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消えた目玉人事…なぜ「山尾志桜里」は名簿から消えたのか?

直前までナンバー2か、民進党執行部入りが取りざたされた山尾志桜里さんの名前が名簿から消えた。なぜ目玉人事はなくなったのか?

9月5日、民進党の前原誠司代表が新執行部人事を発表した。その中に、党ナンバー2の幹事長に起用されると目されていた山尾志桜里さんの名前はなかった。

なぜ山尾さんの名前は消えたのか。これは人事を巡る「いつものゴタゴタ」の一言で片付けられるのか。それとも……。

これは「新体制」のお披露目だ、と言える象徴的な光景だった。

9月1日のことである。

新代表を決める党大会の出席者を笑顔で出迎える前原さんの隣には、ナンバー2抜擢と取りざたされた山尾志桜里さん、結果的に幹事長になった大島敦さんがいた。

山尾さんは元検察官だ。昨年の代表選で、岡田克也代表の執行部で政調会長を務めながら、岡田体制の後継とされた蓮舫さんを支持せず、前原さんの支持にまわった。

そして、今年もぶれることなく一貫して前原さんを支持した。

党の若手ホープであり、執行部経験のある山尾さんをナンバー2である幹事長起用、という報道が一斉に流れたのも当然の帰結だった。

山尾さんナンバー2起用に漂う暗雲

しかし、ここにきて雲行きは一変する。

週明けの新聞各紙で幹事長起用見送りの報道が流れた。その理由はこうだ。

「前原氏は、若手の山尾氏を幹事長に起用することで人事刷新をアピールする考えだった。しかし、代表選で前原氏を支援した複数の党内グループから反発が出たため、撤回に追い込まれた」(毎日新聞

「政治経験が少ない山尾氏に党務を仕切れるのか」といった不満や資質を懸念する声が続出。前原氏の側近からも『人気取りは往々にして失敗する』との指摘があったという」(朝日新聞

「党の中堅議員は『素晴らしいロケットスタートになった。代表も素晴らしい仕事をしている』と皮肉った」(時事通信)という報道も公然と流れた。

菅直人元総理は自身のブログで「人事を撤回することは前原新執行部がスタートからつまづくことになり、望ましくない。貫徹すべきだ」とまで書いた。

新人事が発表される両院議員総会は期せずして、最近の民進党では異例の注目をあつめる場になった。そしてーー。

「幹事長はないにしても、執行部入りはあるだろう」という憶測も流れていたが、9月5日に前原さんが発表した執行部人事の中に山尾さんの名前はどこにもなかった。

両院議員総会に姿を見せた山尾さんは、トレードマークのブルーのジャケットではなく、大人しいグレーのジャケットで、その人事を聞くだけだった。

発表段階で、その理由は明かされず、集まった政治記者たちは「山尾さんいなかったですよね?早口で聞き取れなかったよ」「きっと早く終わらせたいと思ったんだろう」と口々に愚痴をこぼしていた。

なぜ山尾さんの名前はなぜ忽然と消えたのか?

報道陣の取材に前原さんが答える。

《当初は大島敦さんに幹事長部局の担当をしてもらい、発信力もあり、刷新感もある全国を飛び回ってもらいたい山尾さんという気持ちがあったのは事実です。この気持ちは今も変わっていません。》

つまり、山尾さんを刷新の象徴として、幹事長に起用するという事前の報道は正しかったのだ。では、なぜ消えたのか。

前原さんは「総合的判断」という言葉を使って説明した。

その言葉には、ただ党内の反対や懸念があっただけではないというニュアンスが含まれている。

スキャンダルも大きい?

質問が続く。

「(山尾さんが)男性と一緒にホテルに入ったという週刊誌報道がでる。これが原因のひとつなのか?」(なお、山尾さん自身はスキャンダルを否定しているという

前原さんはこの質問に直接の言及を避けて、こう答えた。

《山尾さんには全国を駆け回ってほしいと思っておりましたし、いまも思っています。これからも頑張ってほしいと思っています。》

山尾さんについて「時間を置いて(適任のポジションを)考えている。有為な人材なのは変わりない」「彼女の活躍、若手の活躍の場を探していきたい」とエールを繰り返した。

浮かぶ仮説、これは危機管理なのか

こんな仮説を考えることができる。

前原さんが山尾さんの要職起用を考えたのは間違いない。それに対し、確かに党内の反発もあったのだろうが、人事は「代表の専権事項」(大島幹事長)だ。

前原さん自身は起用に前向きだったし、押し通すこともできたが、そこにスキャンダルも報じられるという情報が入った。

プライベートの問題でスキャンダルが報じられるにしても、幹事長就任後なら痛手はかなり大きい。党にとっても、新体制にとっても大打撃は必至だ。一議員という立場のほうがまだ打撃は小さいーー。

つまり、現実的な「危機管理」という観点から外したのではないか。

会見を切り上げ、足早に会場をあとにしようとする前原さんに質問を投げかけたが、時間切れで答えはもらえなかった。

時系列は前後するが、人事を発表した両院議員総会で前原さんはこう述べていた。

《人事のことで、いろいろご心配をおかけしたことでお詫び申し上げます。》

そして、続ける。

《私は独裁者ではありません。(代表選を争った)枝野さんを応援された方のご意見を踏まえていく。

早ければ(衆院の3つの補選がある)10月22日にも総選挙がある。臨時国会もはじまる。できる限り、骨格を固めたい。》

森友・加計問題を追求すること、社会像で自身と枝野さんとの差はなく、これをマニフェストに落とし込むことなどを挙げて、一致団結を求めた。

挙党一致に気をくばる

結果的に男性だらけの執行部になったが、自身と代表の座を争った枝野幸男さんを代表代行に起用し、枝野さんを支持した議員も要職で起用した。

挙党一致という観点からみれば、かなり気を配った人事になっているのは事実だ。

山尾さん起用では確かにつまづいたが、これもスキャンダルが報じられるという前提で読み解くと見方は変わってくる。

この人事で、想定しうるリスクを避けたという見方も成立するからだ。国会、衆院の補選を前に新執行部からなるべく問題を無くしておきたい、といったところだろうか。

なにをやっても、足元からもすべてを「ゴタゴタ」と解釈されていく現状を踏まえているのだろう。

前原さんは一段と声を張り上げ、こう述べるのだった。

《力を結集して、新たな船出にさせていただきたい。国民に対する責務を果たすという一点で結集してほしい。》

離党予備軍も控える難しい状況のなか、変化を打ち出せるチャンスはそう多くない。

バズフィード・ジャパン ニュース記者

Satoru Ishidoに連絡する メールアドレス:Satoru.Ishido@buzzfeed.com.

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