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わずか5議席の民進党にホッとした空気が流れた2つの理由

主役にも、脇役にも、悪役にもなれない選挙戦を終えた民進党だが……

2017年7月2日、都議選選投開票日の民進党本部。党都連会長の松原仁・衆院議員が午後9時過ぎに姿を見せた。

「民進党こそ安倍政権の暴走を止められるという期待、支援の輪が広がっている。手応えはあった」となぜかポジティブな言葉を選んだ。

なぜ、ここまで前向きになれるのか?

なぜか前向きな民進党

主役にも、脇役にも、悪役にもなれない選挙戦だった。

安倍政権の支持率低下、加計学園問題、下村博文・自民党都連会長のスキャンダル、稲田朋美防衛大臣の「失言」——。

民進党の都連幹部は、この政治状況を「民進党にとっては逆風どころか、神風が吹いていた」と例えた。

ところが選挙前の7議席に対して公認23人を立てたが、結果はわずか5議席。現有議席の維持すらできず民進党の存在感は最後まで薄い、はずだった。

党本部に設けられた開票センターで、ラジオのレポーターは「2009年には54議席を獲得した都市型政党の面影はありません」と現場の様子を伝えるべく、リハーサルを繰り返していた。

ホッとした空気の理由その1:壊滅を免れた

それにもかかわらず、現場に流れていたのは意外なまでのホッとした空気だった。開票が始まる前から、関係者の表情は安堵感でいっぱいだった。

理由は2つある。

ひとつめの理由は明確だ。当初、都議選を前に離党者が相次ぎ、離党ドミノと揶揄された。民進党の獲得議席は現有7議席に対し、0や1という数字も報じられた。

つまり、民進党壊滅という予想である。それが「なんとか、議席数を気にするところまで持ち直したのだから」(党関係者)というわけだ。

当初は険しい表情で、報道各社のインタビューを受けていた松原さんも時間を追うごとに笑顔も見せるようになった。

午後10時過ぎには、待機時間中に「インタビューは何分?えっ10分、そんなにやるの?」と軽口をたたく余裕も見せる。

時間を追うごとに言葉も強さを増していく。

「都民ファーストのチラシに国政のことは書かれていない。民進党のチラシには、加計学園問題など国政のことが書かれている。いまは手に取ってもらえる」

「有権者は戦えるのは民進党だという認識を持っている。手応えはよくなっている。流れは従来とは変わってきているのは間違いない」

小池都知事に対する距離感の近さもアピールした。

「はっきり言って、都民ファーストの中にもともと民進党の支持者はたくさんいた。区会議員や市会議員も一部は都民ファーストの候補を応援していた」

都連幹部の一人は「我々は小池応援団でもある」とまで語っていた。

ホッとした空気の理由2:自民党の大敗

2つ目の理由は自民党の大敗だ。幹部からも繰り返し語られた。

「都民から、安倍政権が傲慢な政権運営を行ったことに対して、本質を明らかにしてきた働きを評価いただいた。政権与党の歴史的大敗は重く受け止めるべきだ」(馬淵澄夫・選対委員長)

「民進党が中心になって、権力の暴走や私物化を暴いてきたことが自民党のダメージになっている。これは私たちの大きな実績だ」(松原さん)

つまり自民党大敗の理由の一つに、民進党の追及があったと言うこともできる。これが彼らの安堵感につながっている。

松原さんは囲んだ報道陣の前で、歴史的惨敗を喫した自民党に対して「言わずと知れた(安倍政権の)権力の私物化を都民、国民が嫌った。権力の暴走が鼻について仕方ないという認識を持っているのではないですか」と敗因分析まで語った。

しかし、非自民の受け皿になったのは、結局のところ「風」を味方につけた都民ファーストだった。

最後は「解党的出直し」?

都議選で離党ドミノが発生した民進党が、再び非自民層が支持する対象になるのか。

そのために繰り返し必要だと語られたのは「解党的出直し」(松原さん)だった。

それが一体、何をさすのか。風を頼みに、新しい看板を掛け替える歴史を繰り返すことなのか。最後まで具体的なものは何も示されないままだった。

記者会見など予定されたスケジュールが終わった午後11時40分すぎの開票センターで、民進党のスタッフたちがテレビの前に集まっていた。

そこに映し出されていた獲得議席数は「5」。勢いよくスタッフの声が聞こえてくる。「よし、これならなんとか……」。

数字はそこから、最後まで動かなかった。