go to content

改憲派・前原誠司さんが「改憲より子供の貧困」と明言。その真意とは?

狙うは「ど真ん中」

民進党代表選。BuzzFeed Newsは立候補した蓮舫さん(48歳)、前原誠司さん(54歳)、玉木雄一郎さん(47歳)に個別インタビューを申し込んだ。今回は、前原さんのインタビューをお届けする。玉木さんの記事はこちらから。

「私は憲法改正を最重要課題とは考えていません。いまの政治の最重要課題は再分配です。次の政権交代を果たすには、良心的な保守層をどう取るか。ど真ん中の支持を取りに行きたい。課題は内政。自民党との対立軸も内政ですよ」

そう語るのは、代表選に立候補した衆院議員、前原誠司さんだ。案内された議員会館の一室には、趣味のSL写真がずらり。恩師にして、戦後を代表する国際政治学者・故高坂正堯さんの色紙がある。

若くして、旧民主党のトップを務め、民主党政権時代には外務大臣、国交大臣などを歴任。外交、安全保障問題に強く、党内屈指の改憲派の論客として知られる。

その前原さんが「改憲」を最重要課題ではないと言い切った。持論の封印?それとも……。

「私は憲法改正論者ではあるけれども、これを実現するために政治家をやっていると言ったことは一回もありません」

前原さんは憲法前文、憲法9条、緊急事態条項を改憲のポイントにあげている。これだけだと、自民党と大きく変わらないような気がするのだが……

前原さんは、大規模な自然災害やテロなど、非常時における政府の権限を定める緊急事態条項を例に挙げ、自身と自民党の違いを語る。

「自民党の改憲草案で定められた緊急事態条項は非常にできが悪いものですよ。政府の裁量権があまりにも大きい。これはひどいです。憲法というのは、権力者を縛るものであるのに、自民党草案は縛ってないですよね」

さらに、安倍首相と前原さんの違いを本人に聞くとこんな風に答えが返ってきた。

「安倍さんは観念的保守で、私は現実的な保守。例えば、集団的自衛権。現実的な想定をするなら、朝鮮半島の有事こそ想定すべき事例ですよ。安倍さんはホルムズ海峡の機雷掃海などを挙げましたが、その後、この想定はありえなかったという。何のための集団的自衛権なのか。これは観念論でしょう」

では、権力者を縛るという趣旨で「現実的」な改憲はありえるのか。

「繰り返しになりますが、憲法改正は最重要の課題でありません」と強調する。そこで前原さんは、現実的な課題に踏み込む。

「いま、何が最重要課題なのか……」

憲法改正より子供の貧困

「いま、子供の6人に1人が貧困です。目の前にある人間の尊厳が奪われている。これが最大、最優先の政治課題です。自民党との対立軸は内政ですよ。いまは自己責任社会。多くの人が苦しんでいて、総中流から剥落している」

そういえば、前原さんは代表選の記者会見で、真っ先にこんな発言をしていた。

「『生活保護者の中にはベンツに乗っている人もいる』という声があるが、生活保護で不正受給は0.5%。生活保護以下の生活水準の人の中で、実際に生活保護をもらっている人は20%以下でしかない。残りはやせ我慢している。この状況をどうするのか」

現状認識、そして政策の優先順位はわかった。では、その処方箋は?

「今回の代表選で私はAll for Allという考え方を打ち出しています。これは、すべての人が負担者であり、すべての人が受益者であるという考え方です」

「日本の課題は3つです。『少子化・人口減少』『財政赤字』『少子高齢化のなかで持続可能な社会』。これらを解決するために、総合的な政策パッケージ、処方箋があるのではないかと思ってきました」

「私が反省したのは、改革=歳出削減という考え方はおかしかったということです。旧民主党政権は、税金の無駄遣いを徹底的に無くしていこうとしました。『それも』大事です、しかし『それだけ』が改革というのはおかしかった」という。

ここで、前原さんはこの夏、永田町界隈で話題になった雑誌をあげた。伝統的にリベラル色、左派色が強い岩波書店「世界」9月号に登場した前原さんは、財政学者の井手英策さんと対談した。

