「前原さんは即刻、やめろ」で大紛糾、3時間半……民進党は存続、合流は破談

    1ヶ月前に前原誠司代表が打ち出した希望の党への合流構想は頓挫し、結局、民進党は存続することに。解散総選挙に振り回された1ヶ月はなんだったのか?

    この1ヶ月はなんだったのか?

    10月27日、民進党の両院議員総会が開かれた。冒頭から前原誠司代表への恨み節ばかりが語られる会になった。司会から、最初の一言は「この1ヶ月はなんだったのか?」ーー。

    約1ヶ月前、両院議員総会で力強く「希望の党」に合流し、民進党の政策を実現しようと訴えた前原さんの言葉にもう力はない。

    終始、顔を強張らせたまま挨拶に臨み、この日は辞任せず「一定の方向を固め、私は辞任する」と表明した。

    前原さんはスピーチを続ける。

    「政治は結果責任。結果が伴わなかったのだから、(希望の党合流の決断が)正しかったとはいえない。私は悩みに悩んだ。離党者が続出し、小池新党ができる」

    「この中で仮に野党共闘をしても、惨憺たる結果になったのは間違いない」

    表明した時点で、自民党議員からは「もしかしたら(自民の)東京選挙区は全滅するかもしれない」という声、識者からも「民進党にはこれしか道はない」と評価する声があったのは事実だ。

    前原さんからすれば、共産との選挙協力をやめて、かねがね主張していた「ど真ん中にいる良識的な保守層」をターゲットに、「無党派層の6割を狙う」戦略だったのだろう。

    ところが、小池百合子・東京都知事が「希望の党」の代表就任を宣言し、前原さんが合流を表明する。この前後が注目のピークだった。

    「小池新党との合流はボタンの掛け違いもあった」

    衆院選での「風」と勢いを狙ったバクチは、リベラル派の「排除」など、ほころびが次々と生じて、支持を失い、結果は失敗に終わった。

    無党派層の支持は盟友・枝野幸男さんが立ち上げた立憲民主党に流れた。「排除」された側に一定の支持が集まっていった。

    「私は責任を痛切に感じている。まずはみなさんにお詫びを申し上げ、一定の方向性を固めたうえで、私は辞任をする」

    総会から、報道陣非公開の「懇談会」に切り替え、議論は進んだ。

    激論、3時間半 紛糾の末に…

    紛糾すること約3時間半……。報道陣をシャットアウトし、進められた。

    参加者によると、議論は二部構成で進行した。衆院選の総括が第一部、そして今後の方向性を決めるのが第二部である。

    長引いたのは第一部だ。「前原さんは即刻辞任すべきだ」。こうした意見が出席した議員から次々にあがった。

    「そもそも、安保法制を賛成している小池さんと組むこと自体正しかったのか」(参院議員)

    「(小池さんの排除が)想定内だったのか」「排除リストを知っていたのではないか」「希望との交渉を引き返すタイミングもあったはずだ」

    口を開いた議員から次々に出てきたのは、怒りを伴った前原構想への批判だった。

    それでも、前原さんは「希望と組むという選択は間違っていない」という前提を崩さない。

    この日も繰り返し述べたように、結果は伴わなかったから「正しいとは言えない」。だが「選択そのものは間違っていない」という考えだ。

    そして各議員に「希望の党側がかなり強気な交渉をしてきた」「立憲民主党の立ち上げについて『想定内』と発言した。排除リストはみたことがない」などと説明したという。

    民進党が持っている「お金」問題は?

    そして、肝心の今後のこと。まず決まったのは前原構想、つまり希望の党全面合流の破談だ。

    民進党は衆参両院、地方組織も含めて、現状維持ーーつまり、地方組織も存続させる。

    これにより争点になっていた、民進党にある50億〜100億円(毎日新聞)とも言われる政党交付金の問題はどうなるのか?

    政党交付金は政党の活動をサポートするためのお金で、財源は税金だ。民進党は2016年に約93億円、2017年10月までに約63億円を受け取っている。

    当初の想定はこうだった。

    希望の党に合流にむけて、衆院選後に手続きを進め、民進党は解散。そこで残ったお金は、そのまま希望の党に移すーー。

    民進党の存続が決まったことで、問題は一応の決着がついた。「他党へ資金を持っていくことはない」(前原さん)。

    野党は民進党出身者ばかり

    ここで問いは最初の司会の言葉に戻る。「結局、この1ヶ月はなんだったのか?」

    民進党の存続が決まったことで、野党第1党の勢力が大きく3つに分裂しただけになった。

    民進党の後任代表には岡田克也元代表の名前が上がり(追記:その後、大塚耕平参院議員が新代表に選出された)、希望の党の幹事長には前原さんが民進党幹事長に抜擢した大島敦氏がそのまま就任する。

    分裂の果てに……

    総会後、取材に応じた前原さんはこんな現状認識を示した。

    「改革保守が中間層を取るのか、左派・リベラルが自公の対極になるのか。これが、今後の政治の大きな分水嶺になる。私は新たな政治の選択肢を示すことに邁進する」

    主導した事実上の解党劇によって、野党は確かに再編された。スケールダウンはしたが、ある意味わかりやすい状況にはなっている。

    もっとも、これが日本の政治にとって良いのかどうかは定かではないのだが……。

    衆院選を取材しながら、支持者、党員・サポーターからは「これまでより小さい野党勢力がいくつもできただけで、結局、なんのための分裂だったのか」という声を何度も聞いた。

    「前原さんのおかげで第2民進党がいくつもできた」という皮肉も聞いた。

    民進党の地方組織を残すことで「立憲や希望とのブリッジになってほしい。良い役割を期待したい」と前原さんは述べていたが、具体的な方向性は見えてこない。

    前原さんは希望の党合流へ

    前原さんの正式な辞任時期は、10月30日に開かれる全国幹事長会議後になる。それを持って、希望の党へ合流する。