が低いなかで野党が票を食いあった。

新しい支持層を開拓できるのか

日本の有権者は約1億人、投票に行くのはほぼ半分で、最初から支持政党を決めている有権者も多い。

本当に与党に対抗して、政権を狙うのであれば、都市部を中心に無党派層、選挙にいかない層まで、支持を開拓する必要性がある。

たんに自民に批判的な人たちの受け皿になるだけではなく、積極的に魅力をアピールできる党になれるのか。

ここが、立憲民主の試金石といえる。

躍進はした。しかし、まだ「反安倍政治」的な政権批判票を取り込んだだけの批判政党の枠から抜け出しきれてはいない。

一時のムーブメントで終わらずに、この動きを保つことができるか。問われているのは、民進党では成し得なかった継続と積み上げだ。

BuzzFeed JapanNews