井手さんと前原さんの間で、こんなやり取りがあった。

井手「まことしやかに語られる『支出の削減イコール財政再建』は本当か、ということですね。実は、低所得者へのいわゆる『弱者救済』ではなくて、中間層も含めて広くサービスを提供できている国のほうが、統計的にみて税収が大きい。政治的多数が受益者となって、自分の必要を満たしてくれる安心から、税金への抵抗が弱まる」

前原「支出を増やして、税への抵抗を弱めることで、結果的に財政再建を実現し得るという提案はとても意外でした」(「世界」2016年9月号)

ここに、前原さんの考えが現れている。

「みんなが負担をしあって、みんなが受益者になる。みんなで負担したものは、子育て政策だけでなく、医療・介護にも使っていく。若者の教育、保育、就学前教育から医療・介護まで。すべての層の人たちで、なんらかのニーズがしっかり満たされる。これが、All for Allです」

「Allには裕福な人も、貧しい人もすべて入る。応分に負担をいただくことになるが、所得制限を設けず、みんなで受益者になる」

「例えば、高校授業料無償化。所得制限を設けると、お金を持っている人は怒るわけです。取るだけ取られて、得るものがない、と。これではうまくいきません。だからこそ、所得制限を設けないことが重要なのです」

アベノミクスの評価を聞くと、「主張していた経済の好循環は起きていない」と強い口調で批判が返ってきた。

「アベノミクスがとっている金融緩和も財政出動も、不景気を脱する時にはありえる手段です。私も野田政権のとき、経済財政担当大臣として、当時の日銀総裁だった白川(方明)さんに金融緩和をもっとすべきだと強く求めました」

「しかし、現在の黒田総裁はやりすぎです。白川さんは慎重で、黒田さんは緩和しすぎ。白と黒の中間、灰色が理想的だと常々言ってきました。デフレはよくないが、やりすぎもリスクがある」

前原さんが目指す「外交は現実的」「内政は再分配」路線。そもそも、有権者に聞いてもらうには、旧民主党のイメージを変えるところから始めないといけない。

前原さんは「戦犯の一人」を自認している。「戦犯」に聞いてみた。何がダメだったんですか。

「まず反省が足りなかった。私たちは失敗をしたということを率直に認めないといけない」

「党内がバラバラで、ケンカして分裂する。離党者も相次ぎました。国民はなんだこいつら、と思ったでしょう。与党としてのガバナンスがないまま、人の好き嫌いで政治をしていた。自民党も幅広い考えを持った人が集まっていますが、相手を倒すまで殴らずにまとめる大人の知恵がある。私たちはなかったんです」

もう同じ失敗は繰り返せない。そのために、民進党はどこから支持を獲得すべきだと、前原さんは考えているのだろうか。参院選で一定の成果をもたらした野党共闘は、次の衆院選でも必要?

「(現在の野党共闘なら)小選挙区で、共産党の票が見込めるのは事実です。しかし、私は良識的な保守を奪い合う政党でないと政権交代には至らないと思っています。岡田執行部は選挙協力ありき。非常に左派寄りに見えている」

「ど真ん中が空いているのに、わざわざ左に打ち込む必要はないというのが、私の考え方。民進党は良識的な保守の受け皿にならないといけない。その方が、より有効な路線だと思っています」

表情は終始、真剣なままだった。

帰り際、前原さんの顔が少し和らいだ。

「これデゴイチ(D-51。人気の高いSL)のプレート。ヤフオクで落札したんですよ」と満足げに話す。

政治家とヤフオク……。とっさに頭をよぎるのは元都知事なのですが……。

「いや、これは趣味だからね。政治資金で買うわけないでしょ」と、にこやかに返してくれた。

壁にかかったSL写真にも、ちょっと謙遜気味の解説が入る。「自分で撮ったんですよ。最近はカメラがいいですから」。ちなみに、最近はあまり撮影にもいけないらしい。

前原さんが狙う「ど真ん中」にアピールするために、代表選の勝利は必須だ。その結果やいかに。すべては9月15日、民進党臨時党大会で明らかになる。

蓮舫さん陣営には取材を申し込んでいる。取材ができ次第、速やかにお届けする。

バズフィード・ジャパン ニュース記者

Satoru Ishidoに連絡する メールアドレス:Satoru.Ishido@buzzfeed.com.

Got a confidential tip? Submit it here.